2021年7月15日(木)開催 INSURANCE WEBINAR「第一生命保険におけるニューノーマルな働き方を支えるプラットフォーム構築」

2021年7月15日(木)開催 INSURANCE WEBINAR「第一生命保険におけるニューノーマルな働き方を支えるプラットフォーム構築」

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2021年7月15日、セミナーインフォ主催 INSURANCE WEBINAR 基調講演にて第一生命保険株式会社 吉留氏にご登壇をいただき「第一生命保険におけるニューノーマルな働き方を支えるプラットフォーム構築」についてご講演いただいた。

第一生命保険におけるニューノーマルな働き方を支えるプラットフォーム構築

吉留 栄太 氏
基調講演➀
【講演者】
第一生命保険株式会社
ITビジネス企画部 IT運用管理課
ラインマネージャー エグゼクティブITスペシャリスト 吉留 栄太 氏

<第一生命の事業戦略>
今回は当社が現在取り組んでいる、ニューノーマルな働き方を支えるためのプラットフォーム構築についてお話ししたいと考えている。まず当社の事業戦略について簡単にご紹介したい。1つは、少子化、医療、地方過疎化といった顕在化する社会課題に対して保険領域はもちろんのこと、非保険領域まで価値提供を拡大することである。 これからの生命保険会社の役割として、「Prevention」という新しい付加価値提供のためにDXの推進が必要と考えている。従来までは「Protection(保険)」として、保証の提供を行ってきたが、今後はそれだけでなく、健康寿命の延伸・医療費の抑制などに繋げるべく、「Prevention(予防・早期発見)」付加価値を高めていこうと考えている。

<これからを見据えたITプラットフォーム戦略>
経営戦略の実現には、「モード1(守りのIT)」「モード2(攻めのIT)」という、2つの異なる姿勢・流儀が必要である。まず「守りのIT」は、既存のインフラの徹底効率化である。具体的にはオンプレミスで構築したシステム等の徹底的な効率化を図っている。そして、「攻めのIT」はDX戦略を進めるための核となる部分である。今はそちらに集中して財源を振り向け、これらの両輪でシステムの整備を進めている。

<当社グループウェアにおける課題と改善策>
これまで当社ではグループウェアをオンプレミス環境に構築して使用し、業務のシステム化を図ってきた。しかし、利用者が社内に限定される、データが分散化されて、データの横串検索や分析ができないといった課題があった。さらに、クラウドサービスの台頭により、システムそのものの保守が将来的に難しくなるのではないかという懸念もある。そこで、我々としてはグループウェアをどうするのかという根本的な見直しを迫られることになった。具体的な方針として、当社では従来のグループウェアを標準クラウドサービスであるマイクロソフト365、あるいはServiceNowに切り替えることにした。これは社外やグループ会社との連携を容易にする、時間・場所・デバイスの制約から解放される、といった効果を期待して行われたものである。現在、当社ではメール、スケジューラー、申請・決済業務などを、マイクロソフト365、あるいはServiceNowに置き換える方向性を定めた。大きなポイントとして、「データを一元化することで、業務の可視化を促進すること」ができると考えた。また、テンプレートを活用してガバナンスを確保できる、また様々な標準機能を具備しているなどを選定の基準とし、ServiceNowが適したサービスだったため、採用に至った。

<DNOWプロジェクトの取り組み>
こうしたシステム化に向けた取り組みの1つが、ServiceNowを使ったワークフローシステムの構築である「DNOWプロジェクト」だ。システム構成としては、ServiceNowを使い、ポータル機能やテンプレート機能、共通部品、認証機能などを構築しており、オンプレミスのシステムとの連携でホームクラウド(Azure)を利用し、中継サーバーを構築し、データの連携を行っている。 ServiceNowの環境構築についても、従来型の開発では開発環境、テスト環境、本番環境があればよかったが、新技術が多数追加されるため、新しい概念として、サンドビットという環境を設けており、実験やプロトタイピング、アップグレードテストを行っていく。また、リグレッションテストやユーザー受入テストなどはUAT環境を構築し、新しい機能を使用していく事が可能であり、このような環境を整えることが重要である。 実際に載せるアプリケーションのアセスメントについては、機能が多岐にわたるため、どのサービスに、どのアプリケーションを載せるべきかをある程度検討する必要がある。アプリのアセスメントサービスを通じて、「ビジネス重要度」「アプリケーション複雑度」などの観点を基にスコアリング化している。当社においてもシステム子会社とともに、3~4か月程度の期間で、アセスメントサービスを活用した仕様書を基に、複数回のディスカッションを重ね、どのサービスを使うかを見える化し、方向性を立て、進めていった。 ポータル機能についてもグループウェアの利用にあたって入り口となるポータル画面を用意する必要があるが、当社では利便性を考慮し、ServiceNowのポータル機能をカスタマイズしている。 また、開発生産性向上に寄与するべく、「DLテンプレート」を構築している。当社でも元々ワークフローやグループウェアに求められる機能などは十分充足はしていたが、最初からコーディングや設定を避けるため、またエンドユーザーの方々も開発できるようすることも目的に、ガバナンスを効かせるためだ。

<市民開発に向けた挑戦>
当社のグループウェアでは、様々な開発がEUC(エンドユーザーコンピューティング)で行われており、システム数約4000~5000のうち、約73%がEUCである。これらをどのような形で対応していくかが課題であり、解決策として、ServiceNowの最新バージョンであるQuebecの「カタログビルダー」に着目をした。多くのシステムに対し、スピード感を持って搭載していかなければならず、市民開発にかかわるユーザーにフォーカスを当て、取り組みを進めることとした。Quebecの取り組みのスケジュールについても、ServiceNow社の手厚いサポートの元、本年7月にQuebecへのアップグレードは完了している。カタログビルダーを活用すれば、あらかじめ用意されたテンプレートに必要事項を記入するだけでシステム開発ができる。ノーコードでの開発を可能にする、という点で、非常に優れたものだと考えている。 また、ガバナンスについてもケアしていく必要があり、エンドユーザー側での開発が進むにつれ、どのようにサポートをしていくかが重要となる。当社では、システム子会社を中心に10名体制でサポートができる体制を構築しており、合わせてDNOWサポート人材の育成も行っている。別途CCoEとも連携をしながら進めている。実際にアセスメントをするうえで、「利用要件」や「システム要件」から、テンプレート活用できるか、スクラッチで開発できるか」などを確認しながら、対応の可否を判定している。

<今後のDL戦略に向けて>
当社としては今後保険商品の紹介・販売にとどまらず、お客様の一生涯の日常を支える、お客様のQOLを高めることを考えてビジネス展開をしていくつもりである。対面だけでなくデジタルチャネルも含む選択肢の提示などを通じて、よりシームレスにサービスをご提供し、CX向上に努められればと思っている。当社のDL戦略はまだ黎明期の段階にあると考えている。今後もシステム改革の歩みを進め、グループ企業や取引先企業との連携を視野に入れた対応をしていくつもりだ。