2021年7月8日(木)開催FINANCE FORUM「UX起点で統合する顧客接点:デザインアプローチの基礎と実践」


2021年7月8日、セミナーインフォ主催FINANCE FORUMにて株式会社ゆめみ 本村氏にご登壇をいただき「UX起点で統合する顧客接点:デザインアプローチの基礎と実践」についてご講演いただいた。

目次

UX起点で統合する顧客接点:デザインアプローチの基礎と実践

本村 章

【講演者】
株式会社ゆめみ
取締役
サービスデザイナー 人間中心設計スペシャリスト
本村 章 氏


<銀行UXの変化>

1960年以前は店舗での対面サービスが中心であり、紙での顧客データ管理が中心であった。1971年からATMが導入され始め、銀行の店舗以外での取引が増えてきた。1988年から電話を活用した、テレホンバンキングが普及。ユーザーは自宅から取引ができるようになる。1997年からはパーソナルコンピューターの普及により、インターネットバンキングの活用が進む。2000年以降はスマートフォンを中心とした、モバイルバンキングの普及が進み、いつでも、どこでも銀行サービスを利用できるようになった。これらから銀行のサービスは店舗からユーザーの自宅へと移っていく流れが見えてくる。しかし、以前までのチャネルがなくなったわけではなく、今後もモバイルを中心とした体験が広がる中で、それぞれのチャネルにおける体験ではなく、銀行窓口からモバイルバンキングまでそれぞれのチャネルを横断した一貫性のあるUXが重要になってくる。複数のチャネルを通じた顧客接点の統合と新たな価値提供が必要だ。

<デザインが必要なUXの階層>

デザインが求められる階層として3つあり、一番下がデバイスレベルで、操作性や見た目といった点が問われる。その上の階層のジャーニーレベルでは、複数の顧客接点を自由に切り替えられることが必要だ。ジャーニーも包括する最上位のブランドレベルでは、広告・パッケージなどの一貫性も含めてUXを考える必要がある。デザイナーやデザインチームだけではなく、組織全体でUXを考慮した活動が求められている。

<UX向上がもたらすビジネスインパクト>

『企業経営へのデザイン活用度調査結果発表』によると、デザイン経営に積極的な企業ほど、売上成長率は高い傾向にある。また特にエンドユーザー向け企業、デジタルに積極的な企業はその傾向が顕著だ。金融業界でも三井住友銀行様、みんなの銀行様、住友生命様など、デザインアプローチを活用する企業が増えている。

<デザインアプローチとは>

デザインとは人間の本質的な営みである。デザインアプローチとは、事業活動全体において、意図的に「デザイン」を実践することだ。特別なプロセス・行程ではなく、日々の業務の中で息をするように取り組む活動である。

デザインアプローチはリサーチ、要件定義、設計開発、運用・改善のすべてのプロセスにおいて、デザインのマインドセットを持つことである。コアバリューとして3つの原則があり、ユーザーと対話すること、正しいものを正しくつくること、見て感じられるようにすることの3点だ。そのコアバリューを持ったうえで、制作、共創、スケール可能なプロセス、データ駆動・仮説検証、ビジネス戦略の策定に取り組む。

<デザインアプローチの活用事例>

1つ目はインターネット証券様のモバイルアプリの品質向上だ。メタファーを元にした体験・構造設計、サービスの特性を生かしながらもOS標準を準拠するUI設計について支援を行った。

2つ目はDXのためのデザインアプローチ活用ワークショップで、クレジット・信販会社様に対して提供した。DX推進のため、スモールな成功体験を納めてもらうことをテーマとした。チームの作成、ペルソナの見立て、アイデアの育成等が主な内容だ。

3つ目はプロジェクトプロセス振り返り導入で、全クライアントを対象に実施している。プロジェクトの前、間、後の3つのタイミングで振り返りを行う。プロジェクトをやりっぱなしにせずに、一つ一つの取り組みから学習し成長するサイクルを構築する支援を行う。

4つ目は第三者・ユーザー目線によるユーザービリティ評価の導入で、インターネット証券様に対して実施した。支援内容はコンセプト受容性評価やユーザビリティテストなどである。

5つ目はステークホルダーを巻き込んだビジョン検討で、インターネット銀行様に提供した。次世代のバンキング体験の検討のため、Z世代ユーザーとの共創ワークショップ、金融・銀行の歴史の振り返り、顧客満足度調査など多方面で支援を行った。

<デザインアプローチ実践の現状と未来>

多くの金融機関でデザインへの関心は高まっているものの、組織内におけるデザインアプローチはまだ浸透していない。高い習熟度を要するビジネス戦略については、経産省を提言していた「デザイン経営」が注目を集めている。またデータ駆動仮説検証はIoTやビッグデータなどの技術の組み合わせで更なる加速が予測される。

<デザインアプローチ実践の始め方>

当社がサポートしている企業でも、まだまだデザインアプローチが実践されていないというところから、外部パートナーを利用したデザインアプローチの活用がようやく進み始めたという企業多いのが現状である。最終目的としては、組織全体でデザインアプローチの実践していく、全員がUX向上のために活動して事が望ましいが、いきなりそこまでのレベルにたどり着くことは難しく、まずは小さくできる取り組みから始めるのが重要だ。小さな取り組みとは、具体的には既存アプリやWebサイトの現状把握や評価から始めるのが適切と考えている。その際には当社の「UX/UIレビューサービス」にてサポートすることが可能であり、ご興味のある方はご相談頂きたい。

講演企業情報
株式会社ゆめみ:https://www.yumemi.co.jp

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次