2021年7月8日(木)開催FINANCE FORUM「顧客中心のサービス改善と届け方~金融業界でデータを起点にCX(顧客体験)向上のためにできること~」

2021年7月8日(木)開催FINANCE FORUM「顧客中心のサービス改善と届け方~金融業界でデータを起点にCX(顧客体験)向上のためにできること~」

印刷用ページ

2021年7月8日、セミナーインフォ主催FINANCE FORUMにて株式会社プレイド 金田氏、長崎氏にご登壇をいただき「顧客中心のサービス改善と届け方~金融業界でデータを起点にCX(顧客体験)向上のためにできること~」についてご講演いただいた。

顧客中心のサービス改善と届け方 ~金融業界でデータを起点にCX(顧客体験)向上のためにできること~

金田 拓也
【講演者】
株式会社プレイド
Sales Director(金融業界責任者) 金田 拓也 氏
長崎 大都
【講演者】
Product Manager(カスタマーサポート) 長崎 大都 氏

<はじめに>

今回のセッションでは、私たちが掲げているCX(顧客体験)が注目されている背景と私たちが展開しているプロダクト「KARTE」について、直近注力しているカスタマーサポートやコールセンターでの活用について触れていき、私たちが今後何を目指しているのかといった点についてフォーカスして紹介する。

<プレイドの紹介>

プレイドは現在約200名で運営しており、昨年末に株式公開を行った。顧客体験と向き合うためのプロダクト開発を行い、ご支援させていただいている企業に対し、どのような貢献ができるか日々模索している。

私たちが運営しているプロダクトが「KARTE(=ウェブサイト上でサイト訪問顧客のリアルタイム解析・セグメンテーションを行い、それに応じたアクションやコミュニケーションを実現するためのクラウド上のソフトウェア)」であり、当社収益の95%を占めている。

「KARTE」をウェブサイトやアプリに搭載いただくことで、今顧客がどのページを見て何をしているのかといった顧客の行動が、まるで店舗でリアルに話しているような感覚で見えるようになる。顧客をリアルタイムに把握し、それぞれの行動に対して文脈を解釈した上で、ポップアップやチャット、バナー、サイト等を通じ適切なメッセージを届けることができるプロダクトとなっている。2015年3月にリリースしたが、現在は「KARTE for App」としてアプリでも提供しており、アプリではウェブサイトと比較して開発が複雑なグロースハックの観点でご利用いただいている企業がいるほか、企業が持つデータをKARTEに繋げ、より高度なセグメンテーションやアクションを行うための追加オプション「KARTE Datahub」といったサービスも提供している。「KARTE」は、企業の皆さまに使っていただくためのプロダクトであり、このプロダクトを通じて、どのような顧客にどのようなメッセージを送り、満足感を持ってサービスを利用していただくか、企業と一緒に歩み続けている。

また、私たちは「KARTE」のプロダクト展開だけでなく、CXを企業活動に浸透させる取り組みにも力を入れている。CXに取り組む一流のプロフェッショナルが集い、最先端のCX事例を学べるカンファンレンス「CX DIVE」の開催のほか、自社メディアや雑誌、ラジオを通じてCXの最新情報の発信、京都大学・京都市観光協会とは観光客の満足度向上を目指した共同研究なども行っている。

金融業界に対しては、KARTEのプロダクトを軸に、銀行・証券・保険会社の各社とご一緒している。ダイレクト型や対面型を問わず、様々な金融機関にご活用いただいている。

当社は、KARTEというプロダクトに軸足を置きつつ、顧客体験に寄与するCX、データドリブンな意思決定やデータ基盤の整備を行うDX、自社グループブランド・商品情報に詳しい社員のデジタル対応といったEXの3軸をご一緒できる会社とご認識いただければ幸いだ。

<CXが注目される背景>

コロナ禍も相まってCustomer Experienceの重要性は益々高まっている。私たちは、顧客体験は満足感や喜びといった感情や経験の価値も含めた概念であると考えており、物理的な価値だけでなく、顧客のコンディションにもよって体験価値は変わり、働いている方々の笑顔によっても変わると考えている。CXを実際に定義するならば、「顧客が享受・体験する価値を重視する考え方」。つまり「考え方」でしかないと整理している。

CXが注目されている背景として、「企業の側面」「顧客の側面」「時代の側面」の3点が挙げられる。「企業の側面」では、マーケティング手法の普及スピードの高まりと商品のコモディティ化が進んだことによる商品の差別化が限界に来ていることが挙げられる。現在は、顧客不在の差別化競争が生じている。「顧客の側面」では、モノ/サービス/情報の飽和化と自己学習する顧客、変化のスピード自体が更に早くなっていること等が挙げられる。最後に「時代の側面」では、あらゆる行動がデジタルでつながり、オンラインの考え方がオフラインにも浸食していきていることが挙げられる。この3点を要因として、最終的に顧客体験の重要性が増し、それが事業収益にも大きく寄与してきていると現状を整理している。

また、現在のデジタルマーケティングでは、企業が顧客を理解しないまま行っているケースも多く、必ずしもユーザー・顧客の体験向上に寄与していないことが問題となっている。従来のデジタル上の企業中心のマーケティングが「サイトの側(がわ・表面)」を変えてどうやって集客できるかに価値を置いていたところから、今その瞬間に来ているお客さまにどうコミュニケーションを取っていくか、適切な形でのコミュニケーションをどう取っていくか、または適切な形でなくとも一度話し掛けてみるやり方にトライできる環境をいかに準備できるか。そういった点が鍵となると考えている。デジタルマーケティングはサービスの構築や集客のフェーズから、顧客に価値を伝えるフェーズにシフトしている。

<KARTEについて>

ご紹介した通り、私たちはウェブサイトやアプリの中で、リアルタイムにお客さまが見え、その中に適切な形のコニュニケーションをお客さまに届ける、またトライができるプロダクトを提供している。特徴としては、顧客がどんな商品に興味を持っていたのか、今その瞬間は、どの広告から入ってきたのか、顧客一人ひとりを可視化していく。そして、その解析をリアルタイムに行っていく。リアルタイムという言葉は「5分後にバッジされる」「翌日サイトに来たときに更新される」というものではなく、例えるなら、「飲食店でお酒を飲みグラスが空になった瞬間にメニューを持っていく」、そのような動きだと考えている。したがって、私たちのプロダクトでは、ミリ単位や秒単位で常に常にサイトの動きや滞在時間の瞬間を入れ替えられるような仕組みを提供している。どういったメッセージを、どういう言葉の表現で届けたいか、色はどうするか、場所はどうするか、タイミングはどうするかなど、テンプレートをいくつも用意している。テンプレートは日々アップデートしており、金融業界の方々が使っている鉄板のコミュニケーションモデルをDC事業者等の別業態の企業にも当てはめ、その成功モデルを流通させるのが、私たちプラットフォーマーの役割であるとも考えている。「KARTE」の活用事例はたくさんあるが、企業によって、どんな顧客と向き合うのか、前提や条件が異なる。具体的にどういう使い方をしているのかといった点は、KARTE「CX Clip」媒体にまとめており、是非ご覧いただきたい。

実際の「KARTE」機能として私たちが提供しているのは、「顧客を知る」ことと「顧客に合わせて対応する」ことの2点である。サイト内の動きやどんなコミュニケーションを取ったのか顧客の動きを「知り」、それに対して社内外に存在する多種大量なデータを「KARTE」に統合し、顧客基盤側へのデータの突合によって顧客の利活用を推進している。DX推進時の課題である「データ蓄積と活用の分断」を解消することで、顧客に対するCXの向上と業務プロセスの効率化を実現している。

金融業界の例では、一部個人情報を含む情報もお預かりし、相応の堅牢性やセキュリティーチェックを行った上で、ご利用いただいている。最近では、FISCにレポーティングをいただき、デジタルマーケティングの今後の活用について取材を受けている。私たちとしては、サイトとアプリの行動だけではなく、店頭や対面でのやり取りも含めた上で、顧客とどう向き合っていくかといった点に注力していきたいと考えている。

<KARTEを通じたCSの未来>

現在コロナ禍でニーズとして上がってきているのが、カスタマーサポートでの活用である。先ほど「KARTE」の機能として、「顧客を知る」「顧客に合わせて対応する」と強調したが、その2点はまさにカスタマーサポートの神髄である。カスタマーサポートのコミュニケーションは、まさに「知る」と「合わせる」点であると考えており、「KARTE」のコアな機能を、カスタマーサポートの体験向上にも活かせるのではないかと考え、現在様々なお客さまと共創している。「KARTE」を使って、今実際にどのようなトライを行っているかについて紹介する。

まず、カスタマーサポートの基本的な流れについて捉えていく。顧客は何かサービスの問題点や不明点が発生した際に、ウェブ上で情報探索をし、ある程度の探索行動をした後、解決できなかった場合に問い合わせを行う。そして、問い合わせ後に、継続的にサービスを利用するか、場合によっては離脱するかを判断する。

一方、企業側のカスタマーサポート対応では、現在多くの企業が「問い合わせ対応」の効率性や品質にフォーカスして対応している。どのようなトークスクリプトを用意し、1件当たりの問い合わせ処理時間をどう縮めていくか、といった点に重きが置かれている。トランスコスモス社が公表している「消費者と企業のコミュニケーション実態調査」では、オペレーターに対する満足度である「解決窓口満足度」は78%と高水準である一方で、プロセス全体の総合満足度は57%と、21%目減りしている。これは顧客が問い合わせプロセス全体に手間や負担を感じていることを表している。問い合わせ窓口への満足度は比較的高いものの、問い合わせを行うまでの満足度が低いため、カスタマーサポート全体の満足度が低くなっている現状がある。

では、「KARTE」がどのような価値貢献を行っているか紹介する。まず、オンライン上で顧客のことを徹底的に知ることで、問い合わせする前にアクションを起こすことができる。問い合わせ前の顧客行動に合わせた情報/FAQのマッチングや適切な問い合わせチャネルへの誘導を行い、問い合わせ前のサポート体験向上や自己解決促進によるスムーズな問題解決を促していく。問い合わせ発生時には、問い合わせ前のユーザーデータをオペレーターに還元している。更に、問い合わせをした後にロイヤルティーが高まったのか、成約に結び付いたのか、といった問い合わせ後の情報も補足することで、問い合わせの前と後を含めたプロセス全体を可視化し、顧客にエフォートレスな体験を提供している。

企業側にとっても、問い合わせ数の削減や、「人が対応すべき問い合わせ」にフォーカスできることによるオペレーターのモチベーション向上につながっていくメリットがある。また、問い合わせ後まで可視化をすることで、コストセンターと見られがちなカスタマーサポートが、いかに事業に貢献している可視化できるようになっていく。

グッドマンの法則では、96%の顧客は、問い合わせをしないと言われている。事業者にとって問い合わせをする顧客の存在はありがたいことである認識を持ちながらも、今後は問い合わせしない顧客=サイレントカスタマーをしっかり捉えていく必要がある。問い合わせ前の探索行動データとVoCを組み合わせて分析することで、サイレントカスタマーに向き合っていく必要がある。

保険業界を例にお客様の探索行動/状況に合わせたサポート事例を紹介する。例えば、ケース1「サービス未契約だが申込意欲は高い顧客」には、明らかに温度感が高い点からチャットでプロアクティブにコミュニケーションを仕掛け、必要に応じてコールにつなぎ、しっかり人手をかけて対応することが求められる。ケース2「契約後1か月以内でサイトに初来訪した顧客」には、契約期間1カ月以内の顧客に想定される契約内容や料金確認方法に関するFAQを表示し、解決しない場合はチャットで訴求していき、自己解決とコミュニケーションのバランスを取りながらの対応を図っていく。ケース3「ヘビーユーザーで電話問い合わせをよくする顧客」には、チャットでプロアクティブに電話の待ち時間がかかる旨を伝え、自己解決を促す対応が求められる。顧客に合った情報/チャネルを動的に提示し、いい意味で事業者側が顧客を「選ぶ」サポートが実現できれば、限られたカスタマーサポートのリソースを最適なところに充てることが可能となる。

自己解決の事例についてもいくつか紹介する。SBI証券様の事例では、電話問い合わせにつながりやすい画面エラーをKARTEで検知し、エラーを解決するための操作方法をチュートリアルで直感的に説明し、自己解決/問い合わせ減を大幅に達成した。同社のもう一つの事例では、FAQのマッチングを正しく行うことで、自己解決率やお客様の満足度が大幅に向上した。

カスタマーサポート領域においてもCX、EX、DXの3つの軸において「KARTE」のプロダクトをご活用いただけると考えている。CX領域では、問い合わせ前からのエフォートレスなサポートを提供することでスムーズな問題解決を実現し、結果として顧客のエンゲージメント向上につなげていく。従業員体験のEXでは、カスタマーサービスの貴重な戦略を事業貢献度の高いサポートに注力でき、従業員の満足度が向上し、生産性が向上していく。CXやEXが加速していくことにより、それに応じたDXとしてデータの活用が進んでいく。CX、EX、DXのサイクルが進む好循環を、カスタマーサポート領域においてもしっかり実現できる。

企業中心のマーケティングから顧客中心のマーケティングへシフトしている点は大きなトレンドとなっており、デジタルマーケティングにおいても顧客に価値を伝えるコミュニケーションの重要性が増している。私たちとしては、最終的に顧客体験の価値を感じていただきつつ、皆さまの事業の収益にも貢献できるような形を、「KARTE」というプロダクトを通じて、皆さまにご提供できればと考えている。

講演企業情報 株式会社プレイド:https://plaid.co.jp/