「データ活用で地方金融機関を変える!キーエンス流データ活用術」

水上 拓也 氏
【講演者】
株式会社キーエンス
データアナリティクス事業グループ コンサルティングセールス
水上 拓也 氏
齋藤 亜蘭 氏
【講演者】
データアナリティクス事業グループ コンサルティング データサイエンティスト
齋藤 亜蘭 氏
柘植 朋紘 氏
【講演者】
データアナリティクス事業グループ マネージャー
柘植 朋紘 氏 (進行)

高収益の源泉

キーエンスは高収益というイメージをお持ちの方も多いだろう。経営を合理的・科学的に行うことで高収益を支えてきた。高収益の源泉となるデータ活用ノウハウを、現在さまざまな業界のお客様に提供している。多いのが金融業界で、日々データ活用の支援を行っている。

DXとは

DXには様々な定義があるが、Transformationは生物学上では「形質転換(=遺伝的性質が変わること)」を意味する。ここでは、組織を戦略・組織システム・人材・文化で分類し、この4つ全てが遺伝子レベルで『変容』することを、今回話すDXの前提としたい。

人材に関するバズワードを理解する

デジタル界隈では、『DX人材』『デジタル人材』といったバズワードが多く見られる。必要な人材を考える前に、まずはバズワードを理解するため、『ジョブ型雇用』の歴史を見ていきたい。2013年産業競争力会議にて、多様な働き方や高度外国人材確保のため、ジョブ型雇用が推進された。続いて、2018年にSociety 5.0:Co-Creating The Futureの中で、デジタル・AIの推進のためにジョブ型雇用の必要性が挙げられ、雇用の文脈で多くのバズワードが使用されるようになった。このような流れを受けて、人材定義は、本来の定義とは関係なく、人材獲得競争が激しい『高度なスキル』を有するデータサイエンティストやエンジニア等を指すことが多くなっている。

高度スキルは自社で必要か?

では、『高度なスキル』を保有する人材は自社で本当に必要なのか?ここで触れておきたいのが、高度スキル人材はプロジェクト型活用がトレンドということだ。i-Commonのプロ人材市場の登録者数・企業ニーズは大幅に増加している。高度スキルを持つ人材ほど、汎用性・流動性が高く、プロジェクトで必要な時にオンデマンドで調達すれば済むケースが多い。特に地方金融機関では、外部活用を考慮に入れた上で、自社で必要な人材を見極めることが重要になってくるだろう。

本質的に必要な人材

情報化時代においては、ニーズはデータに現れて常に変化し、それに合わせて、企業も顧客起点でサービスを変化させなければならない。それを実現するには、より顧客に近い業務部門にデータ起点で問題解決できる人材が必要となる。すなわち、既存の人材を残したままDXを実現したいのであれば、高度なスキルと関係なく、組織全体でデータ起点に問題解決ができる人材を育成する必要がある。

人材育成方法、OJTの推進

データ起点の問題解決には、分析スキルだけでなく、ビジネス知識やプロジェクトの進め方などのビジネススキル、システム思考やデザイン思考といった思考スキルといった多様なスキルが求められる。そのため、スキル獲得のためには、従来とは全く異なる業務プロセスを習得するものとして捉え、データ分析プロジェクトをOJTで推進することが効率的である。

特に地方金融機関は、管理型文化(参考:競争価値観フレームワーク)が特徴であり、複数の部署を集めて一斉にOJTを推進することに長けている。

そのため、3つのSTEPで変革を進めるのが1つのモデルとなる。まず『管理型』でデータ分析プロジェクトを開始(STEP1)し、プロジェクトを通してOJTで人材・文化基盤を形成する(STEP2)。その上で、人事・組織構造の変革を行う(STEP3)。進化の仮説の1つを借りれば、『その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない(=赤の女王仮説)』。まずは組織全体でデータ分析プロジェクトを始めることが変革の第一歩となる。

データ活用が進まない理由

地方金融機関は組織全体でDXを進めやすいが、データ活用がなかなか進まないというご相談を頂くことも多い。その理由として主にデータを分析する手段、分析プロジェクトの考え方の2つがある。

データを分析する手段としてExcelには限界があり、入出金データなどの大量データや属性データを分析するのは難しい。データが社内のあちこちのシステムに点在しているのも問題で、集約したりひとまとめにして分析したりすることが困難になっている。データ分析の考え方については、データ分析とは特定人材がやるものという考えを持っていたり、具体的な進め方が分からないと悩んでいたりする金融機関が多い。

データ活用に成功している金融機関様はどう取り組んでいるのか?

まず重要なのはデータの蓄積や整備から始めるのではなく、”今あるデータ”の活用から始めることだ。実際にデータ分析を始めてみてから、必要なデータ・不要なデータが分かってくる。次に問題解決や意思決定で、担当者の勘・経験に基づく暗黙知と、各種データに基づく形式知を掛け合わせるのがポイントだ。暗黙知とデータを組み合わせて意思決定を行うことで、意思決定の成功確率を最大化させることができる。

データ分析・活用に関して「機械学習」という言葉に触れた方も多いだろう。機械学習はデータに潜む法則性や規則性を見出すことができる。金融機関の場合、たとえば事業性融資やローンのニーズが高い顧客の特徴を、属性データや入出金データの規則性から見つけ出すことに取り組まれているケースが多い。ある金融機関様の事例では、従来から使っている残高500万円以上の顧客のリストに加え、データに基づくリストも作って頂いた。その結果、リストの顔ぶれが大きく変化し、これまでなかなかアプローチできていなかったお客様が明らかになった。新たなリストのお客様に提案したところ、すんなり契約に成功したケースもあり、新たな収益の確保や着眼点に繋がっている。

この他にもデータ活用のテーマ例はさまざまあり、営業推進部署以外に経営/経営企画部署向け、人事部署向けなどのテーマもある。データ活用に成功している金融機関様は、各業務部門の意思決定に経験・勘とデータの根拠を組み合わせることに日々取り組まれている。

KIのデモンストレーション

組織全体をデータ起点で問題解決できる人材の育成のため、多くの金融機関様で当社のソリューションをご活用いただいている。「KIシリーズ」はデータ前処理から分析まで一気通貫で実現可能なプラットフォームだ。今回お見せするデモでは顧客マスタ、ローン実行履歴、ネットバンキング/アプリログ、口座移動履歴の4つのデータを使って分析する。分析するデータをセットしたら、共通する項目を設定するだけでデータを結合できる。分析のテーマも自動で出てくるので選ぶだけだ。たとえばローンのニーズが高い顧客の特徴・規則性について一覧で表示される。

このようなデータを元に、たとえば事業性融資のターゲット先のリストを作成することが可能だ。顧客ごとに決算情報、入出金履歴、融資情報などの項目がスコア化され、資金需要の高いと思われる顧客をリストアップできる。

伴走型支援サービス

伴走型支援サービスも用意しており、当社のデータサイエンティストからプロジェクトの進め方等のレクチャーを受けていただくことができる。またe-learningのコンテンツもあり、ご自身で各種講座を受講するで、分析ノウハウ、施策展開、業界ノウハウなどを習得できる。

お客様からの感想

京都中央信用金庫さまは基礎データを分析することで投資信託の販売で活用され、契約率が約3倍となる成果が生まれた。当社のサポート体制についても「これまで経験したことのない充実したもの」「分析に必要な知識や手法についてもサポートしてくれる」との声をいただいた。百五銀行さまは、「座学や仮のデータを使った演習のみでは、本当に必要な力・現場力が身につかず、人材育成は進まない。他人が他人事として分析するのではなく、課題を抱えている当人が自分で分析することが大事であり、KIならそれが可能」とのご感想をいただいている。

◆講演企業情報
株式会社キーエンス:https://analytics.keyence.com/ja/