「営業デジタル武装
~成功事例とそれを支えるSAS AIテクノロジ~」
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【講演者】
- SAS Institute Japan株式会社
ソリューション統括本部 Customer Intelligence Solutionグループ シニアコンサルタント
村上 洋平 氏<はじめに>
本日お話しする営業員のDX・高度化に関しては、主に対面営業員の領域にフォーカスさせていただく。富裕層・準富裕層に対しては対面主体の資産運用コンサルティングが中心であり、ニーズやライフプランなどお客様を深く理解したうえで、One to Oneの営業活動が求められている。
<先行して取り組みを行っている例(米国)>
米国においてデータを活用した対面営業の取り組みは20~30年前から行われており、主な目的は営業力の底上げだ。具体的にはデータ活用によってアプローチすべき顧客や顧客ごとの適切な提案の導出、顧客と営業員とのマッチングを行う。
<国内の先進事例 ~SalesTech×NBA>
営業力底上げのために我々が支援するサービスのコンセプトは「全員がハイパフォーマンス営業員になる」だ。その為に、各営業員の特性やスキルセットに合わせたトレーニングや情報の武装化を提供する取り組みだ。
この取り組みには2つの大きな骨組みがある。1つ目がSalesTechで、営業員のタイプや行動特性などを元に分類し、各分類のハイパフォーマンス営業員と一般営業員の差異を特定し、その差異を埋める為のコーチング・トレーニングメニューの開発と一般営業員への教育を行う。2つ目のNBA (Next Best Action) は、顧客のニーズ予兆となるイベントを検知し、ニーズに応じた適切な提案の特定と営業員への詳細な指示を配信する仕組みだ。
SalesTechで肝となるポイントは2つあり、1つ目は「営業員別スキルプロファイリング」だ。個々の営業員のタイプをしっかり把握し、強みと弱みを理解する。例えばインテリタイプは金融知識が豊富、社交的タイプであれば人付き合いやトークに長けている、等だ。同時に、どこを伸ばしていくべきかも明らかにする。2つ目は「ハイパフォーマー好事例にもとづく教材開発」で、ハイパフォーマンス営業員とそうでない営業員の差を可視化し、差を埋めるためトレーニングカリキュラムをあてがう取り組みだ。
<SalesTech ~国内金融機関における事例>
あるお客様に関して3つのステップでの取り組みを行った。最初は営業員タイプ分類で、アンケートやSFA行動データから営業員タイプのセグメントを分類した。営業員としての強みと営業のやり方の2つの軸を用いてAIによる機械分類を行った。
次のステップはハイパフォーマンス営業員の特定と特徴抽出だ。インテリ・社交的など複数のタイプに営業員を分類し、各タイプでハイパフォーマンス営業員の差異の特徴を明らかにした。特徴の例として、顧客訪問件数や顧客情報のヒアリング力等がある。3つ目のステップは施策立案で、行動特定やスキルの差を埋めるため、タイプ別の施策を立案したフェーズだ。例えば訪問件数の違いを深堀すると、ハイパフォーマンス営業員はコンタクト先が少ないが面談は多くその要因に「今対応すべき顧客」の判別と優先づけが出来ているということが判明した。従って、優先的に対応すべき顧客のモデルを作り、一般営業員に横展開していく施策に繋がった。
<NBA ~営業員の行動スタイル変革とCXの改善>
NBAは、営業員が顧客一人一人に適切な営業アプローチを行えるよう、情報武装を施す。具体的には取るべきアプローチの指示出し、会話を円滑に進めるための必要な参考情報の提示等だ。
NBAも、大きく分けて3つのステップで行った事例をご紹介する。最初のステップは機会発見で、アプローチすべき顧客を特定する。2つ目はNBA判断で、抽出した顧客に対するアプローチ方法を決定するステップ。3つ目はパイプライン管理で、NBAによる顧客とのコミュニケーション管理を行うステップだ。例えば大口の入金イベントのあった顧客に対しセグメント特性やニーズ予測を行い、不動産投資に積極的なセグメントであることが判明すると不動産保有状況や関心を聴取する流れとなる。
営業情報武装として、顧客へのNBAやその根拠、具体的なアプローチ例(トークスクリプト等)といった、営業員が実際に必要とする情報をタイムリーに連携する仕組みを構築した。セグメント属性、アプローチ例、イベントが一覧で確認でき、どうアプローチすべきかが指示ベースで表示される。さらに、営業員が情報を元に顧客へのアプローチを取った結果を登録・フィードバックできることも重要で、NBAの精度のブラッシュアップに繋がる。
<営業員デジタル武装に必要なシステムレイヤー>
情報活用の上で、我々は3つのシステムレイヤーが必要と考えている。「CRMレイヤー」は情報を効率的に管理する器であり、顧客情報や接触履歴を登録・管理し、営業員に情報を発信する。「AIレイヤー」は付加価値情報の創出を役割とし、あらゆる意思決定局面に必要な詳細指示レベルの情報を発信する。「DBレイヤー」はあらゆる情報を蓄積する基盤で、ビジネスライン横断の取引データやビッグデータ等を蓄積する。まとめるとDBレイヤーの情報をAIレイヤーで価値あるものにし、CRMレイヤーに届けるという3層構造だ。
AI/Analytics、Managed Service、Business Knowledgeの3つの要素をフルパッケージにしてご提供するサービスだ。AI/Analyticsは全社の基盤として活用可能なアプリケーション。対面営業の高度化の他に与信管理や不正検知等、様々な金融業界の業務に適用できる。Managed Serviceは実行する基盤やシステムの保守管理を我々にお任せ頂けるサービスだ。Business KnowledgeはAIを業務活用するためのノウハウや知見をご提供する。3つの要素を組み合わせ、優れたアナリティクスをスムーズに導入してAIの業務活用と効果創出を最短で実現することをコンセプトとしている。
特に我々が強みを持っているのがBusiness Knowledgeだ。国内外の様々なプロジェクトを通してお客様のビジネスのご支援に携わってきた経験や、その中で培った実用性のあるナレッジそのもので、他社様では簡単には真似できないと考えている。モデルやデータを作成するプロセス等、業務に必要な様々な「部品」をナレッジとしてご提供する。効果があると我々が確認したノウハウをご提供するため、お客様での試行錯誤の時間・手間を削減できる。SASのアセットをもとにして、お客様が必要とする「答え」を最短距離で協創、ご提供することが可能だ。
我々の保有するナレッジは日々更新され、カスタマイズされており、陳腐化を防ぐことができる。お客様用のカスタマイズ、改善といったご要望もお引き受けすることができるため、お客様のビジネスに即してSASクラウドに実装された標準プロセスをファインチューンすることで、ビジネス価値の向上に繋がる。この取り組みにより我々の商品ラインナップも増え、AIの精度向上にも繋がる。
<AI/Analytics の機能概要>
分析やデータ活用等の業務に必要な機能を包含してご提供できる、統合プラットフォームとなっている。このプラットフォームは全てGUIでご提供可能なため、分析に詳しいユーザー以外の方、ライトユーザーやデータの扱いに慣れていない方でも操作しやすい環境であり、全社の基盤としてご利用いただける。具体的な機能は、データの探索・分析、データの管理・準備、モデルの開発、モデルの管理・実装・評価の4つだ。アナリティクス・ライフサイクルに必要な機能を、単一プラットフォーム上の統合GUI環境で、便利にご利用いただける。
◆講演企業情報
SAS Institute Japan株式会社:https://www.sas.com/ja_jp/home.html - SAS Institute Japan株式会社