「データドリブンアプローチを実現するデジタルイノベーションプラットフォームとは」

【講演者】
デル・テクノロジーズ株式会社
上席執行役員 
システムズ エンジニアリング統括本部長
藤森 綾子 氏

金融業界 デジタルトランスフォーメーションの変遷

金融業界でのDXの変遷について、2つの事例を基にお話しする。1つ目はDX1.0=デジタル主導の変革で、DXの先駆者とも言われるDBS銀行だ。「会社を芯までデジタルに」をキーワードに、2009年からはサービスやプラットフォームの再構築を行った。2014年以降は開発改革を推進し、アジャイル開発や自動化等によりサービス提供の時間を短縮した。現在は「フィジタル」として物理的な視点にデジタルを持ち込む取り組みを行っている。

2つ目の事例はDX2.0=データドリブン・トランスフォーメーションを行ったアリアンツ生命だ。2018年に新たなCDOが着任してから改革が始まり、デジタル文化を根付かせることを重視した。同社の取り組みで興味深いのは、ビジネス優先順位の高いものは、必ずデータドリブンアプローチを採用することをコミットメントさせたことだ。

デジタル戦略に向けた変革のレイヤー

デジタル変革のレイヤーはテクノロジー、プロセス、ピープル、カルチャーの4つだ。このうちテクノロジー、金融サービスの影響を与える技術動向としては、APIとプラットフォームの統合でオープンバンキングの導入により、パートナーエコシステムとの協業の加速が可能になった。一方で法規制の遵守や指数関数的に増加するトランザクションの観点から、AI活用の必要性が増している。

ハイブリッドマルチクラウドプラットフォーム

DXを推進するデジタルイノベーションプラットフォームの不可欠要素は4つある。ビジネス戦略に合致したデジタルプラットフォーム、オムニチャネルのための基盤インフラ、可能な限りの自動化、E2E機能を提供できるパートナーの特定だ。

デジタルイノベーションプラットフォームとは、お客様により良いデジタルサービスを提供する上で、相互依存した基盤の複合体のようなものだ。エッジも含めてデータを収集し、膨大な量のデータによって洞察し、新たなサービスに反映する。よって3つの基盤で成立しており、エッジインフラインフラストラクチャ基盤、エンタープライズ・データ基盤、それらの基礎となるマルチクラウド基盤だ。

マルチクラウド

マルチクラウド基盤に関して、多くの企業ではマルチクラウドの重要性を認識している。その一方で、クラウドコストの上昇、ワークロードの適正化、エッジの台頭、相互依存性の高まりなどの課題も見えている。

何も考えずにマルチクラウドを進めると、まずクラウド環境がサイロ化する。データやワークロードのサイロ化も招くことになり、デジタルデータドリブンなアプローチに必要なデータ活用を妨げてしまう。このような「Multi-Cloud by default(計画なきクラウド)」に対し、当社が提唱するのが「Multi-Cloud by Design(計画されたクラウド)」だ。サイロの撤廃によって、需要に合わせて適材適所でワークロードやデータを最適に配置する。シームレスな連携で、コスト効果を出した運用ができる。

Multi-Cloud by Designによって実現する世界

あるお客様が1つのパブリッククラウドを使っているとする。違うクラウドで新しい機能が出てきたときに入れ替えたり、コストがより安いクラウドが出てきたときにそちらに移行したりすることができるようになる。パブリッククラウドとオンプレの間でも、クラウドで開発して本番は堅牢なオンプレ環境で稼働したり、通常はオンプレで運用して繁忙期にクラウドのスケールを活用したりすることが可能だ。

これを実現するのに必要なのが、まずアプリケーションプラットフォームの共通化で、アプリの可搬性やワークロードの最適化シフトが可能になる。また、アプリの可搬性に対応する「データのアクセス性の担保」も重要だ。2つの方法があり、共通のストレージプラットフォームを使うこと、データストアをコロケーションサイトに構築することだ。

デル・テクノロジーズが提供するシームレスなマルチクラウド

第1に、お客様が好むクラウド技術を、オンプレ管理された当社のインフラでも運営・稼働できる状態にすることで、シームレスなクラウド連携を実現する。クラウドの利便性を、パフォーマンスや可用性を維持しなら、オンプレ環境で提供可能だ。第2に、当社が培ってきたデータ技術やデータ保護などを、どのクラウドでも利用できるよう進めている。最後に、マルチクラウド全体を一元管理することが重要で、エッジも含めた一元管理も推進している。オンプレでもas a Serviceとして提供することで、必要な時に必要な分だけ利用できる仕組みを用意している。

データ保護の観点では、同じ方式でバックアップ・災害復旧できることが重要だ。それに加えて昨今のサイバー脅威に対応するには、サイバーリカバリのソリューションも重要になってくる。バックアップだけではサイバー脅威から守れないため、汚染されていないデータをきちんと隔離し、有事の際にデータを戻せることを担保できる仕組みが求められる。このように多種多様なアプリケーションに対応できる、包括的なポートフォリオを当社は提供している。

ミュンヘン再保険の事例

ミュンヘン再保険では当社のコンサルティングサービスで現状を可視化してクラウド戦略を練ったところ、既存環境も生かしてマルチクラウド構成を取ることが最適という結果になった。そこでまずプライベートクラウドの高度化から始め、その後AWSをVMwareの基盤と連携をして、ハイブリッドクラウドを構築した。また、Microsoft Azure VMwareソリューションを通じて、Azureの領域でもマルチクラウドを構築していった。現在はクラウドに依存することなくアプリケーションを展開できるようDXを推進している。

エンタープライズ・データ分析基盤

データドリブンアプローチを実践するには、膨大なデータからインサイトを見出し、より良いビジネスにしていくことが重要だ。しかしプロセスとテクノロジーは多種多様で、データソースの数は多く、データの型もバラバラで、データを保存する場所も様々な所にまたがっている。データ分析基盤で重要なことは、データディスカバリーとインジェストの高速化、データアクセスとガバナンスの民主化、データの保存と検索の簡素化、従来のアナリティクスのモダナイズ、統合されたパートナーシップとソリューションだ。

その例が当社のDell Technologies Validated Designsで、統合されたパートナーシップとソリューションだ。ISV様との共同で、色々なユースケースに対応できる検証済みのソリューションを展開している。複雑なシステム導入の手間・負荷を軽減し、その分をデータ分析技術の高度化などに寄与できると考えている。

MasterCard様は、1件あたり190万のルールを適用してトランザクションを処理することで、リアルタイムの不正検知を行っている。そのためにPCI認証を受けたHadoopクラスターとDellストレージを導入した。すべてを一元処理できるわけではないことから、インテリジェンスをエッジに向けていくことも検討されている。

エッジのインフラストラクチャ基盤

現在でも金融機関に関して、支店のあることが信頼性に繋がる要素の1つであることが調査結果で出ている。またデジタルでアドバイスされるよりも、支店で顔を合わせてアドバイスを受けたほうが行動に移しやすいことも明らかになっている。物理的な支店は今後も存続し、いかにデジタルネイティブな支店を作り上げていくかが重要だ。

このようなサービスを提供するため、セキュリティを担保したうえでのデータ処理、リアルタイムでの処理においてエッジが重要だ。しかし一方でエッジが今後無数に増えていくことが課題であり、当社ではエッジオペレーションソフトウェアプラットフォームを準備している。

◆講演企業情報
デル・テクノロジーズ株式会社:https://www.dell.com/ja-jp