「住信SBIネット銀行におけるNEOBANKを通じた金融サービスの変革」

特別講演

【講演者】
住信SBIネット銀行株式会社
執行役員
服部 浩久 氏

<住信SBIネット銀行とは>

2007年9月の開業以来、国内有数のデジタルバンクに成長する一方、事業会社等に金融インフラを提供するユニークな存在だ。優れたUI/UXにより、様々な顧客満足度調査でNo.1を獲得してきた。現在は600万口座に達成する勢いで成長を続けている。当行は住宅ローンにも強みがあり、取扱高は昨年に累計で8兆円を超えた。

ネットバンク機能はアプリを通じて提供しており、ネットでの安全性も重要だ。昨今はフィッシングなどで狙われることが多く、高度なセキュリティが求められている。当行のアプリは「FIDO」という規格を採用しており、当社の100%子会社であるネットムーブ社を通じてサービス提供をしている。FIDOは安全性と利便性を兼ね備えたパスワードレス認証で、IDとパスワードを別々に管理する。仮にどちらかが漏れても、もう片方がないため使えず、大量のデータ流出が起こりえない仕組みだ。

API活用をいち早く進め、2016年には邦銀初の参照系APIを開放、2017年には邦銀初の更新型APIの開放を行った。APIによって銀行と外部企業をつなぎ、個々の顧客に合ったサービスを創出している。具体的にマネーフォワード様、freee様、ウェルスナビ様などの提携先様がいる。

<BaaS事業のビジネスモデル>

住信SBIネット銀行の「NEOBANK」は提携パートナーを通じて、そのエコシステムの顧客に対し、フルバンキングサービスを提供できる。提携先様はキャッシュレス決済の導入により、決済コストの増加やキャッシュフローの悪化が喫緊の課題となっている。一方で、いかに自社の経済圏に顧客を取り込むかも重要なテーマだ。また、収益の多様化に取り組むため、BaaSに取り組む企業も多い。BaaS決済で、収益を分配しながら当社が提携パートナーを通じて金融サービスを提供する。顧客へのポイント提供によるロイヤリティ向上にも繋がる。

NEOBANKサービスの提供は2020年4月のJAL様に始まり、直近では2023年1月から第一生命様のサービスがスタートした。今後開始が予定されている企業では、三井住友信託銀行様、松井証券様などがあり、ほかの企業も近く発表していくことになる。また、北海道日本ハムファイターズ様の新球場「エスコンフィールド北海道」におけるキャッシュレス決済で、我々のサービスが適用される。エンターテイメント等のファン層はBaaSとの親和性が高いと考えられ、期待も高まっている状況だ。

<事例:JAL>

JAL様にはマイルという非常に強力な武器があり、マイルの付与や消費をバンキングとどう絡めるかが重要であった。第1号案件であったため開発にも苦労したが、この2年でJAL Global Wallet、JAL NEOBANKなどサービスが揃ってきた。JAL Global Walletでは、マイルをMasterCardのプリペイドカードにチャージし、買い物に利用することもできる。

海外需要の多い企業でもあり、海外でバンキングサービスをどう使ってもらうかも課題だ。トラベルプリカに銀行機能をバンドルし、海外ではプリカを使ってもらいつつ、国内ではバンキングサービスを使ってもらう設計にできないか進めている。

<事例:CCC>

CCCは、Tポイントの運営企業として知られており、約7,000万人の会員数を抱えている。Tポイントが貯まる/使えるNEOBANサービスを提供しており、貯まったTポイントをカードローンの随時返済に充当したり公営競技に使ったりすることが可能だ。Tポイントファンの方に加え、端数のTポイントが余っている方にも口座開設をしていただけており、エッジの効いたサービスを提供できていると捉えている。

2021年3月から立ち上げたが、直近1年のほうが利用率は格段に上がっている。トランザクションが増えるほど銀行の収益も増すため、各NEOBANKはいかにユーザーの利用を増やすかが重要になる。

<事例:ヤマダ>

ヤマダ電機様は、NEOBANKでいくつかある中の「王道」と言えるモデルだ。ヤマダのポイントアプリからYAMADA NEOBANKの口座を開設し、ヤマダPayという形で紐づけを行うことで、決済に使えるようになる。ヤマダPayでは、アプリに表示されるバーコードをレジで読み取ってもらうだけで決済が完了になる。

仕組みはリアルタイム口座振替を利用しており、デビットカードのような挙動を取るが、国際ブランドなどは絡まない。当社とヤマダ電機様だけで完結するため、決済コストを抑えられる。インハウスペイが盛り上がるかについては議論もあるが、一回の提示だけで済むという利便性をいかに顧客に感じてもらえるかが重要だ。

<事例:オープンハウス>

おうちリンクアプリに銀行機能を実装しており、電気・ガス・ネットの料金引き落としがNEOBANK口座になる。口座振替だと手数料がかかるが、NEOBANKならオープンハウス様と当社だけの話になる。コストがかからないため、ユーザーに多くのポイントを還元できる。

<事例:髙島屋>

髙島屋NEOBANKでは、銀行取引と積立サービスを提供しており、アプリで「友の会」の積立をできるようにしたのことが大きな特徴だ。友の会の利率は結構高く、毎月1万円を積み立てると12カ月で13万円分のポイントになる。髙島屋のサービスでのみ使えるポイントではあるが、1年間の積立で12万円が13万円になる金融商品というのはほとんどないだろう。

友の会の元々のユーザー層は女性や高齢の方の比率が高かったが、スマホアプリにしたことで男性の割合も高くなり、平均年齢も若くなった。NEOBANKにすることで、新たな属性の顧客も獲得することができた事例と言える。

<事例:第一生命ネオバンク>

2023年1月から、第一生命NEOBANKがスタートした。「こども口座」として0歳からの口座開設が可能になっている。当社は住宅ローンに強いということもあり、0歳からの口座開設は優先順位で後回しになっていたが、第一生命様との提携で実現することができた。提携先様との協業の中で、自分たちのサービスもブラッシュアップしていける事例だ。サービス開始から1カ月だが非常に好調で、今後サービス拡張もしていく予定である。

<NEOBANKのスキーム>

我々は提携先様を通して、提携先様の顧客にBaasを利用していただく。成功するには、我々がいかに黒子に徹することができるか、提携先がいかに銀行サービスを運営しているようにアピールするかが重要と考えている。サービス内容は各社で様々だが、良いサービスとしていかに顧客に利用してもらうかが共通のキーポイントとなる。

<今後のBaaS(NEOBANK)展開>

提携先の増加に注力しながら、新たな業種と提携する中で新たなアイデアを生かしながら新商品を開発していきたい。ゆくゆくは「NEOBANK商圏」として、NEOBANKの提携先様同士が色々な繋がりを持つことができたら面白いと考えているが、まずは各社様ごとの取り組みをしっかりと進めていく。

三井住友銀行様のOliveや、楽天銀行とJR東日本のネット銀行など、他社も色々なバンキングサービスを発表しており、我々から見ると競合にはなる。しかし当社だけがBaaSを推進しても、1社でのサービス提供だと限界もある。様々な銀行様がBaaSを事業会社様に提供する中で、良いライバル関係として世の中でBaaSを盛り上げていければと考えている。