2021年11月4日(木)開催 FINANCE WEBINAR「金融業界におけるテクノロジーを活用した業務変革」<アフターレポート>


2021年11月4日セミナーインフォ主催FINANCE WEBINAR 「金融業界におけるテクノロジーを活用した業務変革」が開催された。新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本のデジタル化への遅れが明らかとなり、金融業界においても急速な対応を求められた。しかしながら、顧客データや社内の情報の煩雑化、紙による業務、慣習化された働き方等、デジタル化を阻む問題点も山積みとなっており、組織体制も巻き込んだ抜本的なシステムの見直しの着手が課題となっている。本セミナーでは各金融機関のデジタル活用の最新事例をご紹介いただいたほか、協賛企業による最新技術をご紹介した。

目次

「三井住友海上のDG戦略(デジタルグローバリゼーション戦略)
~グローバルベースで取組むDXについて~」

笹森 愛美 氏
基調講演➁
【講演者】
三井住友海上火災保険株式会社
デジタル戦略部DGチーム
アセアン市場推進リーダー 課長代理
笹森 愛美 氏
池田 久美子 氏
【講演者】
デジタル戦略部DGチーム
米国市場推進リーダー 主任
  池田 久美子 氏

三井住友海上について

当社は、国内・海外にネットワークを持つ保険会社である。国内は475の営業課支社と207の保険金お支払センターを設け、全国のお客さまにサービスを提供し、海外は42の国と地域にネットワークを広げグローバルに展開をしている。

当社は、未来にわたって、世界のリスクや課題解決でリーダーシップを発揮するイノベーション企業を目指している。また、当社の経営理念は、安心と安全をお客さまに提供し、活力ある社会の発展と地球の健やかな未来を支えることである。この理念のもとにさまざまなデジタル技術やデータを活用し、この時代に保険会社としてお客さまに求められる期待以上のサービスを提供することを目指している。

世界では常にさまざまな変化が起こっており、それに伴いさまざまな社会課題があり、未来の変化を予測して課題を解決するための保険の力が必要であると私たちは考えている次第だ。

三井住友海上のデジタライゼーション

当社では、サービスの向上や業務プロセスの効率化に加えて、グループのビジネス全体の変革につなげ、保険ビジネスのデジタライゼーションを推進するためにDX、DI、DGの3つの領域に分けて、取り組みをしている。また、その土台として人材育成、ガバナンスの整備、システム基盤の対応にも注力している。

実際にDXの取組について2つ紹介をする。
1つ目は、「MS1 Brain」である。MS1 Brainは、損保業界初のAIを搭載した代理店営業支援システムであり、AIを活用し、お客さまのニーズ予測機能、お客さまへの提案サポート機能、代理店の経営サポート機能などを搭載している。これらによりお客さま一人一人に最適な提案を行うことが可能であり、代理店経営や当社営業社員の役割を変革している。

2つ目の取組は、「RisTech」である。当社のデータサイエンティストがデータ分析を行い、取引先企業の課題を解決に導くサービスである。これまでは、当社は取引先企業のリスクマネジメントを支援し、保険契約の獲得に注力してきたが、現在は、当社の保険データと取引先のデータの分析に注力している。今後は、新サービスの開発、新規事業、取引先企業の生産性向上に寄与するような取り組みにも注力していく。また、RisTechでは、当社のデータと公開されているデータや企業が販売するデータなどを掛け合わせて、付加価値の高いサービスを提供することが可能だ。さらに、スマートモビリティ、スマートシティ、自然災害、気候変動など、業界全体あるいは社会全体の課題にも取り組んでいる次第だ。

Global Digital Hub(GDH)について

当社のDXのグローバル展開は、東京、シリコンバレー、シンガポール、イスラエル、ロンドンの5つの拠点で行っており、各拠点がシナジーを発揮することにより様々な取り組みを推進していき、戦略的投資を加速させている。

シンガポールではアジアでのリテールマーケットを中心としたダイレクトビジネスの創造や、プラットフォーマーとの協業、ロンドンではデータ分析による課題解決を検証する場として、RisTechのグローバル版の取り組み、イスラエルでは先進技術を探索してイノベーション開発を行う拠点、シリコンバレーではインシュアテック企業との協業を進めている次第だ。これらの各拠点での活動はグローバルベースでつながって、当社グループの競争力の強化につながっている。

GDHシンガポールの取り組み事例

当社GDHシンガポールが行った、ASEANのリテールマーケットにおけるデジタライゼーションの取り組みは、MS1 Brainのコンセプトを当社のフィリピン現地法人のパートナーであるBPI銀行に展開し、銀行と損保、両者の顧客データを合わせて分析することで、デジタルの力を使って新たな観点で見込み客のリストを作成し、既存チャネルのDXを推進したプロジェクトである。

BPI銀行は、1851年に設立された東南アジア最古の銀行である。総資産額は業界第2位の大手で、フィリピン全土に800以上の支店、拠点を展開しており、約900万人以上の顧客を保有し、融資、保険、証券、リース、クレジットカードなど、幅広いサービスを提供している。

当社のフィリピン現地法人BPI MS Insuranceは、BPI銀行と当社の合弁企業として2002年に設立し、「データ分析」「販売チャネルのDX」これら2つの分野のプロジェクトに取り組んでいる。

データ分析においてはBPI銀行が保有している900万人の顧客データおよび当社保有データにAIを活用し、分析することで、成約率が高いと見込まれるお客さまのリストや、最適な営業活動のトークスクリプトなどを生成している。これらを販売チャネルのDXに活用し、銀行販売やコールセンター、Webアプリによるオンライン保険販売において、お客さま一人一人に最適なタイミングで、最適な提案を実施する仕組みを実現した。また、両者のアプリを連携させ、ビルトインコネクトをかなえることで、コロナ禍で変容したマーケットにも適合するデータ分析によって裏付けされたフルデジタル保険販売というフィリピン初のビジネスモデルを構築している。

2つのデータ分析基盤に、BPI銀行、当社現地法人の匿名化したデータを使用して分析を行い、データサイエンティストが銀行に常駐する方法で分析を実施した。5年間の銀行取引データ、900万件の顧客データを分析し、年齢、性別、ライフステージ、収入、例えば車の購入履歴などの情報を基にセグメント化を行い、見込客のリストを作成し、モバイルアプリを介したオンライン保険販売に活用している。

これらに加え、パーソナライズされたトークスクリプトも作成し、コールセンターを通じたテレマーケティングに活用し、自動車保険、傷害保険、医療保険などを販売し、成約率は従来の2倍以上の効果を生み出している。

Webアプリを用いた、顧客アプローチについては、BPI銀行のモバイルアプリ上のトップ画面に、フィリピン現法の保険バナーの配置を行い、ビルトイン販売を可能にしており、保険販売の画面で、API連携により、お客さま情報を読み込み、入力作業を省力化している。お支払い方法には、オンラインバンキングも選択でき、リアルタイムでの保険料口座引き落とし、電子証券の自動メール配信機能も備えている。

そのほかにも、900万人の顧客のうち、加入率が高いと予測された約50万人にターゲットを絞り、SMSとEメールを展開している。データ分析を核とした新たなビジネスモデルにおいては、お客さまの最適なニーズ把握の下、適切なタイミングでアプローチすることでアップセル、クロスセル、双方の成約率や増収、そしてCXの向上が可能だと考えている。

GDHロンドンの取り組み事例

GDHロンドンでは、グローバルにおけるデータ分析の中核拠点として、当社グループ傘下のイギリスの再保険会社であるMS Amlinと連携して取り組みを進めている。ロイズや再保険マーケットに集積されたリスク情報を使い、データ分析を通じて当社グループ内外へ価値を提供し、DXを通じた保険業務の高度化と、また社会課題の解決を目指している。

GDHロンドンでは、リスク分析、スコアリングツールの開発によって既存業務の改革を行い、新たなインサイトを提供することによって、既存の保険引受業務の高度化、適正化を実現している。データドリブンな意思決定サポートツールは、生産性や収益の向上に大きく貢献すると考えている。

ロンドンでは、昨年度より多数の実証実験を行っているが、マシンラーニングによるデータ分析による、社内データと外部データをもとに引受業務の高度化に取り組んだ事例を紹介する。

カリフォルニアの山火事リスクに関する事例については、カリフォルニア州を450の区画に分け、さまざまなデータを重ね合わせて区画ごとの火災リスクを予測し、スコアリングを行った。アンダーライター向けのダッシュボードを開発することにより、効果検証を行う事が可能である。

船舶事故に関する事例については船舶特性に関する外部のデータ、過去の船舶事故やメンテナンス履歴などのデータを基に事故の可能性を予測するモデルを構築し、テストデータで検証した結果を踏まえ、モデルの調整を実施し、精度を向上させた。

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