「CDP活用の先進事例から考える保険業界での顧客データ活用」
- 【講演者】
- トレジャーデータ株式会社
マーケティングマネージャー
小林 広紀 氏
<トレジャーデータについて>
当社は、日本人3名がシリコンバレーで2011年に立ち上げた会社で、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)を市場の草創期より提供している。主にマーケティング業務に活用され、業界を問わず450社を超える企業に導入しており、金融機関では、大手銀行、ひまわり生命保険など多くの企業に活用いただいている。
<金融業界における競合とは>
昨今、非金融業界のデジタルネイティブ企業が金融業務に参入してきており、既存サービスならびに、これまでにない新しいサービスを提供している。新しいデジタルネイティブ企業により、既存のサービスが置き換えられる危機が直面していると感じている。
これらの要因は、デジタルネイティブ企業と既存の金融機関が保有しているデータの射程距離の差であると考えている。既存の金融機関が保有しているデータは性別や年代に関するデモグラフィック、年収や決済情報に関するトランザクションデータの情報を正確に大量に保有している。一方で、新規参入してきているデジタルネイティブの企業は、これらのデータに加え、「ライフサイクルデータ」を保有している。
ライフサイクルデータとは、どんな記事を読んでいるのか、どの車を探しているか、どの日用雑貨を買っているかなど、いわゆる生活や興味、趣味趣向に関するデータである。
AmazonやGoogleなどのデジタルネイティブ企業はライフサイクルデータを大量に保有しており、これらのデータを活用し、個人個人に合わせた与信を瞬時に判断して、新しいプロダクトを開発、提供している。
先に述べた、金融機関が保有している既存のデータに加えて、ライフスタイルデータを元に個人を理解することにより、ライフサイクルの変化の兆候を先に捉えることでき、お客さまに1歩先の情報を適切なタイミングで届けることが可能になると考えている。
<カスタマーデータプラットフォーム(CDP)について>
これらを可能にするのが、当社が提供しているカスタマーデータプラットフォーム「Treasure Data CDP」である。CDPとは自社が持つ顧客データを収集・統合するための基盤であり、簡単にデータを収集することが可能だ。さらに、素早く分析し、それらを一元管理して施策に活用することができる。
現在、アプリやホームページなど、さまざまなデジタル接点が増加したことにより、情報がそれぞれのデータベースに分断される弊害が起こっている。さらに、昨今の新型コロナウイルスの影響で、店舗での接点が減少し、インターネットを活用した情報収集が増加しているため、デジタルチャネルを活用した接点構築や接客、非対面に対応した営業ツール導入などが必要である。
また、昨今サードパーティデータの活用に関するさまざまな法規制、法改正が行われており、これに合わせてファーストパーティデータの取得を準備している企業も増えている。そのため、お客さまの同意管理ツールやMA、CRMなどツールの導入が加速する一方で、各所にデータが散在してしまい、データ活用が限定的になる問題が起こっている。
そうした背景から、CDPの必要性が高まっている。CDPを活用する事で、EC、マーケティング、店舗、営業、製造などのデータをCDPの中で共通のIDを振りわけ、結合し、分析することが可能だ。多種多様なデータを収集し、統合・管理・分析と利活用をワンストップで実行することができる。
金融機関のデータの活用にあたり重要なことは、金融業界のファネル毎の顧客接点で生まれたデータの統合を図り、個客理解を深める事だと考えている。お客さまが今どのようなコンディションなのか、どのようなものを欲しているのか、どのような変化が起ころうとしているのか、これらを先回りして理解し、そのお客さまに合った情報を適切なタイミングで届けることが可能になると、売上向上につながっていくと考えている。
Treasure Data CDPの特徴として、現在500を超えるツールとAPI連携しているため、コネクターの開発やメンテンナンスに、膨大な費用と作業の手間をかける必要がないことが挙げられる。
そのほかにも、コンサルティングや技術サポートなどを行うパートナー企業と多数連携しており、システム構築から運用までカバーできる体制も構築している次第だ。
また、当社のCDPは基幹のデータベースの置き換えではなく、必要なデータベースから、必要なデータだけを連携することにより、セキュリティを担保したうえで、スピードのある施策展開や変化に対応することが可能だ。
<損害保険会社の導入事例>
損害保険会社におけるTreasure Data CDP導入事例を紹介する。 同社では、環境変化により、営業社員による顧客情報の入手が困難となり、ライフステージの変化を把握することが難しくなっているという課題があった。自社で保有している属性データに加え、家族構成や職業などの外部属データを結合し、お客さまのイメージの深堀したうえで、営業職の支援につなげたいと相談を頂いた。
そこで 、CDPで契約者情報とオンライン行動データを結合し、可視化させ、セカンドパーティやサードパーティのデータを付け加えることで、ライフステージの推計情報を補完した。
その結果、推計情報を基に、興味関心を持ちそうな新しい保険の提案や見直しなど、営業活動の優先順位付けや案内商品の選定を行う事が可能になり、保険商品のアップセル、クロスセルのキッカケづくりに役立つ情報を保険代理店へ提供し、営業支援につなげることができた。
また、会員の解約を低減する対策にも活用頂いており、機械学習の機能を使い、1カ月のデータから、未来1カ月の解約行動を予測することが可能だ。過去の退会をした方のデータと近しい動きをされている方がいた場合、アラートを立て、営業担当者通知することにより、解約になる前に事前にフォローアップを行い、解約の減少につなげることも可能である。
このように解約の予防対策が行えるのは、お客さま一人一人の特性や状態に合わせた、コミュニケーションが可能になるからこそ実現できるのである。さまざまなデータを統合して、そのお客さまがどのようなものを欲しているのか、どのような変化が起きているのかを理解した上で、適切な情報を基に、適切なタイミングでサービスを提供することができることが非常に重要だと考える。
<最高の顧客体験を実現するためのプラットフォーム>
従来までマーケティング用途でご利用いただいていたCDPではあるが、保険業界に向け、お客様を深く理解するために、新たにセールスとコンタクトセンターのデータを結合できるCDPの活用を提案したい。その中でも、コンタクトセンターにおけるカスタマーサクセス実現のためのプラットフォーム「Treasure Data CDP for Service※」を紹介する。
※イベント開催時は旧名称「Treasure Data CDP for Contact Center」だったが、2021年10月からのグローバルでのサービス展開に伴い「Treasure Data CDP for Service」へプロダクト名称を変更。記事では新名称で記載。
コンタクトセンターにて、カスタマーサポートが応対したデータをリアルタイムで結合することにより、顧客カルテやステータスの可視化、自然言語処理によるVOC(顧客の声)の活用、機械学習よるLTVや解約確立などの予測、次に実行すべきアクションの提案などが可能である。
Treasure Data CDP for Serviceは、LTV向上と顧客接点の対応を最適化するデータソリューションと言い換えることができる。コンタクトセンターがお客様を対応する機会は多く、コンタクトセンター部署がお客さまのデータを把握し、コンディションを理解しながら対応することにより、コンバージョンの確率の向上やアップセルの機会創出などにつなげることができると考えている。
当社では、従来までの効率性を重視していた「コスト指向のコンタクトセンター」ではなく、顧客満足度を向上させる「プロフィット指向のコンタクトセンター」の構築を支援していく。一人一人に最適な顧客体験を提供し、新しいゴールを設定したうえで、一緒に目標達成に向けて伴走させていただく次第だ。
◆講演企業情報
トレジャーデータ株式会社:https://www.treasuredata.co.jp/