「領収書・請求書のペーパーレスから始める経理・経営部門の最適化
~改正電帳法をうまく活用する秘訣とは~」

【講演者】
株式会社コンカー
ディストリビューション統括本部SMB事業本部 第3営業部
石原 謙吾 氏

<企業紹介>

間接費とは、経費精算や受け取った領収書の処理といった業務をいう。弊社はこうした間接費に特化したサービスを提供し、この分野では日本・グローバルともにトップクラスのシェアを獲得している企業である。また、日本国内では電子帳簿法の対応というところでも非常に多くの企業に採用いただいている実績がある。

これまで弊社では業種、業態、企業規模を問わず、クラウド型のサービスの提供を通して間接費業務のDX支援を行ってきた。今回は間接費領域のDXについて、外部環境の変化もふまえながらご紹介できればと考えている。

<なぜ今、間接費DXが必要なのか>

まず今、世の中において、間接費という領域のデジタルトランスフォーメーション(DX)がなぜ必要なのかについて、ポイントを2つに絞ってご説明したい。

1点目は間接費を取り巻く外部環境が激しく変化していることだ。たとえば、領収書の領域においては税制改正の影響が大きい。毎年法改正が行われるような状況に対応する必要がある。また請求書の領域においてもインボイス制度の施行に向けた対応が求められている。また働き方の変化もある。コロナの影響を受け、各企業の働き方が大きく変わってきている。テレワークが普及したほか、ペーパーレス、ハンコレスの動きも加速しつつある。このような状況を受けて政府もデジタルトランスフォーメーションに対しての取り組みを推進する姿勢を打ち出しており、企業側でも対応を迫られているところがある。さらに、QR決済のように新しいテクノロジーが次々と登場する中、システムに求められる要求水準も高くなっている。

このように間接費を取り巻く外部環境は日夜変わってきている。すでに間接費に関わるシステムを導入いただいている企業様も多いと思うが、激しい変化に対してオンプレミスのシステムで対応するのは難しい。今後の間接費関連の業務を考える上では、常に最新の状態にアップデートできる専門のクラウドサービスをうまくご活用いただくのがポイントなのではないかと思われる。激しい環境変化に対応するためには、クラウドサービスを利用したデジタルトランスフォーメーションが不可欠になりつつあるのだ。

2つ目のポイントは、いわゆる電子帳簿保存法への対応である。電子帳簿保存法は国税関係帳簿書類を電子的に保管することを認めた法制度だ。電子的に書類を保管する方法としては、電子データで受領したものをそのまま電子データのまま保存する方式とスキャナ保存方式の2つがあり、これまではどちらかを自由に選ぶことができた。しかし、2022年1月からルールが変わり、電子データで受領したものについては、電子データのまま保存することが求められるようになった。2年間の猶予期間があるとはいえ、今、企業各社は対応を迫られているような状況である。今後は紙と電子データの請求書・領収書が混在する状況になるため、請求・領収書をめぐる取引がこれまで以上に煩雑化する可能性がある。一方、今回のルール変更では、スキャナ保存方式では領収書の自署が不要になるなど、ペーパーレス化による業務効率化の観点から要件が緩和された側面もある。そのかわり不正に対しては厳罰化がされているため、領収書使い回しの防止など内部統制の強化は必須だ。

<コンカーによる間接費DX>

DXは、トランスフォーメーション・オブ・デジタルではない。要するに、システムの入れ替えそれ自体はDXではないということだ。私としてはどちらかというと、ビジネス・トランスフォーメーション・バイ・デジタルが、本来のDXの定義に近いと考えている。DXの本質は、業務改革を目標とし、その目標達成に向けてデジタルツールを活用していく点にこそあるのだ。

さて、ここでDXの本来の定義を間接費の領域にあてはめてみよう。デジタル技術を活用して従来の間接費関係の業務を変えていく。これが間接費におけるDXである。では、具体的にどのような改革が考えられるのか。弊社のソリューションを例に紹介したい。弊社ではデジタルツールをうまく活用し、間接費の領域、特に経費計算に関わる領域の業務そのものをなくしていくことを目指している。経費精算業務をなくすために重要なのは、キャッシュレス、入力レス、ペーパーレス、管理業務レスという4つのレスだ。

まずキャッシュレスである。キャッシュレスと入力レスは相性がよく、キャッシュレスを進めることは入力レス、すなわち申請者の手作業を減らすことにつながる。キャッシュレス決済は支払いの情報がすべてデジタルデータで流れ込んでくるため、紙の領収書を見ながら手入力する作業が不要になるからだ。そのため、QRコード決済、法人カードでの決済といったキャッシュレス決済と弊社のソリューションをつなげるだけで、データ入力の自動化が実現できるのである。また、紙の領収書を申請者に写真に撮ってもらったものをAI-OCRで電子データ化したり、名刺クラウドとの連携により同席者の情報入力を省いたりといった仕組みも構築している。

続いてペーパーレスである。これは請求書などを電子データの形で保存するということである。特に弊社はスキャナ保存方式の導入に向けてロビー活動を展開してきた実績があり、ペーパーレスの実現に関しては一定の知見がたまっている。

最後は管理業務レスである。間接費、経費計算の領域では、申請者の業務負荷はもちろんのこと、申請内容の確認や集計といった管理者の業務負荷も非常に高い。そこで弊社では、そういった管理業務もなくそうという方向でサービス設計を行っている。弊社のソリューションを使うことで、予算進捗の見える化、経費申請時における内容の自動チェック、集計作業の自動化などによって、普段の業務を大幅に削減することができる。さらに弊社ではシステム管理のアウトソーシングも受けているため、これらの業務削減も可能だ。

<DXプロジェクトの進め方と重要なポイント>

ここまで弊社が推進する間接費領域のDXについて説明してきたが、最後にDXプロジェクトを進める上でのポイントを2つほどご紹介したい。

一般的にDXプロジェクトは、導入前の検討、導入プロジェクト、本番稼働といった形で進められる。ポイントは導入前の検討で目標を決めること、そして導入プロジェクトのところでシステム導入とともに業務改革を進めることだ。DXプロジェクトがうまくいかない企業の大半は、システムを活用していくための業務改革が頓挫してしまうケースである。DXプロジェクトはステークホルダーも多く、各部門の利害が対立しやすい。しかも既存業務の変革には痛みも伴うものだ。特に間接費は全社員に関わる業務なので、そこをデジタルトランスフォーメーションするとなると全社員を巻き込むことになる。だからこそDXを進める上では検討前の段階で経営層を巻き込み、最終的なビジョン・ゴールを全社的に共有することが必要だ。現場に任せるのではなく経営層の方が自ら積極的に参画し、意思決定に関与する。これがDXを成功させる上で最大のポイントになるといえよう。

◆講演企業情報
株式会社コンカー:https://www.concur.co.jp/