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【連載】保険業界が取り組むべき重要事項第5回~~デジタル技術を活用した効果的な取り組み④

昨年8月から掲載してきた保険業界が取り組むべき重要事項も今回が最終回となる。前回の記事では、コロナ禍での環境・経済の変化の中の保険会社の業務のあり方として、非対面販売に向けたアプローチとソリューション、考察事項について、生命保険の対面販売と新規契約申し込みプロセスを例に述べてきた。非対面販売の実現のためには、インタラクティブ(双方向)なやり取りの実現とコブラウジング(画面共有)に着目し、伝統的で根強い営業スタイルの対面販売を変革する意識付けと、代理店や営業職員によるビジネス価値、カスタマーエクスペリエンスをより高める対応が求められると述べた。商品やサービスにそれほど差がない中、デジタル技術を活用したカスタマーエクスペリエンス向上を図ることがより重要となってきている。なぜならば、心地よい体験をした顧客の方がNPS(※1)や契約継続率向上につながる傾向があるからだ。今回は非対面におけるカスタマーエクスペリエンスの向上について、「パーソナライズされた動画」を活用した弊社ソリューションの取り組み事例を紹介する。

【連載】保険業界が取り組むべき重要事項第5回~~デジタル技術を活用した効果的な取り組み④
  1. カスタマーエクスペリエンス(CX)とは
  2. パーソナライズされた動画でCX向上を図る
  3. まとめ
※本稿は保険毎日新聞に掲載された内容を、保険毎日新聞社の許可を得て、転載・編集しています。

カスタマーエクスペリエンス(CX)とは

カスタマーエクスペリエンス(CX)とは、「Customer Experience」の略称で「顧客が体験する価値」のことを意味する。商品やサービスの金銭的な価値だけではなく、商品購入前の検討段階~購入後のサポートなど、自社の商品やサービスに関連する全ての顧客体験が対象となる。

提供する商品やサービスで差異を出せればよいのだが、昨今は商品やサービスで差別化を図りにくい。そこで商品やサービスを提供する空間なり時間が顧客にとって心地よいかどうかが競争上の重要な要素となっている。商品やサービスにそれほど差異がなければ、高度な顧客体験を提供できる会社は、CX評価が低い会社よりも受注率が高まることになる。

保険会社はCX向上を図るため主に次のような取り組みを行ってきている。①保険を検討している顧客や保険契約者向けにウェブサイト上にマイページを提供する②専用のモバイルアプリを使って事故発生時の対応サポートや健康促進を行える仕組みを提供する③顧客が複数のチャネル(代理店、コールセンターおよび営業職員)を縦横どのように経由してもスムーズに情報を入手でき、購買へ至ることができるためのチャネル横断的な仕組み(オムニチャネル)を提供する―。

また、本稿の第3回第4回で紹介したコールセンターのエンゲージメント向上や、非対面販売に向けたソリューションはCX向上を図るための取り組み事例である(図表1)。CX向上を図るソリューションや取り組みは、顧客に対していわゆる良質のカスタマージャーニーを体験する場を提供する。

マイページへアクセスした顧客は、オンラインで自ら保険内容を確認でき、各種変更手続きや支払請求が行えるので、アクセスしたことがない顧客に比べて契約更新率が高くなる。

筆者はある保険会社のカスタマー担当者から「マイページへアクセスさせるための施策がない」「マイページへの登録率が思ったほど伸びない」「お客さまは分からないことがあるとすぐにコールセンターへ電話をかけてきてしまう」といった声を聞いたことがある。顧客が分からないことがあるとすぐにコールセンターへ電話してしまうと、コールセンターがつながりにくくなるといった悪循環に陥るといった課題に直面する。

前述のような課題を解決した弊社のソリューション事例を紹介したい。

パーソナライズされた動画でCX向上を図る

パーソナライズされた動画とは、カスタマイズされたインタラクティブな動画により、保険会社の複雑な保険契約内容の詳細を顧客にガイドするソリューションである。視聴者全員が同一動画を視聴するYouTubeのような動画とは異なる。保険会社がデータとクラウドテクノロジーに支えられた動画ソリューションを提供することにより、視聴者は一人一人パーソナライズされた動画を操作し、固有な体験を得ることができる。

米国を拠点とする最大の団体生命保険会社はCX向上を図る目的で保険契約者向けにマイポータルを実装した。しかし、マイポータルの登録数はわずか25%前後と低水準で推移した。その理由を探ってみると、マイポータルに登録しない理由は、マイポータルの機能上の問題ではなく、保険契約者にとって保険契約内容の複雑さが一つの障壁になっていることだと分かった。

そこで保険会社は、弊社のPersonalized Interactive Video(※2)を実装し、保険契約者が保険の保障内容の詳細と、ポータルのセルフサービス機能をガイドする、コンテキスト化された直観的な動画を作成した。作成した動画を訴求させる手段として、保険会社は保険契約者向けのウエルカムメールに動画を配信するパーソナライズURLを埋め込む。ウエルカムメールに埋め込まれたURLをクリックすると、カスタマイズされたナレーションが始まり、保険契約者の名前を呼んであいさつする(図表2)(※3)。

動画の長さを短くし、見る価値があるコンテンツを提供することがコツである(※4)。カラフルなアニメーションを使用して、各動画は視聴者に保険契約の対象となるメリットを注意深く説明する。また、マイポータルを使用して、契約内容確認、保険金請求方法および契約変更手続き等に関して詳しく説明する(図表3)。動画は視聴者に学習を促す活性化されたオンライン体験を提供する。

導入の効果は劇的であり、2カ月以内にポータル登録数は45%に増加した。さらに登録の増加と並行して、保険会社のコンタクトセンターの受電数も減少に転じた。

また、ある損害保険会社では、経営陣が家財保険の契約内容を十分に理解していない顧客が、納得のいく補償を受けられないリスクを懸念していた。そこで、顧客が選択した商品内容と、何が補償され、何が補償されないかを本ソリューションを活用してパーソナライズ動画を作成した。

74%の顧客が、動画を見ることで、保険会社の存在を実感していることが分かった。動画を見て保険会社が自分のことを気にかけてくれていると感じていることも分かった。また、84%の顧客が、動画は保険の理解に役立つと答え、動画を見た顧客に関して、見ていない顧客に比べて、12%の保持率の上昇を確認した。

まとめ

以上、パーソナライズされた動画でCX向上を図る弊社の取り組み事例を紹介した。本ソリューションによるCX向上がもたらすメリットとしては顧客離れの防止、リピーター客の獲得や企業ブランドイメージの向上が挙げられる。しかし、パソコンやスマホの操作が不慣れな高齢者向けにパーソナライズ動画の活用は少しハードルが高いかもしれない。保険会社は多様化する保険契約者一人一人のライフサイクルや特性に合わせてCX向上を図っていく必要がある。

脚注※
※1 Net Promoter Scoreの略称。米国ロイヤリティ・マーケティングの権威であるベイン・アンド・カンパニー名誉ディレクターのフレッド・ライクヘルド氏が提唱した、顧客のロイヤリティーを測るための指標。
※2 https://www.cognizant.com/perspectives/creating-more-educated-policyholders-through-personalized-video
※3 https://preprod.rtcvid.net/xyz_insurance_us/embed-iframe.php?uid=fuhcr8h9zlyry
※4 目標の長さは1・5~2分で、すべてのオプションと商品タイプで合計6分程度にする。

寄稿
コグニザントジャパン株式会社
コンサルティング事業部
小穴 隆三 氏
大手商社にてエンジニアとして自社パッケージソフトの
企画・立案・開発に従事。その後約15年間、大手企業
を対象に、業種ごとの顧客ニーズに対応したIT課題解
決コンサルテーションおよびソリューション提案に従事。
担当領域は保険業、製造業、流通業と多岐にわたる。
一般社団法人「IIBA日本支部」の監事を務め、日本
企業向けにビジネスアナリスト普及活動を行っている。
コグニザントジャパン株式会社コンサルティング事業部
に所属。
コグニザントジャパン株式会社
〒102-0083 東京都千代田区麹町2-1 PMO半蔵門
電話:03-4563-8300
URL:https://www.cognizant.com/ja-jp/
Email:CognizantJapan@cognizant.com
コグニザントジャパン株式会社
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前回の記事では、コロナ禍での環境・経済の変化の中の保険会社の業務のあり方として、保険会社職員やコールセンターオペレータの在宅勤務での業務効率化に向けた文書のデジタル化と、非対面での顧客へのサポート、およびデジタルソリューションについて述べてきた。定型商品での提供を行うダイレクト販売や職域販売を除けば、保険営業のスタイルは、営業職員が顧客を訪問し、または顧客が代理店や保険ショップ、銀行窓口へ訪れ、対面で向き合い、募集資料やオンライン画面を使用した詳細な説明と納得のもとに、時に相手の顔色を伺い、提案を繰り返して成約に至る、伝統的でなじみ深い特徴を持っている。しかし、多くの保険会社は三密回避と自粛規制の中で、非対面販売方式をベースに将来のノーマルな営業スタイルへ変化していくよう、よりきめの細かいサービスの提供と維持ができるよう、取り組んでいると想定する。本稿では、非対面販売に向けたアプローチとソリューション、考察事項について、生命保険の対面販売と新契約申込プロセスを例に、詳細に述べていくこととする。

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小穴 隆三 氏 【寄稿】
コグニザントジャパン株式会社
コンサルティング事業部

小穴 隆三 氏