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仮想通貨が貨幣になる – 資金決済法の改正と世界の最新動向

今国会に提出される予定の仮想通貨に関する法案で、金融庁により資金決済法が改正され、ビットコインに代表される仮想通貨を「貨幣」と定義する方向性が示された。それに伴い、仮想通貨取引所が登録制に、金融庁が監督官庁となる。仮想通貨を取り巻く国内外の最新動向をIT専門の弁護士が解説する。

仮想通貨が貨幣になる – 資金決済法の改正と世界の最新動向
  1. 仮想通貨取引所が登録制に、金融庁が監督官庁へ
  2. 仮想通貨の位置づけが「貨幣」に
  3. 仮想通過に対する欧米諸国の法規制と判決

仮想通貨取引所が登録制に、金融庁が監督官庁へ

仮想通貨に関する法案のポイントは、大きく分けて2つある。1つ目のポイントは、仮想通貨取引所を登録制にして、金融庁が監督官庁になるということ。これは昨年末に発表されて大きな話題となった。

仮想通貨取引所を登録制とする目的

  • 仮想通貨の取引所を経由したマネーロンダリングやテロ資金供与の防止
  • 利用者の保護

マネーロンダリングやテロ資金供与の防止の観点からは、取引所は犯罪収益移転防止法の「特定事業者」に追加され、口座開設時の本人確認や疑わしい取引の届け出を義務づけられる。

利用者保護の観点からは、利用者が預けた金銭と仮想通貨の分別管理のほか、最低資本金などを求める方針だ。

金融庁が検査権限を持ち、行政処分を出せるようになる

また、今回の法改正では、金融庁に取引所への検査権限を付与し、業務改善命令や業務停止命令などの行政処分を出せるようにするなどの項目も盛り込まれており、行政が仮想通貨市場へ介入できるような内容になっている。

さらに、公認会計士や監査法人による外部監査も義務づけられる。

仮想通貨の位置づけが「貨幣」に

仮想通貨の位置づけが「貨幣」に

仮想通貨に関する法案のもう1つのポイントは、仮想通貨の位置づけがより明確になるということだ。

物が購入できる、購入や売買を通じて法定通貨と交換できる、など仮想通貨には「貨幣」としての機能があると認定される。

2014年6月に、自民党IT戦略特命委員会(資金決済小委員会)から発表された「ビットコインをはじめとする「価値記録」への対応に関する【中間報告】」では、仮想通貨を「通貨」ではなく、新たな分類である「価値記録」と定義し、既存の法律を適用しないとの意見が出された。

仮想通貨が「貨幣」となることで税金も変わる

しかし、仮想通貨が「貨幣」として位置づけられるのであれば、税金関係などについて様々な影響が出てくる。

仮想通貨の売買については、従来は消費税を取られることが多かったが、「貨幣」となれば、消費税が非課税となる可能性が高くなる。

欧州の司法裁判所でも、昨年ビットコインを「支払手段」と認定して、付加価値税(日本でいう消費税)を非課税とした判断がされている。

また、仮想通貨が「貨幣」との位置づけが法律で決まれば、国税庁が所得税をはじめ、仮想通貨取引から生じる各種税金の取り扱いについて、整備してくることは確実だ。

出資法の制限を受ける可能性がある

また、出資法では「利息の制限」「金銭貸借等の媒介手数料の制限」が規定されているが、仮想通貨が「貨幣」とされ、仮に出資法が適用されるとなると、仮想通貨取引にも、このような制限が適用されることになる。

仮想通過に対する欧米諸国の法規制と判決

仮想通過に対する欧米諸国の法規制と判決

今回の仮想通貨の法規制は、アメリカや欧米諸国における法規制への取り組みが活発化していることにある。

また、前述のEUの司法裁判所の判断もそうだが、欧米諸国の裁判所では、仮想通貨について積極的に判断をするようになっている。

なお先日、米カリフォルニア州の判例で、ビットコインは「資産」であり、「通貨」ではないという判決が下されていて、これも今後の法規制に影響を及ぼしそうだ。

今後、仮想通貨を取り巻く法規制はどんどん具体的になっていく。流動的な仮想通貨規制について、今後に注目したい。

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弁護士

中野 秀俊 氏