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【連載】金融庁審議会「金融制度スタディ・グループ」の議論を読み解く~プラットフォーマーへの対応

2019年6月に公表された「「決済」法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告≪基本的な考え方≫(案)」(以下、「報告案」と表記)。前稿では、「決済」法制の報告案においてポイントとなる資金移動業の新類型や利用者資金の受入れ制限について解説した。本稿では、「報告案」のもう一つの柱である「プラットフォーマーへの対応」の内容を取り上げ、そのポイントを解説するとともに、今後の展望について考察する。

【連載】金融庁審議会「金融制度スタディ・グループ」の議論を読み解く~プラットフォーマーへの対応
  1. 報告案におけるプラットフォーマーの定義
  2. プラットフォーマーへの対応に関する報告案のポイント
  3. 将来的には「対面サービス」にも波及するか

報告案におけるプラットフォーマーの定義

最初に、用語の使い方について確認しておこう。一口に「プラットフォーマー」と言っても、一般的に確立された定義はなく、様々な形の企業やサービスが存在する。

その中で、今回の「報告案」の中で想定されているのは、①オンラインでサービスを提供する、②複数の金融機関と利用者の間に立って金融商品やサービスの仲介を行う、③業態を跨いだ金融機関のサービスを仲介する、を満たした主体と理解できる。

つまり、スマートフォンやタブレットのアプリを立ち上げれば、日常の決済から、投資商品や保険商品の購入、あるいはローンの申込に至るまで、「ワンストップ」で利用できるインターフェイスを提供する企業をイメージすればよいだろう。

「LINE」による「LINE Pay」をはじめとして、既にこういったサービスが提供されている例はあるものの、このタイミングで制度改正が検討されたということは、ルールが改善されることで、さらにサービスが多様化したり利便性が向上したりする余地があるということなのかもしれない。

プラットフォーマーへの対応に関する報告案のポイント

「報告案」の具体的な中身を見ていこう。現在の規制では、金融機関と利用者の間に介在して商品やサービスの仲介を行うためには、銀行代理業、金融商品仲介業、保険募集人など、各業法で定められた登録又は許可を得る必要がある。一見すると、オンラインで仲介を行う場合も、必要な許可や登録を得ればよいように思えるが、次のような問題がある。

問題①

第一に、業態を跨いでサービスを提供しようとすると、プラットフォームの運営事業者に対して複数の登録手続きを強いることになり、これが負担であるという問題。

問題②

第二に、いわゆる「所属制」に起因する問題である。現行の仲介業者は、委託元の金融機関に「所属」していると整理されている。そして、所属先の金融機関は仲介業者の業務運営を指導する義務を負っているほか、仲介業者が利用者に損害を与えたり、利用者資金を受け入れたまま破綻したりした場合は、所属金融機関が賠償する責任を負う。

つまり、当局による監督や利用者保護など、金融サービスの提供において不可欠な機能の一部を、所属金融機関が担っている訳である。

問題は、こういった「所属制」と呼ばれる仕組みは、仲介業者1社に対して所属金融機関1社から数社程度の関係を前提に設計されており、一つの業者が20~30の金融機関の商品・サービスを仲介するといったビジネスモデルは想定されていない点にある。「報告案」では、このような課題への対応として、登録作業の一本化と所属制の緩和が提案されている。

その上で、利用者保護の観点からはいくつかの留意点も併せて示されている。まず、登録作業を一本化するとしても、仲介する商品やサービスに応じた個別のルールが必要と記載されている。

例えば、利用者がプラットフォームを通じて「決済指図」を行う場合と、投資商品や保険商品の「購入指図」を行う場合とでは、プラットフォーム運営者に求められる説明義務や意向把握義務などが異なるため、個々に応じた対応が必要とされている。

また、所属制を緩和するとしても、仲介者の業務運営品質や損賠償資力など、現行の仕組みで担保されている利用者保護上のメリットまで減じてしまうことも懸念される。こういった点への措置として、プラットフォーマーが取り扱える商品やサービスをリスクが低いものに限定する、利用者資金の受入を制限する、財務規制を強化するといった対応の可能性が記載されている。

将来的には「対面サービス」にも波及するか

「報告案」から読み取れる横断的な金融サービス仲介法制の方向性は以上の通りだが、この先、全く新しい法律が制定されるのか、それとも既存の業法が改正されるのかといった具体的な制度設計の流れや、各業界団体が定める自主規制ルールとの整合性をどう確保するかなど、詳細が明らかになっていない部分も多くある。おそらく、来年の通常国会に向けて、制度の詳細が明らかになってくると思われる。

最後に、「報告案」に盛り込まれた内容ではないのだが、金融制度SGの会合の中で興味深い議論が展開されたので取り上げてみたい。それは、「対面サービス」への展開可能性である。

そもそも金融とは、商品やサービスそのものを理解するのに骨が折れるだけでなく、税制や社会保障制度などの諸制度が複雑に絡み合っており、多くの人にとって気軽に利用するにはハードルが高い。自分の家計の状態はどうなのか、これから何にいくらくらい貯めておく必要があるのか、保険と投資信託はどのように組み合わせると最適なのか、NISAやiDeCoはどう使い分けるべきか等々・・・。

スマホやタブレットを叩くだけで、これらの「問い」を軽やかに判断していける人も一定数いるだろうが、相談相手になってくれる専門家と会話のキャッチボールをしながら、自分にとっての「解」を探りたいという人も相応にいるだろう。そうすると、今回検討された「ワンストップ」の窓口は、なにもオンラインに限定される必要はなく、「人」が介在する対面サービスにおいてもニーズが強い機能のようにも思える。

この点は結果的に議論の主軸にはならなかったのだが、金融制度SGの会合でも複数のメンバーから同じような趣旨の発言がなされていた。尤も、17年11月16日に示された麻生金融担当大臣による諮問文にもある通り、今回の金融制度SGが設置された背景は「情報技術の進展等々の環境変化」である。

このため、金融サービス仲介法制の検討において、「プラットフォーマー」や「オンライン」が軸になったのもある意味自然な流れだったといえる。

その上で、今回の議論を発射台として「この先何が必要か」と考えてみたときに、オンラインか対面かに関係なく、「顧客接点」そのもののあるべき姿や、それに適した金融サービス仲介法制のあり方について、「業態横断的」に検討することなのかもしれない。今後の動向に引き続き注目していきたい。

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【 寄稿 】
野村総合研究所
金融イノベーション研究部
上級研究員

竹端 克利 氏