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改正外為法と金融機関に対する影響

2019年11月22日に外為法の改正が可決され、2020年5月までに施行される。本稿では、今回の外為法改正におけるポイントと金融機関に与える影響について解説する。

改正外為法と金融機関に対する影響
  1. 3つの大きな改正点
  2. 上場株1%取得で届出義務
  3. 議決権行使とアクティビスト

3つの大きな改正点

諸外国における外資規制強化と足並みを揃えて、外国為替及び外国貿易法(以下「外為法」という)の改正法案が2019年11月22日に国会で可決された。

外資規制の対象となる「外国投資家」には、外資系金融機関の日本法人など外国法人に直接または間接に議決権の50%以上を保有されている日本法人も含まれる。

改正のうち、金融機関にとって特に重要なものは、①上場会社の株式・議決権の取得に係る届出義務閾値の10%から1%への引下げ、①事前届出義務の免除制度の導入、③議決権行使に係る事前届出義務の拡大の3つである。

改正法は、2020年5月までに施行されるが、制度の詳細の多くは政省令に委任されている。政省令案は、本稿脱稿時点(2月20日)では未公表であるが、近く公表され、パブリックコメントに付されることが予定されている。

上場株1%取得で届出義務

届出義務閾値の引き下げによって、大量保有報告書の提出義務が生じる5%を大きく下回る水準の上場株式取得であっても、事前届出義務が生じ得ることとなる。

事前届出義務は、投資対象の上場会社グループが事前届出業種を営んでいる場合にのみ生じるが、2019年8月の告示改正により、ソフトウェアを含むテクノロジー業種が幅広く事前届出業種に指定されていることに留意が必要である。

閾値の引下げによって、外為法に基づく事前提出義務の対象となり得る取引は飛躍的に増加するが、その全てについて事前届出を義務付けることは過剰である。改正法は、閾値の引き下げと同時に事前届出義務の免除制度を導入し、事前届出義務の対象となる取引の数を絞り込むことを予定している。

具体的には、過去の外為法違反者や国有企業等以外の外国投資家による、国の安全などを損なうおそれのないポートフォリオ投資については、投資先の企業が事前届出業種を営んでいる場合であっても、①外国投資家自ら又はその密接関係者が役員に就任しないこと、②重要事業の譲渡・廃止を株主総会に自ら提案しないこと、および③国の安全等に係る非公開の技術情報にアクセスしないこと、という3つの基準を遵守することを条件として事前届出が免除される。

なお、「国有企業等」は原則として免除制度を利用できないが、ソヴリンウェルスファンドおよび年金基金は個別の認定を受けることにより免除制度を利用できる予定である。

また、武器製造、原子力、電力および通信など、事前届出業種のうち国の安全等を損なうおそれが大きい特定業種に対する投資は、「国の安全等を損なうおそれのないポートフォリオ投資」に該当せず、原則として、免除制度の対象外となることが予定されている。

しかし、外国証券会社が自己勘定で行う取引、ならびに外国銀行、外国保険会社および外国運用会社が行う取引は、対象銘柄が特定業種に関するものか否かにかかわらず、包括的に免除制度の対象となる予定である。ただし、包括免除の利用対象者は国内外の業法に基づく規制・監督を受けている者に限定される予定である。

なお、上場会社については、個別銘柄ごとに、株式取得に際しての事前届出の要否および免除制度の利用可否を示したリストが公表される予定である。

議決権行使とアクティビスト

改正法においては、①外国投資家自ら又はその密接関係者の役員就任、および②重要事業の譲渡・廃止の議案についての賛成の議決権行使が事前届出の対象に追加される(上場会社の場合は外国投資家が1%以上の議決権を保有する場合のみ)。

この内容は、免除制度を利用する者が守るべき基準の内容と平仄を合わせたものであり、株式取得時に免除制度を利用した者が、改めてこの届出を行った上で議決権行使を行うことも可能である。

この改正は議決権行使の方法によらないエンゲージメントを妨げるものではないが、アクティビストの行動を制約し得ることは否めず、日本市場におけるアクティビストの行動に具体的な影響が生じるか注目される。

寄稿
森・濱田松本法律事務所
弁護士
東 陽介 氏
2007年弁護士登録。
不動産業務全般の法務に関与。
M&Aおよびプライベートエクイティを主たる業務分野とする。
クロスボーダー案件において国内外のクライアントを
代理することが多く、外為法を含む各国外資規制に詳しい。
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【 寄稿 】
森・濱田松本法律事務所
弁護士

東 陽介 氏