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ESGファイナンスとは 具体的留意点を弁護士が解説

近時注目を浴びているESGファイナンスについて、融資形態のものを中心に、具体的な案件に取り組む上での実務上の注意点を、弁護士が解説する

ESGファイナンスとは 具体的留意点を弁護士が解説
  1. ESGファイナンスとは
  2. ガイドラインの位置付け
  3. ドキュメンテーション上の留意点
  4. 違反時の取扱い
  5. ストラクチャによる工夫

ESGファイナンスとは

新型コロナウイルス感染症の蔓延は社会的な課題を浮き彫りにし、脱炭素社会の実現やSDGs(持続可能な開発目標)等も意識されるなか、いわゆるESGファイナンスの活用に注目が集まっている。ESGファイナンスとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)という非財務情報を考慮して行う投融資である。

ESGファイナンスの一手法であるグリーンボンドについては、環境省によるグリーンボンドガイドラインの策定、補助金の付与等を通じて、国内発行実績が着実に積み上がっている(詳細については、こちらの記事を参照されたい)。

これに対し、グリーンプロジェクトへの資金を融資するグリーンローンや、コーポレートローンを借入人のサステナビリティ経営の高度化と結びつけるサステナビリティ・リンク・ローン等、債券ではなく融資の形態によるESGファイナンスについても、後述する環境省によるガイドラインの策定等を背景に、各金融機関において取組みが進められている。

間接金融の役割が大きい我が国の金融において、融資形態による取組みの拡大は、ESGファイナンス全体が発展するため不可欠と言える。融資の場合、貸付人・借入人間の対話を通じた柔軟な設計や契約書への落とし込みが比較的容易であり、創意工夫も試される。

以下では、融資形態のESGファイナンスについて、実際に案件を検討する上での具体的な留意点を説明する。

ガイドラインの位置付け

ESGファイナンスについては、法律上の明確な定義や要件が存在するわけでもなく、また、世界共通の遵守すべきルールがあるわけでもない。一方、環境省は、ESGファイナンスの一定類型について、近時、相次いでガイドライン等を公表している。

環境省は、2020年3月、グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドラインを策定し、グリーンボンドガイドラインの改訂版と共に公表した(環境省のウェブサイト参照)。また、適切なリスク・リターンを確保しつつ、環境・社会・経済に与えるポジティブなインパクトを追求するインパクトファイナンスについても、同年7月、基本的な考え方が示されている(環境省のウェブサイト参照)。これらのガイドラインは、国際的な組織・イニシアティブによるガイドラインを基本的に踏襲しており、国際動向にも沿ったものとなっている。

環境省のガイドラインや国際的に参照されているガイドライン、フレームワーク等であっても、法的な拘束力を持つわけではなく、遵守しなかったとしても罰則等はない。

しかし、これらは現状のマーケットにおける標準的な枠組みを示すものであり、格付機関等の第三者評価機関も、ガイドラインへの準拠について評価・認定付与を行っている。そのため、こうしたガイドラインに準拠した案件の取組みは、ESGファイナンスとしての位置付けを対外的に説明する上で重要である。

自社内で独自のフレームワーク等を策定したり、個別具体的な案件の取組み・ドキュメンテーションにあたっては、これらガイドラインの位置付けを十分に理解し、ガイドラインとの整合性を意識することが、実務上のポイントになると考えられる。

ドキュメンテーション上の留意点

グリーンローンに代表される資金使途を特定するタイプのESGファイナンスにおいては、資金使途の明確化及びその追跡・管理が取組みにあたり必須の要素となる。そのため、融資契約上も、資金使途がグリーンプロジェクト等であることを明確にし、資金使途の証憑提出等を融資実行の前提条件にすることが考えられる。加えて、専用口座における管理や資金使用時の報告を義務付けること等の検討も要するだろう。

資金使途を特定するタイプであるかどうかを問わず、融資契約上、借入人の事業による環境・社会等へのインパクトについての定期報告、関連する法令等の遵守等をコベナンツとして義務付けたり、提出資料の正確性等を表明保証として規定することが考えられる。とりわけ、具体的な指標に基づく報告義務等を課す場合には、どのような指標が適切かを詰める必要があり、貸付人・借入人間で十分な議論が必要となろう。

これまで、ESGファイナンスは対外的な説明に重きが置かれてきたこともあり、契約条項の在り方について必ずしも十分に検討されていないため、今後の議論が待たれるところである。

違反時の取扱い

ESGファイナンスにおいては、上記のような契約条項に違反した場合の効果についても検討を要する。

たとえば、サステナビリティ・リンク・ローンは、予め設定したサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)のベンチマークに対する借入人のパフォーマンスと融資条件を連動させる点が特徴であり、国内外の多くの先行事例においてESGに関するパフォーマンスが金利条件と連動するようになっている。このように、融資条件の変動という効果を生じさせるケースでは、対象となる指標やその客観性・透明性の確保、報告方法、条件変更のメカニズム等を、契約書で具体化しておくことが必須となる。

これに対し、ESGファイナンスにおいては、契約条項の違反等が、必ずしも融資契約上の具体的な効果を伴わない設計も考えられる。

通常、融資契約上の義務違反は、期限の利益喪失事由として、貸付人に債権回収・権利行使の基礎を与える。しかし、ESGファイナンスは、金融を通じて企業の中長期的なESG課題への取組みを促すものであり、たとえば第三者評価機関のグリーンローン認定取消しを期限の利益喪失事由とする、といった直接的なサンクションには親しまない側面も有する。

むしろ、ESG関連条項を貸付人の権利に関する効果に直接結び付けず、あくまで対話の契機にする位置付けも考えられる。このような考え方は、エンゲージメントが重要な一要素であるESGファイナンスの精神に則ったものと見ることもできる。

ストラクチャによる工夫

グリーンローン等の資金使途を特定するタイプのESGファイナンスについては、プロジェクトファイナンスのフレームワークを活用することも考えられる。厳格な資金使途の管理や資金利用の追跡管理等は、SPC(特別目的会社)を利用し、単一のプロジェクトから生じるキャッシュフローのみを返済原資とするプロジェクトファイナンスと共通する部分がある。

実際に、グリーンボンド・グリーンローンの先行事例の中には、特定のグリーンプロジェクトに対するプロジェクトファイナンスを信託によりリパッケージし、信託受益権や信託ABL貸付等の形態で、投資家に対して販売されたものも存在する。

今後は、こうしたプロジェクトファイナンスや流動化・証券化手法の組合せ等を利用することで、投資家のニーズに合わせた多様な商品が提供されることも期待される。

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末廣 裕亮 氏 【 寄稿 】
森・濱田松本法律事務所
弁護士

末廣 裕亮 氏

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