金融機関への影響

(1)自己資本比率への影響

バーゼルⅢ最終化の見直しでは株式のRWの引き上げが注目されており、金融庁はこれにより地域銀行の自己資本比率は、0.31%程度低下すると試算している。ただし、株式以外にも様々な資産のRWが見直され、RWが引き下げられるものもあり、今回の見直しにより一概に自己資本比率が低下するとは限らないだろう。

例えば、事業法人向け債権のうち、無格付の中堅中小企業のRWは100%から85%に引き下げられる。引き下げ幅は株式の引き上げ幅より小さいが、事業法人向け債権の額は株式の20倍程度あるため、事業法人向け債権のうち無格付の中堅中小企業向け債権が占める割合が50%あれば、株式のRW引き上げの影響はほぼ相殺される(※)。

一方、内部格付手法採用行は、内部格付手法による信用リスク・アセットの圧縮状況によっては、資本フロアの導入により自己資本比率の分母が増大し、自己資本比率が低下する恐れがある。

株式の額をaとすると、RW引き上げ(100%から、便宜的に全て250%に引き上げと仮定)により、1.5aだけ信用リスク・アセットが増加する。事業法人向け債権の額が株式の20倍で、そのうち50%が無格付の中堅中小企業向け債権だとすると、RWが100%から85%に15%減少するので、a×20×50%×15%=1.5aだけ信用リスク・アセットが減少する。

(2)業務への影響

業務への影響として、証券投資を行いづらくなる可能性がある。株式はRWが100%から250%または400%に引き上げられる。事業法人発行の劣後債は、現行制度では100%か150%のRWが適用されるものが多いと思われるが、見直しにより一律150%となる。G-SIBが発行するTLAC債は、国内基準行が保有する場合、現行制度では、自行の自己資本の5%相当額までは低いRW(我が国のG-SIBが発行するもののRWは20%)が適用され、それを超えた部分に150%のRWが適用されるが、見直し後は一律150%に引き上げられる。

また、マーケット・リスクの不算入特例の条件として、外国為替リスクが一定水準を超えないことも追加されるため、この水準を超えそうな銀行は外債投資を一定限度に抑える可能性もある。

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