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レガシー領域の移行ソリューション(第4回)

前回は、ITモダナイゼーションを成功させるために求められるアプローチと具体的な選択肢について話してきた。今回は、デジタルへの移行を進める上で最後の“崖”となるレガシー領域の解消に向けたソリューションについて解説していく。

レガシー領域の移行ソリューション(第4回)
  1. レガシー領域という”最後の崖”の克服
  2. リライトによるモダナイゼーション
  3. ITモダナイゼーションの目的と活用
※本稿は株式会社アクセンチュアの許可を得て、転載・編集しています。

レガシー領域という”最後の崖”の克服

前回紹介したデジタル・デカップリング、デジタル・ビークル、トランスフォーメーショナル・ジャーニーという3つのアプローチのうち1つを活用し、レガシー領域から新たに構築するデジタルシステムへの移行を進めていくと、最後にどうしても残るのが基幹系システムのレガシー領域である。下に示した図で見ると、レガシー領域にあたる黄色の部分は小さく見えるかもしれないが、実行されているアプリケーション・プログラムの数や、保守管理のコスト、さらにハードウェア・ソフトウェアのコストを考慮に入れると、システム全体の中で非常に大きな部分を占めているのが実状である。金融ビジネスの中枢を担うこの領域で、安全かつ効果的にコスト削減と移行を進めることが、ITモダナイゼーションを考える上で最も重要な問題の1つであるとともに最大の難所、いわば “最後の崖”であると言えるだろう。

ではこの最後の崖を乗り越えるために、金融機関が活用可能な選択肢にはどのようなものがあるのだろうか?本連載の第2回で触れたように、業務的な意味での価値が徐々に低下しつつあるレガシー領域で、莫大な投資を伴う既存システムの廃止と新たなシステムのリビルドを行うことは、組織全体のコンセンサス形成やビジネスケースという意味で非常に難しいのが現実である。またこれまで約30年メインフレームを構築維持してきた金融機関にとって、一歩間違えれば深刻な事態を招きかねないシステム移行という初めての経験に踏み切るのはリスク面でもハードルが高いだろう。こうした点を踏まえ、私たちがこれまで蓄積してきた知見・経験に基づいてお勧めするのはリライトとリホスト、特にリライトという選択肢である。

リライトによるモダナイゼーション

リライトというアプローチの中で今最も大きな注目を集めているのは、Javaへのリライトという選択肢である。実はこれまでハードウェア性能などの問題があり、オープン環境のマシンとJavaという言語がメインフレームのスピードに追いつけず、リライトを有効な選択肢として考えることは難しい状況だった。しかし過去10年間の技術的進化によって、現実的なソリューションになりつつある。COBOL、PL/I、アセンブラなど20以上の言語で開発された基幹系レガシーシステムをJavaで再構築し、新たにデジタルで構築した基盤の上にそのまま移行すれば、保守費用など高コスト構造からの脱却が可能になる、COBOL技術者不足・継承の問題が解消される、クラウドネイティブで統一できるなど様々なメリットを享受することができる。

ただし、Javaへのリライトというソリューションを検討するにあたっては、1点留意すべき重要なポイントがある。それは日本のシステム環境にあった変換ツールを活用することである。変換ツールやその活用ノウハウは、国内外で大きく変わらないと考えられているが、日本のメインフレーム上に実装されているレガシーのアプリケーション・プログラムは、活用実績が海外に限られるツールを利用すると移行スピードや正確性などの面で様々な問題が発生しがちである。その意味で、国内のシステム環境の構造である2バイトコードをしっかりと変換できるツールを適用することがきわめて重要となるだろう。アクセンチュアが、基幹系システム刷新支援強化の一環として、業務システム開発・移行支援のエキスパートである国内企業カルテック・エスキューブからの知的財産譲渡を受け、同社が持つレガシー向けソースコード変換ツールを活用しているのはそのためである[※]。

アクセンチュア消費者調査より

また弊社では、COBOLベースで新たな開発手法や最新の開発環境を整備し、保守開発からモダナイゼーションまでを高速に実現できるサポート体制作りも進めている。例えば中国大連の拠点では、COBOLを習得した20〜30代前半の若手技術者約100名が、国内保険会社の抱える同言語ベースのシステム・アプリケーション保守業務を担当。COBOLベースのアプリケーションを解読しながら業務を理解し、既存業務フローをそのままデジタル化。次世代システムとして設計可能な技術を積み上げ、DevOps環境を実現しながら、仕様・設計・実装・テストまでの流れを高速で進めるという取り組みを行っている。

またフィリピンには、オープン系COBOLのグローバルスタンダードであるMicrofocusに関する案件を受注する世界最大規模のアプリケーション・プログラム・デリバリー拠点を構え、数多くのレガシーマイグレーション・プロジェクトを手がけている。このメインフレーム領域のサービスと上記のリライト・ソリューションを最適な形で組み合わせることで、より効率的かつ安全確実にレガシーモダナイゼーションを実現できるはずである。

ITモダナイゼーションの目的と活用

全4回にわたってITモダナイゼーションの課題と成功の鍵について主に戦略的・技術的アプローチという側面から述べてきたが、第1回の冒頭で話した通り、多くの金融機関が今後直面する“崖”はどの程度の深さで、下に何が待っているのか、どうすれば避けることができるのか、などは間近に迫るまでわからない。こうした状況の中で金融機関が今実行すべきアクションの1つは、組織としてITモダナイゼーションを進める目的は何かという原点に立ち戻り、プランニングと課題解決の方法についてしっかりとした議論を行うことである。事業継続性の問題を解消したいのか、デジタルトランスフォーメーションを加速させたいのか、コスト削減を進めたいのか、あるいは開発生産性を高めたいのか、一口にモダナイゼーションと言っても、その力点は各金融機関によって大きく異なる。また置かれている環境や活用している技術、これまでの蓄積の中で生じている問題の性質もそれぞれ違う。まず大前提となる課題認識と目的が明確にならなければ、ここまで紹介してきた様々なソリューションを効果的に活用することは難しい。

“崖”がいつ目の前に姿を現すのか、それが2025年なのかは定かでないが、ただ1つだけ言えるのは、技術進化とディスラプションが日に日に加速する現在、そのタイミングが早まることはあっても遅くなることはないということだ。 その意味でもITモダナイゼーションに向けた取り組みを加速させることは、2020年の最重要課題の1つと言えるだろう。

             

アクセンチュア金融サービス本部では、より早く最新の動向や弊社のインサイトをご紹介するために、金融業界向けの「金融ウェビナー」を継続的に開催している。ウェブを使ったバーチャルな1時間のライブセッションで、パソコンやモバイルから簡単に参加でき、匿名で質問することも可能。詳しくはこちら

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【 寄稿 】
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マネジング・ディレクター

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【 寄稿 】
アクセンチュア株式会社
テクノロジーコンサルティング本部
マネジング・ディレクター

西尾 友善 氏

【 寄稿 】
アクセンチュア株式会社
テクノロジーコンサルティング本部
アソシエイト・ディレクター

中野 恭秀 氏

【 寄稿 】
アクセンチュア株式会社
テクノロジーコンサルティング本部
シニアアナリスト

川口 真貴子 氏

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