中国銀行~民間による継続的な起業支援で地域課題の解決やSDGsを実践


少子高齢化が進む地方経済は、新型コロナウイルスの感染拡大という猛烈な逆風を受けて疲弊に拍車がかかっている。今こそ、地域金融機関の知恵と行動力が求められているといえるだろう。民間による継続的な起業支援を通じた地域課題の解決に取り組む中国銀行のケースを紹介する。

  1. 地域の創業エコシステムを運営 OIPで5社、OTPで4社が起業
  2. 自行のビジネスマッチングや投資銀行業務などにも波及
目次

地域の創業エコシステムを運営 OIPで5社、OTPで4社が起業

中国銀行は、人口減少、企業減少による地方経済の縮小を食い止めるべく、地域の創業エコシステムとして「岡山イノベーションプロジェクト(OIP)」と「岡山テックプランター(OTP)」の両事業を手がけている。

OIPは、同行、山陽新聞社、サンマルク財団を中心に地元企業の協力を得て2017年から実施している。「地域課題を解決し、世界へ羽ばたく企業が継続的に生まれるエコシステムの構築を目的としている。起業家マインドを醸成し経営を学ぶスクールと優れたビジネスモデルを表彰するコンテストを主要事業として実施しており、スクールはこれまで約90名の卒業生を輩出。コンテスト参加者の大学生や大学の教授が起業したり、ベンチャーキャピタルからの資金調達を成功したりするなど着実な成果が出ている」(中国銀行 ソリューション営業部 調査役 秋山直輝氏)。

一方のOTPは、地域に眠る科学技術シーズを社会実装させることを目的に、2018年より科学技術分野の教育・人材育成・コンサルティングなどを手がけるリバネスと連携して実施している。秋山氏は「起業には、経営と技術の両面が必要だ。OIPでは経営を学べ、OTPでは技術を磨けることから、両事業を繋ぐことで2つの側面がカバーできる。OIPでは5社、OTPでは4社がそれぞれ起業した。また、OIP、OTPに参加した事業者に3件1億6,000万円のファンド出資を実施している」と語る。

自行のビジネスマッチングや投資銀行業務などにも波及

同行によると、類似事業は自治体でも実施しているが、予算制約などで規模、期間が限られ、継続的・横断的支援が課題だったという。「OIPおよびOTPは民間の力で継続的に実施することで、各自治体事業とも連携し、『面』での広がりを目指している」(秋山氏)。

両事業に対する同行の役割は、参加者間のコミュニティ形成支援、起業までのアドバイス、資金支援、地元企業と起業者を繋ぐパイプ役など多岐にわたる。地域の企業活動が活発化されることにより、資金面はもとよりビジネスマッチングや投資銀行業務など幅広い面で自行ビジネスに波及している。

秋山氏は、「地域の人口は減少している一方、未来を拓くシーズが多く眠っている。それらを掘り起こし、社会に実装していくことで地域の課題を解決する。新たなビジネスの創造やSDGs(持続可能な開発目標)の実践のために、当行が持つノウハウやネットワーク、地元自治体、他金融機関、他業態を巻き込んだ共創の場としてのプラットフォームを形成する。1年に1件程度はIPO(新規株式公開)する事業者を輩出して、将来は岡山を『創業のメッカ』と呼ばれるような存在にしたい」と意気込む。

秋山 直輝 氏
寄稿
中国銀行
ソリューション営業部
調査役
秋山 直輝 氏
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