【連載】金融機関にとってのサステナビリティへの対応


連載企画「金融機関のビジネスモデル変革」の第五弾では、サステナブルな社会を構築するために、金融機関が果たすべき役割や目指す姿、取り組むべき方向性につて解説する。

目次

SXに向けて金融機関がとるべき4つの観点

社会が変わろうとしているなか、その重要な役割を担う金融機関においては、金融機関自身の変化が必要である。金融機関が社会課題の解決を行いながら自社の収益を拡大していくためには、中長期的かつ俯瞰した視点でモノゴトを見ていくことが重要である。具体的に、経営戦略、ビジネス、データプラットフォーム、組織・人材の4つの観点から取り組む方向性を考えてみる。

戦略面では、自社の存在意義を考えるパーパス経営および将来からのバックキャストの観点が必要である旨を連載第一回「金融機関の経営戦略の考え方」にて寄稿した。経営計画の骨子とサステナビリティが分断されているなど、バズワードのみを取り込んだ状態となっていないだろうか。戦略を検討する際には、「なぜ自社が存在するのか」を問うパーパス型のミッションがESG対応も含めた形で設定されていることや、ESGを軸とした長期戦略がバックキャストで立案されていることを考えるべきであろう。

ビジネス面では、単なるESG商品の提供や、自社のみのネットゼロへの取り組み推進にとどまっていないであろうか。金融機関として、自社のみならず他社のネットゼロを推進するという役割に向けて、ESGを軸に事業変革に繋がるコンサルティングサービスを確立していること、自社がネットゼロを達成すること、顧客や地域がネットゼロになるような仕組みやビジネスを展開していること、などを考えていくべきであろう。
データプラットフォームという観点では、ビジネス判断を支えていくため、もしくは他社にインサイトを与えていくためにも、自社/顧客における財務・非財務情報を定性・定量の側面から集約し、ビジネスに使いこなせる状態を整えておくことも必要になってくる。中長期的にはデータを活用して変革を成し遂げていくために、目先のROIなどにて取り組みの是非を判断するだけでは期待値を超えられない。

最後に、組織・人材面である。新しいことを成し遂げるためには、変革を恐れずチャレンジする仕組みが整っており社員のエンゲージメントを高く保たれていることも必要なってくる。掛け声止まりや形式的、単発な施策などにとどまらず、中長期的に組織がサステナブルな社会に貢献していくことを常に組織内に発信・共有されることで企業のカルチャー醸成がなされていくことだろう。

最後に、デロイトでは、4つの観点を分解した形で金融機関がSXにおいて目指すべき8つの目標についても併せて定義しているので、もし良かったらチェックリストとしてご参考にして頂ければと思う。

寄稿
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
銀行・証券ユニット
ディレクター
大内 圭介 氏
外資系コンサルティング会社を経て現職。金融機関向けに、ビジネス変革に向けた構想策定から実行支援まで手掛ける。経営管理や営業変革などのビジネス変革、データやAI、API、クラウドなどのシステム変革などを支援。
寄稿
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
銀行・証券ユニット/モニター デロイト
ディレクター
梅津 翔太 氏
外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。金融業界を中心に、中期・長期経営計画策定、DX戦略策定・実行、新規事業立案、営業戦略立案、デジタル業務改革など、幅広いテーマのプロジェクトに従事。「デジタル起点の金融経営変革」(中央経済社)執筆
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