dX推進のポイント

dXに係る取組の多くは不確実性を内包したものとなるため、dXの進め方として「Think big(大局で考える)」、「Start small(小さく始める)」、「Scale fast(一気に広げる)」という3ステップに分けて進めることを提唱する。すなわち、あるべき姿を具体的に描くところからスタートし(Think big)、その実現に向けた各種施策の中で比較的取組みやすく、実現可能性の高い単位でプロジェクト化し(Start small)、プロジェクトを通じての軌道修正や成功体験を糧に、迅速に全社展開させ成果を刈り取る(Scale fast)という考え方である。

全社的にdXを推進し定着化させるためにはそれをドライブする社内の人材を発掘・育成することが重要だが、dX人材は決定的に不足しているのが現状である。そこで、ポイントとなるのは、「内製化するdX人材の範囲を定義すること」、「内製化するdX人材を外部パートナーを活用して早期育成すること」の2つである。

ビジネスプランナー、アーキテクト、プログラムマネジャー、デジタルマーケティングスペシャリスト等、ビジネス変革をする際のコアとなる人材については内製化を目指し、その他の人材については外部リソースを活用して量を充足していくというのが基本的な方針となるであろう。

また、内製化する人材についても、直ぐに既存の人材だけでは対応できないので、外部パートナーを活用した伴走型OJTでの人材育成が現実解である。中途採用では調達できる規模感が不十分であり、IT企業をM&Aする場合は時間軸が読めず実現性が不明確であるからである。

デロイトのdX関連の様々なプロジェクトの経験を踏まえた、dX推進の際の、陥りがちな罠と推進のポイントを紹介させて頂ければと思う。dX推進は全社改革をすることと同義であり、志のある一部の社員が推進すれば実現できるものではなく、全社の取組とするうねりを作ることが非常に重要になる。

  1. 道しるべ(dX戦略)を具体的に描く
  2. トップマネジメントが実行にコミットする
  3. 一歩目となる取組は必ず成功させる
  4. 実行権限・予算をdX所管部署に委譲する
  5. 事業部門に主体性を持たせる
  6. 組織の能力を獲得・強化する
  7. 失敗を認めるカルチャーを作る

最後に、dX推進に際して、想定した効果が創出できているか測定・管理することも重要である。その際には、適切にKGI(Key Goal Indicator)やKPI(Key Performance Indicator)を設定する必要がある。例えば、dXの取組全体を評価する指標がKGIで、dX推進に係る各施策のゴールや進捗をKPIとすることが多い。KGIについては、企業の経済活動全体では一般的に財務視点の指標(収益増、コスト削減等)を設定することが多いが、ことdXにおいては財務視点の指標に加えて顧客視点の指標(NPS、アプリのダウンロード数・アクティブユーザー数等)併せて定めることが重要である。なぜなら、dXは顧客起点の発想を持ってビジネスモデルを変革していくものであるからである。

Future of Finance|ストラテジー|デロイト トーマツ グループ|Deloitte
寄稿
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
銀行・証券ユニット/モニター デロイト
ディレクター
梅津 翔太 氏
外資系戦略コンサルティング会社を経て現職金融業界を中心に、中期・長期経営計画策定、DX戦略策定・実行、新規事業立案、営業戦略立案、デジタル業務改革など、幅広いテーマのプロジェクトに従事。「デジタル起点の金融経営変革」(中央経済社)執筆
寄稿
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
銀行・証券ユニット/モニター デロイト
マネジャー
中島 亮 氏
シンクタンクにて事業企画/事業開発等を経て現職。入社後、金融インダストリーにて、金融機関における中長期戦略策定支援、非金融事業者における金融事業参入に向けた事業構想策定支援に従事。
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