2021年7月8日(木)開催FINANCE FORUM「マーケットインへ発想転換を支えるマネジメントとデータ活用」


2021年7月8日、セミナーインフォ主催FINANCE FORUMにて株式会社ブレインパッド 関口氏にご登壇をいただき「マーケットインへ発想転換を支えるマネジメントとデータ活用」についてご講演いただいた。

目次

マーケットインへ発想転換を支えるマネジメントとデータ活用

関口 朋宏

【講演者】
株式会社ブレインパッド
取締役 ビジネス統括本部長
関口 朋宏 氏

<当社のご紹介>

当社は2004年に創業した、データ活用・分析サービス専門企業だ。「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」を企業ミッションとしている。事業は、データ分析、システム・インテグレーション、データ活用人材の育成をはじめとするプロフェッショナルサービス事業と、マーケティング・プロダクトの開発・提供、運用支援をおこなうプロダクト事業の2つだ。日々莫大なデータを運用・分析し、知見を培っている。

<日本におけるDXの変化>

経済産業省が2021年に発表した「DXレポート2(中間報告)」によると、DXの本質は「変革できる組織・カルチャーづくり」であると明確に謳われている。また企業・業界を超えたデータ連携の重要性も指摘された。

DX先駆者とも呼べる企業の方々と交流すると、いくつかの共通項が見られる。まずDXという言葉を使っておらず、顧客や生活者に新しい価値を提供することが大事であると考えている。DXという言葉を使い始めてしまうと、デジタルの技術を使うことが目的化されることが一番恐ろしいという声も上がっている。デジタルという言葉を使う前に、顧客に新しい価値・ブランドイメージを含めた体験を作っていく取り組みだということを前面に出し、ビジネスの変革を進めている。

次に、データはお客様やマーケットの写像であると考えており、会えていない・見えないお客様を知る術と捉えていることだ。このようなデータを活用したビジネス変革を進めるためにマーケットイン型の組織カルチャーへの転換、変化の早いマーケットに対応できるスピード感が必要となってきている。

<金融業界における顧客接点の課題>

お客様にとって金融業界のチャネルは複雑で、チャネルごとに担当組織が別れ、データもサイロ化している。コンセプトも横串で通っておらず、ちぐはぐな印象を受けることもある。しかしながらこれは企業側の都合でしかなく、顧客視点ではあまり良い印象を持たれない。

また金融機関の方と顧客接点の話になると、店舗や営業が必要・不要の二択の議論になりがちだが、二択ではなくどう棲み分けるかが重要だ。

そのほかにも、オンライン上での接点を増やすためのアプリの作成、チャットボットの活用などを相談されることも多いが、目的が明確になっていない企業様も多く、とりあえず顧客接点の量を増やしたいというご相談が多くあるのが現状だ。

既に多くの金融機関がデジタルマーケティングの世界へ足を踏み入れ、データをかき集めて、ターゲティングをし、様々なチャネルでコミュニケーションを行っている。しかしながら、最近では効果が出ないことなども相まって、顧客接点の話の中でツールに関する話が多く、「配信ツール依存症」に陥るケースが見られる。過去のGoogle調査でも、金融業界にとってデジタルチャネルは万能ではないと研究もあり、保険商品の例では、購買に影響を与えたものとして営業との会話が重要とのデータがある。これらから顧客接点とは信頼(=ブランド)を生み出す体験づくりと考え、見えない・会えないお客様の悩みや不満をデータで紐解くことが重要である。信頼関係が構築できれば、キャンペーン告知の効果も上がり、自然と収益につながる。お客様の声を知るために市場調査データを活用される場合もあるが、それでは本当の顧客の声はわからない。目の前の顧客の声を徹底的に分析する事が重要だ。

<オンラインとリアルのチャネルの使い方>

オンラインチャネルは、意外にもお客様とチャネルを運用する社員に負担を強いるチャネルである。基本的には「好きなものを選んでください」というコミュニケーションであるため、好きなものを選べないお客様には負担でしかない。また企業側もオンライン接客を行う際は、リアルチャネルを補うコンテンツを出し続けないとオンラインチャネルのメリットが伝わりにくい。一方、リアルチャネルは街中での視覚効果は高くブランド認知を高める効果が大きい。したがって、店舗単体での収支にばかり目を向けず、ブランド認知の広告効果を加味してチャネル効果を吟味する必要がある。また、店舗には自分では選べないものを選べる体験やおもてなしができるため、リアルチャネルはお客様に使い倒してもらってこそ価値が出るという前提でその要否を検討すべきである。

<金融業界の外で起きていること>

金融業界に限らず、消費者・顧客が強い時代となっている。新しい価値を届けるためにはマーケティングのみならず、「裏側も磨く」ことが必要だ。「デマンドチェーン・マネジメント」という、お客様のデータを活用して裏側の業務を最適化する取り組みが増えてきている。例えば、化粧品会社のオルビスでは、ロボットによるピッキング業務を実現しているが、その方式には顧客の購買履歴を分析した結果を用いている。

<プロダクトアウト発想とマーケットイン発想>

データ分析の観点では、プロダクトアウト発想とマーケットイン発想では、分析手法が変わる。プロダクトアウト発想のデータ分析は自社の商品やサービスが主語であり、「売りたいものが売れる顧客」を予測モデルにより特定し、営業のアクションにつなげる。それに対してマーケットイン発想のデータ分析ではお客様が主語であり、自社のサービスによりお客様がより良い状態に変化するために、その変化量を最大化するために効果的な商品や体験の組み合わせを当て込むべきかをAIで洗い出す。

また、マーケットインの発想に転換するためにはマネジメントの変革も必要で、これまでのプロセス重視のKPIから顧客の行動変容を基軸にしたKPIに再設計する必要がある。

<お客様ニーズを読み解くためのデータ活用人材づくり>

昨今、データ・ドリブンな組織づくり、データ分析組織の立ち上げ・人材育成支援の依頼が増加しており、当社のデータ活用人材育成サービスの受講者は累計5万人を超えた。データ活用人材に必要なスキル領域はビジネス力、データサイエンス力、データエンジニアリング力の3つあり、社内に内製すべきはビジネス課題をデータから紐解く力を備えた人材だ。当社は三菱UFJ銀行様と共にデータ分析力を身に付けるためのe-learningを企画・制作し、全行員向けの人材育成に取り組んでいる。

<分析技術を用いて企業のサポートする際の4つのパターン>

1つめは、お客様の要望に応じて受託する「分析受託・アルゴリズム開発」型、2つめは、クライアントと当社でテーマごとに対応する「協動」型、3つめは、当社メンバーは指南役としてチームに参画する「分析組織立ち上げ・伴走型」である。最近では金融機関の方から、統合データ基盤を構築・刷新したいという要望を頂くが、そもそもデータ基盤を使用するユーザーがいない状態では要件が決まらないため、難航することが多い。まずはユーザーである分析人材の育成を経て本格的な活用基盤を作るという4つめの「分析ツール/環境導入支援」型のサポートも増えてきている。

講演企業情報
株式会社ブレインパッド:https://www.brainpad.co.jp/

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