- 「auじぶん銀行におけるDXの動きについて」
auじぶん銀行株式会社 都木 良和 氏 - 「金融DXにおける社内DXの重要性と効果~真のDX実現に向けて~」
ServiceNow Japan合同会社 水野 拓郎 氏 - 「データ活用で金融機関を変える!キーエンス流データ活用術」
株式会社キーエンス 鈴木 辰弥 氏 - 「成功事例から学ぶ!金融機関のデータ活用最前線!」
株式会社ランドスケイプ 鈴木 彩乃 氏 - 「業務プロセスを変革するコンテンツハブとは?」
株式会社 Box Japan 浅見 顕祐 氏 - 「三井住友海上のDG戦略(デジタルグローバリゼーション戦略)
~グローバルベースで取組むDXについて~」
三井住友海上火災保険株式会社 笹森 愛美 氏/池田 久美子 氏 - 【ご紹介動画】ServiceNow Japan合同会社
- 【ご紹介動画】SAS Institute Japan株式会社
「auじぶん銀行におけるDXの動きについて」
- 基調講演➀
【講演者】
- auじぶん銀行株式会社
執行役員 CDTO IT戦略統括本部 副統括本部長
兼 DX本部長
兼 DX企画推進部長
都木 良和 氏<auじぶん銀行とは>
2008年6月にKDDIと三菱UFJ銀行の共同出資により設立されたオンライン銀行であり、預金からローンまでフルバンキングサービスを提供し、全てのお取引がスマートフォンから利用可能となっている。口座数は448万口座、預金残高はおよそ2兆円、貸出残高は1.67兆円になっており、スマホ経由での利用は8割以上となっている。
<auじぶん銀行のDX前夜>
2021年5月まで勘定系更改の案件が行われており、システム部門、そして業務部門を問わず行内リソースをこの1つの案件に集中させていた。その間に、世の中には「DX」という単語が広まっており、われわれが行っているデジタルへの取り組みでは足りず、プラスαで何かを行う必要があり、当行はDXの成功者ではなく、DXの挑戦者であると考えている。
2008年から2011年頃は創業期であり、ガラケーが主体、そして銀行の基本サービスを拡充していた年月である。2012年以降の地固め期では、主戦場がガラケーからスマホに替わり、より新しい、スマホで表現できるプラスαのサービス拡張に取り組んでいる。
2016年は、大きなビジネスモデルの変革期であった。スマホ上で銀行のサービスを提供するだけでなく、お客さまの取引や閲覧データをもとに、アプリ上でオファーを出し、そのお客さまに最適なサービスを銀行側から提供するデータを活用した、お客さまとのコミュニケーションを図るサービスにシフトした。また、これらのデータをより視認性を良くするために技術を利用してグラフィカルで分かりやすいUIでサービスを提供している。一方、その裏側では、勘定系の更改の案件が始まっており、開発に対してリソースを投入することができない状況であった。
2021年を迎え、勘定系更改が終わり、外部環境を見てみると、さまざまなツールがあり、また昔の制約事項が取り払われている状況であった。多くの銀行はクラウドに進出し、さまざまなFinTech企業とAPIをつないで新たなサービスを提供する時代に変化していた。その頃、われわれは他行並みのサービス拡充を優先し、金融機関のクラウド活用期が到来する前に計画したシステムも多く、多数のサブシステムが併存し、各システム間でのデータ活用に課題があった。また、行内向けの機能は、お客さま向けのサービスを拡充するため、開発を省略し、手運用に頼んでしまったため、結果、業務部門ではさまざまなプログラムを作るが、人が入れ替わることによってメンテナンスができない野良VBAが増えるなど、大きな問題点があった。その反省点から固めのRPA導入方針となったため、多くの業務部門でのRPAの導入障壁がさらなる課題なった。
銀行のシステムといえば安心・安全、お客さまからも信頼していただくためにも完璧な状態でシステムを提供するという昔ながらの考え方に乗っ取り、当行はサービスを構築しており、安心・安全を前提に行うため、何かを行うにも時間とコストがかかり、利便性、改善を求められたことに対し、応えることができずにいた。
また、山積みの経営課題をスピードもって解決するためには、従来と同じようなやり方では難しく、異なるカルチャーの創出が必要であり、切迫感が膨らむ中、組織や会社の変革に大きく舵を切り始めた次第だ。
<auじぶん銀行のDXの取組について>
勘定系更改が終わった2カ月後の2021年7月に経営から各種課題をDXにて解決していくという、強い意思が発せられ、アジャイル開発推進室やDX企画推進部等、それぞれの組織が設立された。特に、アジャイル開発推進室はシステム部門の下に設立されず、業務部門の下に設立された。業務側で求められている強い変化への要望をすぐに取り込んで、すぐに実現するためには、既存のシステム本部の中では成し得ることが難しいという考えのもとでの決断である。DX戦略の策定が急がれるところではあるが、策定完了まで時間を要することもあり、草の根運動的に各部においてDXに関わる動きが開始している。
草の根運動が動いている中で並行して戦略について検討を進めており、DXの実現に必要な要素として、「戦略」「組織・プロセス」「人材」「環境」の4つが重要であると考えている。現状、DX 成熟度診断などを通じて、デジタル戦略立案、組織機能・人材、ソーシング方針、プロセス、テクノロジーなどの一連の枠組みのデザインとロードマップ化を実施している。
また、DX指標の診断を通じて、「戦略」「DX推進」「組織・プロセス」「人材」「環境」の中から、それぞれの課題を洗い出し、個別具体なテーマとして落とし込み、優先順位付けして対応していくための自己評価を行っている。
次に、データやデジタル技術を最大限活用し、既存ビジネスモデル・プロセスの最適化を進めるとともに、「新たなビジネスの創造」へ挑戦できる組織を構築し、「顧客接点」「業務プロセス」の変革を目指す。今後の具体的なDX施策については、関係各所と協議し、ロードマップを作成している。
経営戦略、事業戦略、組織戦略の観点から、継続的にアップデートしていくために何をすべきか、さらに顧客視点に立ち、より良い体験を継続的に提供していくために何をすべきかを分解し、その上で、現状の延長線上に目指すべきゴールがない場合、行内のカルチャーの変革が強く必要となる。また「カルチャーの変革」の土台には、共通認識が必要であり、当行ではそれを「フィロソフィ」が担っており、フィロソフィでレバレッジをきかせ変革に挑む次第だ。
このようにDXは、自社に置き換えた場合、銀の弾丸になるようなものはなく、トップダウンによらず、ボトムアップに依存せず、愚直にDXの戦略を立て、そして周りとのギャップをすりあわせ、ゴールを明確化する必要がある。また、そのゴールを明確した後、足りない部分のギャップ分析を行い、課題を受け入れ、その先に進むためにどういう対応が必要かを理解し、一つ一つ進めていくことが肝要ではないかと考えている。
- auじぶん銀行株式会社