2022年9月8日(木)開催 MANAGEMENT WEBINAR「デジタル化による経理・財務部門の最適化」<アフターレポート>


2022年9月8日(木)セミナーインフォ主催MANAGEMENT WEBINAR「デジタル化による経理・財務部門の最適化」が開催された。昨今の市場変化により、経理・財務部門に求められる役割が増えるとともに、コロナ禍で、経理・財務部門のデジタル化が加速度的に進み、業務が高度化している。デジタルツールを活用していくことにより、経理・財務部門の課題を解決するとともに、タイムリーな経営状況の可視化、財務面での提案、強固なガバナンスなど様々な観点から、経営を支援していく事が求められている。本ウェビナーでは株式会社日立物流とウェンディーズ・ジャパン株式会社/ファーストキッチン株式会社に最新事例をご紹介いただいた、各先進企業よりデジタルを駆使した最新の取り組みをご紹介いただいた。

  1. 「基幹システムの刷新による企業の持続的成長力・企業価値創出力の強化」
    株式会社日立物流 本田 仁志 氏
  2. 「企業成長の実現を支える効果的な財務戦略」
    キリバ・ジャパン株式会社 下村 真輝 氏
  3. 「経営管理高度化のトレンドとそれを支えるシステム要件」
    Tagetik Japan株式会社 佐々木 敏夫 氏
  4. 「領収書・請求書のペーパーレスから始める経理・経営部門の最適化
    ~改正電帳法をうまく活用する秘訣とは~
    株式会社コンカー 石原 謙吾 氏
  5. 「多様化するビジネスのリアルタイム収益認識・売上予測実現への解決策」
    Zuora Japan株式会社 谷内 輝男 氏
  6. 「M&A後の企業価値向上のためのファイナンス部門の機能刷新・DX」
    ウェンディーズ・ジャパン株式会社/ファーストキッチン株式会社 尾形 圭一 氏
  7. 【ご紹介動画】株式会社電通国際情報サービス
  8. 【ご紹介動画】株式会社マネーフォワード
目次

「基幹システムの刷新による企業の持続的成長力・企業価値創出力の強化」

本田 仁志 氏
基調講演
【講演者】
株式会社日立物流
執行役 財務戦略本部長 
本田 仁志 氏

<はじめに>

現在、日立物流は、ガバナンス強化、標準化と省力化、データ利活用といったことを目的に、ERP、DXエンジン、BIツールなどから構成される新たな基幹システムを導入し、デジタル化を加速させようとしている。企業の持続的成長、企業価値の創出には、投下資本のリターンを最大化し、経営をガラス張りにして不正を防止していくことが重要だ。今回新しく弊社が行った基幹システムの導入は、これらの動きを強化するためのものである。

今回は、当社が新しく導入したシステムの概要をお話しするとともに、持続的な企業価値創出への貢献、デジタル化において経理・財務人材に求められるスキル、企業・組織のあり方について考察できればと考えている。

<会社紹介>

日立物流は、3PL領域で日本No.1のシェアを獲得している物流会社であり、現在グローバルに事業を展開している。お客様の物流業務全般の受託、さらにデジタルを活用したソリューション提供を通じて、総合的な物流サービスを提供している。ブランドコンセプトは、LOGISTEEDである。これはLOGISTICSと、Exceed、Proceed、Succeed、Speedを合わせた造語で、物流を超えて新しいビジネス領域に挑戦していこうという意思が込められている。

現在、弊社が注力しているのは、金流、物流、商流、情流の4流を束ね、サプライチェーンをデザインすることだ。物の動くところはお金も動き、情報も動く。物流という弊社ならではの立ち位置を生かし、この4流を束ねて、サプライチェーン上の課題を解決していきたいと考えている。これらの試みを通して、グローバルサプライチェーンにおいてもっとも選ばれるソリューションプロバイダを目指していきたい。

<DX戦略の基本方針>

弊社のDX戦略の基本方針は大きく2つである。1つはサイバーとフィジカルの共創だ。これはフィジカル、すなわち現場の知恵をデータとして集めて見える化するものだ。フィジカルから得られたデータの分析をもとに、さらに現場改善を行っていく。このサイクルを作っていきたいと考えている。もう1つは、これら現場の知恵から得られたデータを活用し、外部パートナーと協働していくことだ。現在オープンイノベーションや新しいビジネスモデルの創出を積極的に行っているところである。具体的なDX推進施策としては、セキュアなデジタル環境の整備や基幹システム刷新といった社内向けのDX施策、お客様の課題解決を主眼とした社外向けDX施策を両輪で推進していく方針を固めている。

<大規模基幹システム>

DX施策のうち、弊社が現在取り組んでいるのが大規模基幹システムの導入である。開発の直接的なきっかけとなったのは、2025年の崖である。しかし、せっかくシステムを作るのであれば、ガバナンスや法令の問題、監査の問題など現状抱えている課題を解決できるようなシステムを作りたいと考え、現在の大規模基幹システムの構想ができあがった。

我々が大規模基幹システムを導入する一番の目的は、企業価値の向上である。そのためシステム設計の際には、企業価値の最大化という視点からコンセプトを固めた。企業価値向上を目的としてシステムを導入するからには、ROIC、フリーキャッシュフローといった企業価値を上げるための要素に資するものを作らなければならない。さらに、長期的な企業価値の創出という意味では、人材に代表される非財務指標も重要になる。これらの企業価値の創出に欠かせない要素を見える化し、改善の過程・成果を追っていけるようなシステムを作る必要があった。

管理系のシステムを基盤として、ガバナンス、標準化、省略化、データの利活用をはかり、攻めの要素と守りの要素両方を兼ね備えた攻めのデータドリブン経営を実践し、企業価値を向上させていく。これが新しいシステムのコンセプトである。攻めの要素は、データ利活用によって売り上げを拡大していくことを意味する。一方、守りの要素は出て行くお金の最小化であり、標準化・省力化、デジタル監査に代表されるガバナンスの実現だ。これらの要素を実現するため、我々は基幹システムを新ERPを中心としたシステムに集約・統合し、基幹業務の効率向上、ガバナンス強化、さらにデータ活用による業務の可視化・開発、脱Excel、ペーパーレス化といった取り組みを進めている。

<経理・財務部門の人財育成>

弊社では基幹システム導入に伴い、経理・財務人財の教育体系の見直しをも行っている。デジタル化が加速する中で経理・財務部門に求められるのは、統制システムをデザインし、意思決定に関与できる人材だ。そのためにも、今後の企業会計人はAccounting、Treasury、TAX、FP&Aといった専門スキルに加え、誠実さや説明責任といった企業統制・意思決定に必要なスキルを身につけていかなければならない。また、今の時代はデジタル活用が避けて通れない時代になっているため、企業会計人はデジタル活用に関する教育も必要だ。現在、弊社も外部の講座なども活用しながら、デジタル人材の育成を進めているところである。

<企業の持続的成長・企業価値の創出>

企業の持続的成長、企業価値の創出を実現するためには、キャッシュフローを最大化する必要がある。そのためにも経営者マインドの醸成、キャッシュ志向の仕組み化によって投下資金の最大化を行いつつ、ガラス張りの経営によって不正を防止することが重要だ。

まず、何よりも社員に当事者意識を持たせること、すなわち経営者マインドの醸成が大切だ。弊社でもVC21活動を通し、社員の経営者マインド醸成に努めている。次に、キャッシュ志向の仕組み化である。「企業価値の向上」という文脈では、キャッシュフロー、バランスシートといった話がしばしば出てくる。投下資金の最大化、ROIC経営を実現するためには、そういったキャッシュ志向の考え方を仕組みとして落とし込んでいかなければならない。さらに、不正防止という点からは、経営をガラス張りにすることが重要だ。弊社ではデジタル監査の整備を通じてガラス張りの経営実現のための取り組みを続けている。

<大規模基幹システムの先にあるもの>

ここまで弊社の大規模基幹システム導入の取り組みについて紹介してきた。ここで大規模基幹システムを導入した先にある世界について、私見を申し上げたい。新しいシステムの導入によってデータ統合が進むと、何が起きるのか。個人的には、それは組織のフラット化であると考えている。従来のヒエラルキー型の組織からネットワーク型の組織に変わり、またネットワークが企業の垣根を越えて広がり、仕事の仕方そのものも変わっていく。このような状況では、発信力、巻き込み力といった個々の人材の力が企業価値に直結するものと思われる。DXによって働き方が変わることで、これまで以上に各社員の人材価値が問われる時代が訪れるのではないか。

<まとめ>

弊社では大規模基幹システム導入をきっかけに、ガバナンス強化、標準化・省力化、データ利活用を通じて企業価値を上げていく試みを続けている。持続的企業価値の創出においては、経営者マインド、キャッシュ思考、ガラス張りの経営、さらに時代に合った人材育成も求められる。

デジタル化の進展の先に待っているのは、組織自体がネットワーク型になる時代だ。こうした時代には、これまで以上に人材価値が非常に大きくなる。だからこそ、持続的成長を実現するためには、これからの時代に求められるデジタル、デザイン、デシジョンの要素を備えた人材の育成を進めていかなければならない。

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