「DXプロジェクトにおけるデータ連携ノウハウ」

石田 誠司 氏
【講演者】
株式会社セゾン情報システムズ
上席執行役員 DIビジネス統括
石田 誠司 氏

当社とHULFTについて

当社は1970年設立と創立52年目のIT企業としては老舗であり、ファイル転送の「HULFT」を含め約20の製品を有している。HULFTの導入実績はグローバルで1万社を超え、22万5,600本の出荷実績がある。全国銀行協会の会員企業、日本自動車工業会の会員企業において、いずれも導入率が100%に達している。グローバルのファイル転送分野における売上シェアは世界第4位であり、世界で戦えるメイドインジャパンの製品と自負している。北米・東南アジアなど世界44カ国でHULFTは使われている。

DXプロジェクトにおけるデータ連携

DX推進における一般な課題は、デジタル人材の育成、データの可視化、形式やフォーマットの統一であり、多くの年月がかかる。まずデジタル人材については「アナログ的に考えられる人」が必要と考える。気づきやインサイトは、データから逆引きで導き出す必要があり、すべてデジタルで考える人材では難しい。我々にとってデジタルデータの定義とは、システムが連携して機能することだ。電子化ができたからといってDXができたことにはならない。お客様や住民に対し、いかにオンデマンドで迅速にサービスを提供できるかがDXの成果だ。

金融業界ではキャッシュレス化がトレンドの1つだが、DXが進んだからキャッシュレス決済が生まれたのではないのかもしれない。非金融業界の企業の努力によってキャッシュレス決済が広まり、本業の金融の方が追いつこうとしているのが現状ではないか。キャンペーンを展開したサービスに利用が集中するが、果たしてそれでインサイトが見つかるかは疑問で、ここがデータ利活用の肝ではないかと考える。

DXプロジェクトの一般的なプロセスは、データの探索、特定、制御、収集・連携、確認、公開であり、場合によっては何年もかかる可能性がある。

データの探索・特定

当社の「HULFT DataCatalog」でデータのありかを明確にすることができる。たとえばデータ利活用者が「社員」で検索した場合、アセット名(テーブル名)などの候補が表示される。アセット名をクリックすれば、説明項目の確認が可能だ。

データの制御

たとえば社員マスタなどにある社員情報は、あらゆる分析で必要になるので公開したい。その一方で住所・基本給といったセンシティブな個人情報を守り、見せる範囲を限定することが重要だ。具体的にはマスキングとロール設計でコントロールすることになる。

ロールベースアクセスコントロール(RBAC)により、全社員に必ず1つ以上のロールをアサインし、ロールによって見せる領域・見せない領域をコントロールすることが可能だ。たとえば人事ロールのアクセスであればセンシティブ情報を見せるが、経理やSEといった一般ロールのアクセスではマスキングをかける。ツールを介してもDWHにアクセスするロールは個人と紐づけており、当社独自のこだわりポイントだ。アクセス者の権限に応じて、項目(列単位)でリアルタイムにマスキングして表示することもできる。

データの確認

データベースの更新状況・利用状況を可視化することで、データの「鮮度」と「確からしさ」を担保する。

データの収集・連携

準備が完了してデータ結合を行う際に、データの種別を統合しなくてはならない。Excel、テキストデータ、画像データなどを突合していくことになるが、ノンプログラミングで可能だ。フローチャートを作成する要領で、線をつなぐ方式で行えるので、システムの知識がない方でも操作できる。

データの公開

データの公開では、利便性とセキュリティを両立するため、開発テンプレートと開発標準を整備。ルールに従い開発いただくことで安全な利用をサポートする。データ公開後の社内教育に関しては、ツールの仕組みや活用方法等を3ヵ月ぐらいかけて研修を行い、経営企画室など情報システム以外の部署でのデータ利活用が始まる。

当社の事例 データドリブン経営のための基盤構築

オンプレミス運用は出来て当たり前とみなされ、自動化・データ利活用などを上層部から求められ、他部署からの突き上げも増えてきた。近年トレンドとなっているクラウド化も行うべきではあるものの、情報システム部門の管理外の領域で使われる「野良クラウド」が問題だ。一方で見えてきたものが「内製化」で、人材不足・グローバル化などが課題だ。これらを解決すべく、維持スキルと体力を必要とするオンプレミス環境をサービス利用に転換した。社内システムのクラウドシフトを進めており、クラウド化率100%を目標としている。2022年3月末時点では90%で、今年いっぱいで100%に到達する予定だ。40種類のSaaSやクラウドのソリューションを用いて、システムやデータのハンドリング・整備を行っている。

一方で経営側では事業構造変革として、データから様々なことを紐解く「データドリブン」の体制が必要と認識していた。日本の金融機関でも今後は金融以外の業界との協業が重要となってくるが、その際に必要なのがデータドリブンプラットフォームだ。金融以外も含めたあらゆる種類のデータを連携基盤上に集積し、社員が自由にデータを活用できる環境を指す。日々の業務の中で生まれたひらめきや仮説を確認・検証できる仕組みを作ることで、現場主体の気づき・改革へと繋がる。データドリブンプラットフォームがあると、担当者がデータを情報システムに依頼することなく、自分でデータを見ながら仮説検証をする習慣が付き、改善策を思いつくスピードもアップする。

経営課題から社会課題に

企業の成長と切り離せないのがSDGsやESGであり、企業にも持続可能な社会とするための課題解決への取り組みが求められている。しかし時代の変化のスピードが格段に上がり、課題が企業・業界・国をまたがるため、1人・1社では社会課題を解決できない。従来とは異なるビジネスの流れであり、データもまたいで見る必要があり、世界的に人材が不足している。

当社の使命は、必要な時に即時に、必要な相手・データとグローバルに繋がり、企業や業界をまたいで複合的に取り扱える世界(広場)を提供することだ。あらゆるデータをまたいで繋げられる「データコングロマリットプラットフォーム」である。セキュアなデータ連携基盤として、オンプレミスからクラウド、グローバルまでワンストップで対応可能だ。社内外のシステムを容易に連携し、データを統合管理することで、業務効率化とデータ利活用を実現する。

ユースケース例を紹介すると、企業間・業種をまたぐデータ連携による社会課題解決の「温室効果ガス排出量可視化ソリューション」がある。原材料供給企業、商社、メーカー、物流企業、小売業、廃棄事業者をHULFT Squareで繋げる。各企業は温室効果ガス排出量関連データの提供と必要データの取得が可能だ。また河川の氾濫情報等の共有にも利用することができ、複数の自治体が持つ同じ河川に関するデータを収集・変換し、情報共有や避難誘導に活用する。

DXプラットフォーム実現に向けて

DXのロードマップの最初がコンセプトデザイン決定のフェーズだ。我々はデータインテグレーターのプロとして、着手すべき点をピンポイントでご提案できる。コンセプトデザインを通じて、開発対象の最小化による開発期間の短縮(6ヵ月から4ヵ月)、開発コストの30%縮小、クラウド資源の再配置によるクラウド利用料の10%縮小、60%の内製化の実現といった価値をご提供する。

◆講演企業情報
株式会社セゾン情報システムズ:https://home.saison.co.jp/products/financial/