「金融業界に今求められるバックオフィスの文書業務デジタル化」
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【講演者】
- アドビ株式会社
プロダクトスペシャリスト
岩松 健史 氏<日本の金融機関におけるデジタル化>
日本政府はさまざまなデジタル化施策を講じており、直近ではデジタル庁が創設され、マイナンバーカードの普及率も高まっている。しかし日本のデジタル化は欧米より遅れているが現状だ。当社のグローバル調査によると、テレワークのほうがオフィス勤務より仕事がはかどると回答した人は、日本は42.8%、アメリカは75%、イギリスは71.9%であり、他国より極端に低い。日本はまだ紙と印鑑を使った業務が多く、電子サインの導入状況もまだ低い。 紙と印鑑を使う業務は、行政機関と金融機関で特に多いと聞く。金融機関もデジタル化は進んできたが、システムが巨大になり柔軟に対応することが難しくなっている。またグローバルで見ると他業種からの金融業への参入が相次ぎ、既存の金融機関にとっては脅威だ。デジタル化による差別化や顧客の利便性の向上が今後求められる。
<金融機関におけるデジタルトランスフォーメーション>
金融機関のデジタル化には2つの方向があり、まず既存業務のデジタル化によってデジタル基盤やデジタイゼーションを推進する。そのうえでデジタル化による新たな価値の創造としてデジタルトランスフォーメーションやデジタルイノベーションを推進する。
顧客接点に関しては今まで支店集約型であったが、これからは顧客体験のデジタル化が必要だ。リテールはコールセンターとダイレクトバンキングへ接点を集約する。法人は顧客ごとにパーソナライズされたポータルによるコミュニケーションを推進する。渉外活動についても、これまでは訪問による対面商談が中心であったが、コロナ禍以降はオンラインでの商談が増えている。オンライン商談は、顧客コミュニケーションの効率化、契約事務作業の効率化、商談Closeまでの期間短縮などのメリットがある。
<紙を使った業務のデジタル化における課題>
一般的に社外とやり取りをするドキュメントはPDFが使われることが多いが、PDFにしたからといって読み取り専用になるわけではなく、改ざんされるリスクがある。デジタル化においてPDFドキュメントに対するセキュリティ対策が必要だ。
<Adobeにおけるドキュメント業務のデジタル化>
アドビは1982年に設立され、1993年にPDFを開発した。PDFは紙の良さを生かしてデジタル化をするために生み出された技術で、何年たっても文字が劣化しない。PC環境が変わっても継続して参照できる。2015年には電子契約のサービスをリリースした。
<Adobe Acrobat Signとは>
アドビがグローバルに提供するデジタルドキュメントソリューションで、36ヵ国語に対応している。日本のお客さま向けには国内のデータセンターを設置してサービス提供をしているため、データセンターにデータを残すことができる。IDC MarketScapeの「Worldwide eSignature Software 2021」のリーダーに選出され、大企業向けではトップシェアを獲得している。ISOの国際規格に準拠した封印を行うことで、グローバルで通用する証明性を確保する。また顧客の既存の業務システムと連携を行う様々な機能やAPIを提供しているのも特徴だ。
一括送信機能では、同じ文書を複数署名者に一斉送信でき、全取引先との一括契約更改などに適用できる。Webフォーム機能は、特定署名者へ署名依頼を送信する代わりにURLを生成し、不特定多数の署名者がアクセスして署名できる仕組みだ。サービス申込フォームや口座開設申込書などで活用できる。署名機能は電子と紙のハイブリッドで、相手に合わせて選択可能だ。モバイルアプリからTablet等で対面署名をすることもできる。
<PDFにおける署名方式の違い>
署名方式は意味合いの違いにより、「承認用署名」と「証明用署名」の2種類のデジタル署名が使い分けられる。Adobe Acrobat Signの特徴は証明用署名であることで、文書の作成・発行、および発行後に改ざんされていないことを証明する。署名後の変更可能範囲が指定でき、指定範囲外の変更が行われると署名が無効になる仕組みだ。ISOに準拠しており、グローバルで見たときに、最も証明性の高い署名ドキュメントと言える。
<業務全体のデジタル化・既存システムとの連携>
コロナ禍における在宅業務などの緊急対応等により、紙とハンコを電子化することに注目した結果、最終ドキュメントの送付や合意のみのデジタル化の検討が多い傾向が見受けられる。しかし契約行為の一部分のデジタル化のみではなく、契約プロセス全体のデジタル化の検討が必要だ。より広く、業務全体の最適化を考え、既存システムとのシームレスな連携も求められる。
Adobe Acrobat SignはAPIを使用することにより、既存のアプリやビジネスプロセスに電子サインフローを追加することがノーコードで実現できる。たとえば契約書発行のボタンを押すとSFAのデータを用いて契約書を自動で生成し、お客さまへ署名依頼をする。相手の署名が終わったらドキュメントをPDFファイルとしてフロントシステムに保存するといったことが可能だ。Adobe Acrobat Signが連携できるシステムとしてSalesforce、Microsoft Dynamics、SAP、kintoneなどがある。
また当社は米国でMicrosoftとの連携を強化しており、コミュニケーションツールのTeamsとAdobe Acrobat Signを連携させる取り組みも行っている。Teams用のAdobe Acrobat Signを提供しており、オンライン商談の際にTeamsから契約書の署名・捺印がスムーズに行える。
<導入事例1:米国大手銀行 様>
行政より委託されたCARES法によって促進された中小企業へのローン業務において、PDFファイルのやり取りにファイルの不整合が生じていた。Adobe Acrobat ProでPDFツールの標準化を行い、さまざまなPDFツールを置き換えることで、ドキュメントの整合性の問題を排除。アドビのドキュメント管理における強みが認識され、支店業務における150万件契約処理をAdobe Acrobat Signで導入した。
<導入事例2:Royal Bank of Scotland 様>
イギリスのRoyal Bank of Scotland 様は、学生ローン契約でAdobe Acrobat Signを導入。年間200万トランザクション以上の契約処理をAdobe Acrobat Signで対応している。ローン申込期間が11日から48時間に短縮し、顧客満足92%、ローン締結数25%増につながった。
<導入事例3:ソニー銀行株式会社 様>
ソニー銀行様はAdobe Acrobat Signを使って住宅ローン契約締結プロセスを電子化された。フロントのSalesforceと連携し、契約送信から締結まで最短5分で完了できる。実印・印鑑証明書が不要になり、本人確認や郵送手続きもなくなった。
<まとめ>
当社はグローバルで展開しており、事業の収益性・安定性に強みがある。長期間のドキュメント保管を考えた際に、PDFを開発した当社が提供するソリューションということに強い信頼感を持っていただけるだろう。IDC様の「2021年国内電子サイン市場動向」調査では、Adobe Acrobat Signが1,000人以上の大企業における利用率で1位を獲得した。紙業務のデジタル化を推進される際には、是非当社の製品もご検討いただきたい。
◆講演企業情報
アドビ株式会社:https://www.adobe.com/jp/sign.html - アドビ株式会社