データ活用で考える顧客体験(CX)の事業価値
~米国銀行事例に見る、10年先を生き抜くデジタル戦略~

【講演者】
Pendo.io Japan株式会社
営業部長
吉田 進之介 氏

<金融サービス企業における顧客体験(CX)の重要性>

近年の金融業界を取り巻く状況の変化は激しい。米国の利上げによって始まった円安からシリコンバレーバンクが破綻したり、地銀同士が経営統合を発表するなど、社会を騒がせるニュースが飛び交っている。

その一方で、オンラインでのサービスを中心とする銀行や証券会社、PayPayなどの金融サービスはシェアを大きく拡大。これからも異業種からの参入が続くと予想されている。

こうした変化には、スマートフォンの重要性の高まりが影響していると思われる。さらにアフターコロナで、顧客側もオンラインサービスを求めるようになり、デジタルの存在感をさらに強めている。利便性のあるデジタルへの期待は高く、より使いやすく、より快適に使えるサービスが求められるだろう。

金融業界は他業種に先んじてDXに取り組み、すでに実践して成果を上げている割合も高い。特に顧客体験(CX)の向上を重視する傾向にある。

顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)とは

顧客体験は、ある製品やサービスを利用する際に、顧客が感じる総合的な感情や満足度のことだ。企業やブランドの競争力向上や収益性に大きく影響を与える要素であり、顧客体験に不満を覚えると、企業の評判や収益に悪影響を及ぼすことがあるという。

顧客体験を向上させるためには、顧客のニーズや要求の理解が欠かせない。顧客の行動やアンケート調査などから、顧客推奨度、顧客推奨意向と呼ばれるNPS(ネットプロモータースコア)を計測し、反応を分析して現状を把握。顧客の満足度が高まるようにサービスを見直していくことが必要なのだ。

事実、CX改善に取り組んだ企業は株価に影響を与え、NPSと平均株価成長率が連動しているという調査結果も示されている。

どのようにCXを向上させていくか

CXを細分化したUX(ユーザーエクスペリエンス)の向上が重要である。CXは広範な視点での顧客の満足度を表す概念だが、UXは主にデジタル製品やサービスへの使用感に焦点が当てられている。サービス内容の分かりやすさ、直感性、視覚的な魅力などの満足感によりUXが向上する。

金融サービスなら、認知からサービス検討、契約、アフターフォローまで、カスタマージャーニーの各フェーズにUXのポイントがあり、その向上を図ることが、全体的なCX向上の実現につながると考えられる。

<顧客体験(CX)向上の成功事例>

大手調査会社のJ.D.Powerが2022年に実施した米国の銀行の満足度調査結果に基づき、顧客満足度が高い企業の事例をみてみよう。

1.Capital One(顧客満足度1位)

1994年に創立した比較的若い銀行ながら、総資産は約60兆円(米国銀行ランキング9位)、従業員数は約5万名、支店数は約750店の規模を誇る銀行。

長年データ分析やAI、ML(機械学習)などのテクノロジーの研究に注力し、公式アプリ内にデジタルウォレットやAIアシスタント機能を早期に搭載。革新的と言われながら、デジタルバンキングのCX改善に取り組んできた。アプリのレーティングは5点満点中4.9点で、ユーザーからも使い勝手において好評価を得ている。

注目すべき取り組みは、2017年に米国銀行で初めて自然言語AIのSMS「Eno」をリリース。銀行への問い合わせや依頼に対して、人間らしい言葉で親身になって返答してくれることで、イメージを向上させた。

デジタルサービスの性能に注力するだけでなく、リアル店舗でのサービスもないがしろにしていない。一部の支店では銀行担当者が常駐する「Capital One Cafe」を展開。ユーザーはコーヒーを飲みながらコワーキングスペースとして作業したり、ライトなイメージで銀行担当者に相談ができるリアルスペースを用意している。

オンラインとオフラインの両面から顧客体験に力を入れ、CX向上を成功させている。

2.PNC Financial Services(顧客満足度4位)

1845年設立で80年近い歴史を持ち、総資産は約74兆円(米国銀行ランキング6位)、従業員数が約6万人、支店数は約2,600店の規模を誇る銀行。

バーチャルウォレットと呼ばれるウォレットアプリに定評があり、入出金の記録に基づいたデジタルマネー管理サービスを展開している。さらに、問い合わせ対応はライブチャットではなく、LINEのような非同期チャットで受け付けているため、ユーザーは好きな時間に好きなタイミングで質問したり、返信を確認したりできる。シンプルながら、ユーザーの使い勝手を考えた画期的なサービスに取り組んでいる。

他にも、法人向けのサービスとして、他社と協業して小規模事業者向けの融資サービスを展開。スマホやパソコンから簡単に申し込み手続きができ、最短1営業日で審査を終え、最大10万ドルの融資を提供している。

これらの代表的な事例からも分かるように、CXを向上させている企業には、次のような傾向が見られる。

・顧客理解を追求する文化や姿勢がある
・データ分析やテクノロジーへの知見が深い
・試行錯誤を繰り返し、成功と失敗のデータを蓄積している

ただ、いずれも時間を要する取り組みだけに、先行する企業にならって、これからCX向上に力を入れようと気概を高めても、自社だけでノウハウやデータを蓄積するのは難しい。効率化を図るための支援ツールの導入を提案したい。

<顧客体験を向上させるPendo>

Pendoは、世界のソフトウェア体験の向上をミッションとして、ソフトウェアのユーザー分析と活用促進(ガイド)を実現するSaaSを提供。効率良く顧客体験の向上に取り組めるように支援を行っている。

すでに、米国トップ5に入る大手銀行、投資銀行のモルガン・スタンレー社、大手損保企業などをはじめとして、8,000社以上の企業に導入実績があり、各社のサービス向上に寄与している。

Pendoが展開しているのは、企業が提供するサービス(デジタルタッチポイント)の改善と定着を支援するプラットフォーム。お客様ページや業務支援サービスなどの付随サービス、モバイルアプリなどの提供するサービス群にPendoを導入することで、ユーザー分析やパーソナライズガイド、ユーザーアンケートの実施などの支援機能を働かせることができる。

ノーコードで使える3つの機能とユーザー体験の向上

Pendoは「ユーザー分析」「ユーザーアンケート」「パーソナライズガイド」の3つの機能をメイン機能として提供している。

「ユーザー分析」では、顧客ごとに、どのサービスのどのページを見ているのか、どの機能を使用しているのかを記録して可視化する。「ユーザーアンケート」では、各サービス上で簡単にお客様アンケートを実施できるようにサポート。容易にNPSのスコア集計ができるようになる。「パーソナライズガイド」は、ユーザーの操作をサポートするとともに、解決に導く施策が有効だったかを振り返ることができる。

これらの機能は全てノーコードで活用できるので、導入後は、専門職でなくてもカスタマイズが可能だ。

例えば、画面に表示される質問に答えながら分岐を選んでいけば、初めてでも迷わずにやりたい操作ができるような、ユーザー向けのガイド説明を用意しておくこともできる。アンケート機能は設問の内容や回答の形式の自由度が高く、答えやすいように選択式にしたり、点数を付けたり、コメントを書いていただくことも自在に設定できる。顧客からのフィードバックを効率よく得られる仕組みだ。サービス利用状況はユーザーごとに全て記録されるので、データを分析することで、ユーザーの傾向も把握しやすい。

1つのプラットフォームで、デジタルタッチポイントの改善、ユーザー定着の課題、その解決のためのPDCAサイクルを回すことができる仕組みになっているので、これらの機能を活用することで、現状を把握し、改善すべき課題に気付くきっかけになる。

Pendo導入により期待できる効果は、顧客の定着率向上やフィードバックの獲得の実現だ。サービスを操作する顧客の定着率を高めることができれば、評価の向上や販売機会の増加につながり、売上の向上が見込めるようになる。ユーザーサポートを充実させれば、顧客の迷いを削減し、フィードバックを獲得でき、コスト削減の実現につながるだろう。

◆講演企業情報
Pendo.io Japan株式会社:https://jp.pendo.io/