「顧客体験を最適化し『LTV向上』につなげる、顧客データ活用」

小林 広紀 氏
【講演者】
トレジャーデータ株式会社
マーケティングマネージャー
小林 広紀 氏

<はじめに>

今回は保険会社におけるデータ活用事例および当社の提供するソリューションであるTreasure Data CDPを活用したデータ活用についてご紹介できればと思っている。CDPはデータを統合・一元管理するためのソリューションである。顧客接点が多様化する今、各チャネルから集まってくる顧客データを活用し、顧客理解を深める上では欠かせないものとなりつつある。当社は2011年の創業以来、CDPベンダーとしてグローバルに活動している。現在はTreasure Data CDPを始めとする自社プロダクトを通じ、金融機関・保険会社を含むさまざまな企業の支援をさせていただいている。

<金融業界の競合は誰か?>

CDPというソリューションの中身について詳しくご紹介する前に、まず話の前提として、今の金融業界が置かれている状況について振り返っておきたい。近年、保険業界を含む金融業界は異業種からの新規参入が盛んになっている業界だ。Googleに代表されるデジタルネイティブ企業が、金融機関の本業に次々と参入し、競業・競合となっている現状がある。 存の金融機関とデジタル企業の違いは、データスコープの差である。持っているデータの射程距離が異なるのだ。既存の金融機関の保有しているデータはデモグラフィック情報やトランザクションデータ、取引データである。

一方、デジタルネイティブ企業は金融機関とは違ったタイプのデータを持っている。それは、顧客のライフサイクルに関するデータだ。デジタルネイティブ企業は顧客がふだん好んで読んでいる記事や購入した商品、検索している情報といったデータを持ち、それをもとに顧客のライフサイクルの変化や行動変容を敏感に感じ取っている。その結果、先回りして顧客に対して、有益な情報や顧客ニーズにあった商品を提供できるようになっているのだ。

<CDPが必要とされる理由>

顧客データをうまく活用することは、これまでぼんやり見えていた顧客の趣味嗜好やライフサイクルを正確に捉え、その方のニーズに合った情報や商品を届けることにつながる。 これらの作業を当たり前に行っているのが、デジタルネイティブ企業だ。では、そうでない企業はどうやってデータを活用し、顧客ニーズを捉えていけばいいのか。そこで登場するのがCDPというソリューションである。CDPは、簡単にデータを収集できる、収集したデータを一元管理できる、そしてこれらのデータを素早く分析して施策に活用できる、という特徴を持つ。これまで顧客のライフサイクルに関する情報の収集・管理は、営業職員がフェイストゥフェイスで集めて社内のデータベースに保存する、という形が一般的だった。

しかし、現在は技術の進歩により、ビジネス環境が激変している。さまざまな便利なツールが出回ったことにより情報収集そのものが非常に簡単になった一方、データが複数のツールに分散する、社内の各部門に散在してしまう、といった現象が起きつつある。このような状況下ではそれぞれの事業部で保有されているデータが分断され、1人の顧客に関する情報がバラバラになってしまっている状態だ。各事業ごとには最適化されているかもしれないが、会社全体で見たときにはその顧客を深く理解し、最適な商品や情報を届けるのが難しくなっている。だからこそ複数のチャネルやツール、各部門をまたいでの情報統合が必要なのだ。

加えて、個人情報保護の観点から、法規制・アドテク規制等の強化も加速していることをうけ、求められるのがCDPなのである。CDPはツールの壁、事業部の壁をこえてデータを1つに統合するためのソリューションである。データを統合することにより、各部門やツールの分断を乗り越え、顧客をより深く理解することが可能になる。

<当社のCDPの特徴>

ここで簡単に、当社のCDPの特徴を紹介したい。1つ目の特徴は、フルマネージドのデータマネジメントサービスであることだ。大量の多種多様なデータを集計分析できるデータベースとして活用できる。

2つ目の特徴は、マーケティングツールとの連携である。MAツールやCRMといった500を超えるマーケティングツールとすでに連携されており、すぐにこれらのツールを使い始めることができる。自社であらためて連携を行う必要がないため、導入後の作業負担を減らすことが可能だ。

3つ目の特徴は、機械学習によって類似ユーザーの抽出ができることだ。機械学習によって類似の顧客を抽出し、効率的な営業活動や解約防止施策につなげることができる。

4つ目の特徴は同意管理にも対応できることだ。近年デジタル化によるチャネルの複雑化などの影響もあり、同意管理が複雑化している。CMPとCDPとを連携することでCDPの中で同意管理を行うことが可能になり、面倒な同意管理を簡単に行うことができる。

<CDP活用事例>

ここから先のセクションでは、損害保険会社における実際のCDP活用事例を紹介したい。

まずご紹介したいのは、顧客情報の把握に活用いただいている事例である。コロナの影響もあり、これまで保険の営業を担当していた営業職員や代理店が、顧客と直接対面でやりとりする機会が減っている。それはすなわち、顧客の家族構成やライフスタイルの変容といった顧客のニーズを把握するのに必要なデータを収集するのが難しくなっているということだ。実際、こういった営業活動に必要な情報の収集にあたり、困っているという方も多いのではないだろうか。

そこで、役立つのがCDPである。CDPを使うとさまざまなデータを統合することができ、一元管理できる。営業活動に必要な顧客のあらゆるデータを簡単に利用することが可能だ。 具体的には、顧客のサイトでの行動やデジタルの接点、ライフステージの変化をデータを通じて把握し、営業に役立てることができる。ライフサイクルを把握し、先回りして顧客に適切な情報を届けることも可能だ。一方、先ほどの事例とは逆に、会員の解約予測にデータを活用し、解約防止施策に役立てているケースも存在する。

<CDPの可能性>

CDPはデータの統合を可能にし、顧客理解を深めるためのソリューションである。顧客理解を深める必要なデータをどこで活用するのか。そこで、我々が注目しているのが顧客接点としてのコンタクトセンターである。CDP for Serviceはコンタクトセンターにおいても企業内の多種多様な顧客情報を活用するためのソリューションだ。コンタクトセンターは顧客と直に接することが多い部門だ。それだけに統合した顧客データをもとに顧客とコミュニケーションを取ることで、コンタクトセンターを起点にエンゲージメントを深めたり、適切な提案を行ったりといったことができるようになる。そこで当社では現在、顧客の課題解決を中心に行っていた従来のコストセンターから、積極的に顧客への提案を行うプロフィットセンターへ、という提案を保険業界のお客様に対して行っている。

<おわりに>

ここまで当社のCDPやCDPを通して解決できる課題についてご紹介してきた。当社ではCDPの活用事例集の提供やCDP入門と題したウェビナー開催を行っている。CDPは顧客理解を深め、さらにコンタクトセンターのあり方を変える可能性を持つソリューションである。もしご興味を持たれる方がいらっしゃった場合は、気軽にお問い合わせいただければ幸いだ。

◆講演企業情報
トレジャーデータ株式会社:https://www.treasuredata.co.jp/