CX改善に向けた保険コンタクトセンターにおけるAI/クラウド・テクノロジーの活用
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【講演者】
- ジェネシスクラウドサービス株式会社
- EaaS第二営業本部
- シニアアカウントエグゼクティブ
- 藤田 亮輔 氏
<会社概要>
当社は約30年前にカリフォルニアで創業した比較的老舗のIT企業で、元々はITシステムとPBXを繋ぐCTIのソフトウェア開発を行っていた。日本では東京と大阪の2拠点、従業員数は約70名で活動している。当社のビジョンは「EXPRERIENCE AS A SERVICE」で、顧客体験に「共感の力」を届けるプラットフォームを提供していくことをポリシーとしている。本日お話しする「Genesys Cloud CX」はまさにこの機能が凝縮された製品だ。
<グローバルに見る保険業界のトレンド>
2025年には、お客様とのやり取りの95%がAIを使ったものに移行していくだろうという予測が出ている。既にチャットボット等様々なソリューションで導入されているが、それ以外の領域でもAIが加わっていくと考えられる。デジタルチャネルに関しては、70%のお客様が電話以外のチャネルを求めている。
<保険会社のCXの課題>
当社の調査で、デジタルに関して各業界はどの程度革新的なサービスを提供しているか聴取したところ、保険業界は他業界よりデジタルに関して「悪い」の評価が多い。保険会社様には様々な業務があり、各場面で様々な担当者が関わるため業務が複雑になり、ワンストップ対応が難しく、ソリューションがサイロ化している。データが統合できていても、インタラクションは分断された状況だ。
保険コンタクトセンターの接続率は他業界と比較しても高いが、応対に不満を持つ声もある。その要因は製品知識がないこと、共感力がないことの2点だ。保険業務における共感とは、お客様のことを完全に熟知したオペレータの対応であり、お困りごとをしっかり理解して最適解を案内することだ。共感力の高い顧客体験により、信頼・安心が生まれて最終的にCXが向上する。
昨今では保険金請求コストが高騰する中、保険会社はコスト削減を迫られる一方、顧客体験を再定義し、改善する必要にも迫られている。取り組むべきポイントは3つあり、お客様が好きなチャネルで管理できるセルフサービス、保険金請求における顧客体験の改善とコスト削減、お客様のパートナーとしての役割への移行による個別最適化と離反防止だ。
<GENESYS Cloud CXとは>
「EXPRERIENCE AS A SERVICE」を実現するための機能がすべて詰まった、オールインワンのCXプラットフォームだ。米国では2015年、日本では2016年にサービスを開始した。既に5,000超の組織(顧客)と90万人超のユーザーに利用いただいている。オムニチャネルやAIサービスといった顧客接点の機能、在宅やシフト調整など従業員管理や従業員満足度を上げるための機能なども搭載されている。AWS上で稼働しているサービスであり、全世界で展開している。
<Genesys Cloud CXの特徴/優位性>
大きな特徴の1つは、インターネットがあれば最短1週間で利用可能なことで、在宅用途で利用されるお客様も非常に多い。使った分だけ課金する料金システムも用意しているため、無駄な投資なくご利用いただける。オールインワンCXプラットフォームであることから、費用削減、柔軟性の高さ、スピードアップといった利点がある。
Genesys Cloud CXでは、ほぼ毎週新機能をリリースしており、年間では200件以上に及ぶ。常に最新で進化し続けるサービスであり、数多くの新機能から使いたいものをご利用いただける。お客様の回線をそのまま利用するため、通信キャリア、回線設置場所、電話端末は自由に選んでいただける。どうしてもGenesys Cloud CXでカバーしきれない機能は、サードパーティの仕組みと接続し、連携して利用することが可能だ。
また、Genesys Cloud CXでは、電話、Email、Webチャット等のインタラクションの処理ルールを設計可能なツールを用意している。グラフィカルなインターフェースを用いて、簡単にフローの作成や変更管理が可能だ。
<保険業界にジェネシスがもたらす価値とは>
保険会社様のビジネス課題として、契約率や継続率の改善、顧客体験の改善などが挙げられる。それに対応する当社のソリューションを利用いただくことで、最終的にコスト削減や売上の増加、CX/EXの改善に繋がる。
実際の業務例として、保険金請求の業務は顧客との保険会社様との関係に大きく影響する。電話での応対がCXに関連する一方、毎回電話で話したくないお客様も多いため、デジタルチャネルの活用がポイントだ。
<保険金請求の自動化とセルフサービスの利用シーン>
お客様がWebサイトにログインすると、チャットボットが立ち上がる。ボットと会話を進め、自転車が盗まれたことを申請すると、ボットは盗難に関する追加の質問を行う。ボットは保険金請求システムと統合されており、申請を処理する。お客様は請求が承認されたとのメッセージを受信し、口座に直接保険金が支払われたことを伝えるメッセージも受け取る。保険会社はお客様との継続的な関係構築を目的に、近隣のサイクルショップやディスカウントのリンクを掲載したメッセージを送信。お客様は支払処理が非常に簡単に済んだことで、保険会社の対応に満足するという流れだ。
<損害保険 事故対応の自動化>
IOTテレマティクスデバイスを導入している自動車保険のお客様が、衝突の可能性のある事故に巻き込まれ、IOTデバイスは事故を登録する。WebメッセージングまたはSMSによって顧客にメッセージを送信し、全員が無事であることを確認。そうでない場合はGPSの位置情報で救急隊の手配を実施する。誰も怪我をしていない場合、ボットはお客様がレッカー車を必要とするかを尋ね、必要なら手配を実施し、併せて事故対応の処理もスタートする。復旧・修理サービスとの連携やナレッジベースへのアクセスにより、ボットやエージェントはタイムリーに正しい情報を入手できる。
お客様はチャットを通じて損害状況の写真を送信する。送信された写真はサードパーティのAI自動車修理価格設定サービスのほか、CRMや基幹システムにも追加される。テレマティクスデータと照合し、補償対応の妥当性を評価し、不正の可能性を探す。
<導入事例>
アイルランドの大手金融事業者のIrish Life様は、Genesys Cloud CXの導入によって顧客体験を統合し、ジャーニーとして処理できるよう改善した。顧客満足度が2%改善し、市場シェアは4%増加した。東京海上日動オーストラリア様はGenesys Cloud CXでリモートワークの整備を行った結果、初回電話応対率が97.5%に改善した。あいおいニッセイ同和損害保険オーストラリア様は、導入によって全体的なサービスレベルが60~95.6%向上された。デジタルチャネルの整備に加え、従業員のための機能を充実させたことも要因だ。
東京海上日動火災保険株式会社様は、在宅運用のシステム基盤としてGenesys Cloud CXを導入。Genesys Engageと連携することでセンターと在宅が一体となったハイブリッドな運用体制を構築された。アクサダイレクト様は「画面共有サービス」を開始し、お客様のPC画面をアドバイザーが同時に確認できるようにした。
<最後に>
企業はCXの向上、コスト削減、売上・利益の増加の3つにバランスよく取り組まなくてはならない。そのため、昨今はCXの向上について企業中心となる傾向があった。当社としては「共感」に焦点を当てて、CXを整備していくべきと考える。共感は信頼とロイヤリティを生み、従業員満足度向上による差別化も図れる。デジタルを絡めた顧客中心主義を、Genesys Cloud CXで実現していただければと考えている。
◆講演企業情報
ジェネシスクラウドサービス株式会社:https://www.genesys.com/ja-jp