2023年4月27日(木)開催 FINANCE WEBINAR「デジタルを活用した持続的な成長を支える金融ビジネスの実現」<アフターレポート>

2023年4月27日(木)開催 FINANCE WEBINAR「デジタルを活用した持続的な成長を支える金融ビジネスの実現」<アフターレポート>

印刷用ページ

2023年4月27日(木)セミナーインフォ主催 FINACE WEBINAR「デジタルを活用した持続的な成長を支える金融ビジネスの実現」が開催された。 VUCA時代において、顧客ニーズの多様化やリモートワークによって業務の在り方が変化するなど、様々が課題が生まれている。金融機関においても、従来の考えにとらわれず、迅速かつ柔軟に対応することが求められている。デジタル技術を活用することが、課題解決の一助となり、持続的な成長を可能とする金融ビジネスを実現することができる。本ウェビナーでは、基調講演にて株式会社みずほフィナンシャルグループ、特別講演にて株式会社めぶきフィナンシャルグループにご講演いただき、最新事例をご紹介いただいたとともに、各社より、デジタル化への最新の取り組み状況や今後の課題についても言及いただき、今後のデジタル施策への取り組みの一助となるセミナーをお届けした。

  1. 多彩なパートナーと紡ぎ出す〈みずほ〉の価値共創について
    株式会社みずほフィナンシャルグループ 中村 絢嘉 氏
  2. 金融業界のベストプラクティスRPAと次世代の業務自動化に向けたインテリジェントオートメーション
    Blue Prism 株式会社 柏原 伸次郎 氏
  3. 真のEmbedded Insurance(組込型保険)~グローバル金融プレイヤーが成功した保険エコシステムの作り方~
    InsureMO株式会社 河上 勝 氏
  4. 常陽銀行のDX戦略ロードマップと現在の取り組み状況
    株式会社めぶきフィナンシャルグループ/株式会社常陽銀行 丸岡 政貴 氏

多彩なパートナーと紡ぎ出す〈みずほ〉の価値共創について

基調講演
【講演者】
株式会社みずほフィナンシャルグループ
デジタル企画部
シニアデジタルストラテジスト
中村 絢嘉 氏

〈みずほ〉のDX戦略概要

5万人を超える社員の力を結集し、多彩なパートナーとともに社を超えたチームを組んで暮らしを後押しする様々なソリューションを開発してきたみずほグループ(以降、〈みずほ〉)。未来の可能性を一つずつ着実に現実にし、暮らしの進化を加速する〈みずほ〉のDX戦略をみていく。

DX注力領域を定め、DXビジネスを拡大

日本社会の豊かさを象徴する、みずみずしい稲穂を社名として誕生して以降、〈みずほ〉は顧客一人ひとり、そして経済や社会に対して豊かな実りを提供し続けることを企業理念としてきた。

2022年3月には、Google社とDX分野での戦略提携を発表。プラットフォーマー企業やみずほグループの強みを生かしながら新たな価値創出を図る中で、「金融DX」「ESG(SX)」「Tech起点」の三つの領域をDX注力領域と定め、施策を実行している。

DX推進体制の強化

2023年4月からは、梅宮真CDO(デジタル戦略・イノベーション推進責任者)のもとに、DX機能を集約。みずほリサーチ&テクノロジーズやみずほ第一フィナンシャルテクノロジー、米国シリコンバレーにあるベンチャーキャピタルのWiL社と設立したBlue Labなどのグループ会社を含め、一体的に運営するDX推進体制を構築している。

こうした戦略の実現には、グループ全体にデジタル活用環境を根付かせるための組織づくりが重要だ。組織横断のデータの利活用やDXの人材育成を図ることで、DX推進の基盤の強化にも力を入れている。

DX注力領域における事例紹介

〈みずほ〉のDX推進では、どのような施策が行われているのか。DX注力領域と定めた、三つの領域への事例をそれぞれ紹介する。

<金融DX領域での施策例:Embedded Financeなど>

組み込み型決済サービス「ハウスコイン」
〈みずほ〉は、全国170以上の金融機関が加盟するスマホ決済基盤「J-Coin Pay」を保有。これを活用して、特定の経済圏内で決済が可能なチャージ型コインサービス「ハウスコイン」をリリースしており、企業や自治体のアプリなどに組み込むことで、さまざまな金融サービスを可能にしている。

ハウスプリペイド市場は、2025年には7兆円規模の市場になると見込まれ、ハウスコインの将来性には大きな期待が寄せられている。

2022年9月にはヤマト運輸の公式アプリと連携した「にゃんPay」の提供を開始。現金を使わず、アプリで全てが完結することから配達現場などでの業務の効率化が加速。宅急便の運賃を12%割引する形で利用者へと還元し、好評を得ている。

デジタル地域振興券
地域の振興券を電子チケットとして発行できるデジタル地域振興券の活用も進んでいる。デジタル化で利便性が増すことはもちろん、発行側の自治体の負担も軽減。神戸市、川崎市など約20の地域で導入が進み、2022年度は発行総額200億円を達成した。

デジタル化することで、利用者の動向や販売データを収集・分析し、次の戦略へと生かせることも重要なポイントだ。実際、地方の観光圏などでは、データで可視化されたことで、観光客の更なる誘致に向けた提言などにつながっている。

デジタル特典付き社債(デジタルエンゲージメントプラットフォーム)
社債などの金融商品に対して、ブロックチェーン技術を活用したエンゲージメントプラットフォームを開発。社債の発行企業と購入者が直接接点を持つシステム基盤が構築されたことで、新たなマーケティング手段としての活性化が期待されている。

1号案件は、2023年2月にカゴメ社が発行した10億円のデジタル特典付社債。社債購入者向けキャンペーンとして野菜飲料プレゼントなども実施され、発売開始から2日間で完売した。ファンベースマーケティングの高まりを受けて、投資家とのエンゲージメントを強化してマーケティングに取り組む発行体は、これからも増えると見込まれている。

ESG(SX)領域での施策例:自治体のDX支援

東京都八丈町スマートアイランド
八丈島に拠点を構える唯一のメガバンクとして、2019年頃からキャッシュレス化を中心とした島内事業者のデジタル化を支援。地域が抱える多くの社会課題や行政課題について、デジタルテクノロジーに関する知見をもとに社会実装に向けた取り組みを継続してきた。

J-Coin Pay を活用したキャッシュレスキャンペーンの展開、土砂災害の検知、島の周囲で見られるザトウクジラを観光資源とするためのAI活用など、多彩な分野での支援施策を広げている。今後は、収集したデータの利活用を図り、八丈島全体のスマートアイランド化を促進。持続可能な地域社会の構築に向けた取り組みとして進化させていく構えだ。

北海道更別村SUPER VILLAGE
北海道更別村は、国が推進する「デジタル田園都市国家構想のタイプ3」に、道内で唯一採択された自治体である。「100歳になってもわくわく働けてしまう奇跡の農村」を合言葉に、自立自走のトラクターによるスマート農業の実現や自動運転車によるデマンド交通の導入など、様々な取り組みに挑戦している。

〈みずほ〉はスーパービレッジに実現に向けた包括連携協定を締結し、第一弾の支援として、マイナンバーカードを取得した村民を対象として限定のサービスポイント付与を開始。地域内限定でのポイント消費を促すことで、税金の有効活用につなげている。今後は、事業全体の資金調達、ガバナンス高度化の支援も展望し、地域におけるデジタル実装や事業継続に向けたモデルづくりに貢献していく予定だ。

Tech起点領域の施策例:メタバースの取り組み

〈みずほ〉は2022年8月、世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット」へ邦銀として初出展。メタバース領域への取り組みをいち早くスタートさせた。メタバースの現状のウィークポイントは、複数のプラットフォームがあり、決済手段も分断されていることだ。メタバースならではの世界観を生かせるような環境を整備するため、TBTLabグループのJP GAMES社を中心に、〈みずほ〉をはじめとした金融機関、その他事業会社とともに、異なるメタバースのプラットフォームをまたいでの相互運用を可能とするオープン・メタバース基盤の構築を目指している。

Blue Labによるオープンイノベーション

ここまでで紹介してきた事例の多くは、グループ会社である株式会社Blue Lab発で実現したプロジェクトだ。Blue Labは、既存ビジネスの高度化などを図りながら、ビジネス戦略を検討し、新たな価値創出を目指している。

法人のお客さまへのDX支援

デジタル技術を活用としたビジネスモデルの変革や生産性の向上は急務の経営課題であるため、これらの課題に対し、高い技術力を持つイノベーション企業や最先端の取り組みを進めている企業と連携し、顧客のDXも支援することで、課題解決に貢献していく。

DX推進のための企業風土改革

〈みずほ〉社内のDX意識を高めるため、これまでに取り組んできた意識改革に関する施策を紹介する。

社内へのDX意識の浸透

まだ理解が及んでいない社員へのマインドセットのために、あらゆるシーンで地道にDXに関する発信を実施している。

メタバース空間を利用した、トップメッセージの発信
梅宮CDOのアバターが〈みずほ〉オリジナルキャラクターのあおまるとともに、メタバース空間の中で、社員に向けたメッセージを発信。「インパクトがあって面白い」と、社内から好評価の声が上がっている。

社員交流の活性化
社内でのデジタルリテラシー向上のため、社内SNSのDXコミュニティでディスカッションしたり、DX人材育成に向けた勉強方法を教え合ったりなど、社員間のコミュニケーションも活発化している。

挑戦するマインドづくり

DXを推進する原動力となるのが、挑戦するマインドだ。様々な施策により、社員のマインドを刺激している。

GCEOチャレンジの新設
2023年度からは、社員が感じている問題意識や新しいビジネス創出のアイデアを公募する仕組みをリニューアルして「GCEOチャレンジ」を新設。GCEOやCDOなどの役員がプレゼンを直接聞き、有効な案件に対しては人事異動を含めたリソースが与えられビジネス創出に取り組めるとあって、すでにいくつものエントリーが寄せられている。

役職員一体のマインドセット
2021年の初めからは、独自のデザイン思考ワークショップを制作。「Yes, And…」のように、相手のアイデアはいったん肯定して受け入れ、付け加える形で提案するやり方など、イノベーションやDXに必要なマインドセットを鍛えるセミナーなどを実施している。

人事制度の改革
「かなで-CANADE-」と名付けた新しい人事制度を導入。経歴や過去の評価、取得している資格の他、資質調査を通じて見えてきた思考パターンや行動パターン、上司や顧客との相性など、多彩なデータの分析を駆使し、社員1人ひとりの状態や考え方を可視化。将来的には、DX推進に適した資質を持つ人材の発掘につなげるなどの活用も視野に入れている。

組織の土台づくり:DX人材の育成

全社員のDXリテラシーの底上げを図るべく、DX人材育成プログラムを用意。認定制度を導入することで、社員自身が現状のレベルを把握し、計画的に教育研修コンテンツで勉強して実践研究を積んでレベルアップしていけるように設計している。

〈みずほ〉の取り組みは、日頃の感じているニーズに応えるために、地道に具体化してきたものばかりだ。この姿勢を貫きながら、引き続き、実り豊かな生活に向けて、これからも社会課題の解決に挑戦を続けていく。