2023年4月20日(木)開催 INSURANCE WEBINAR「コンタクトセンター改革がもたらす顧客体験価値の向上と保険ビジネスの成長」<アフターレポート>

2023年4月20日(木)開催 INSURANCE WEBINAR「コンタクトセンター改革がもたらす顧客体験価値の向上と保険ビジネスの成長」<アフターレポート>

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2023年4月20日(木)セミナーインフォ主催 INSURANCE WEBINAR「コンタクトセンター改革がもたらす顧客体験価値の向上と保険ビジネスの成長」が開催された。昨今における急速なユーザーのライフスタイルの変化やチャネルの多様化に対応すべく、国内保険会社のコールセンターにおいてもテクノロジーを活用したマルチチャネルへの対応に向けたコンタクトセンターへの改革が進められている。従来の電話対応のみでは得られなかった顧客データの取得を可能とし、顧客一人一人に合わせた最適な問い合わせ対応の実現を加速させている。本ウェビナーでは、基調講演に明治安田生命保険相互会社、特別講演にて損害保険ジャパン株式会社にご講演いただき、最新事例をご紹介いただくとともに、各社より、コンタクトセンターの取り組みの一助となるセミナーをお届けした。

  1. 「人に一番やさしい」次世代型コミュニケーションセンター構築にむけた取組み
    明治安田生命保険相互会社 安河内 健太 氏
  2. 多くの事例から学ぶ!急成長チャネル「SMS(ショートメッセージ)」を活用した生損保業界DX化の進め方
    NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社 黒田 和宏 氏
  3. CX改善に向けた保険コンタクトセンターにおけるAI/クラウド・テクノロジーの活用
    ジェネシスクラウドサービス株式会社 藤田 亮輔 氏
  4. 次世代のコンタクトセンターが担うCX向上とボット活用による電話・チャット対応の効率化
    モビルス株式会社 柏原 学 氏
  5. 損保ジャパンにおける「AI」と「人」が融合したコンタクトセンターの実現に向けた取組
    損害保険ジャパン株式会社 福田 晋太郎 氏

「人に一番やさしい」次世代型コミュニケーションセンター構築にむけた取組み

基調講演

【講演者】
明治安田生命保険相互会社
コミュニケーションセンター
コール業務開発グループマネジャー
安河内 健太 氏

当センターの紹介

当社は約620万人のお客様にご契約をいただいており、従業員数は約47,000人、うち営業職員は約36,000人の規模だ。コミュニケーションセンター(以下CC)は、営業職員を補完する役割を担っている。インバウンドは約200席で対応件数は年間で約78万件、アウトバウンドは140席で年間約44万件に対応している。

当社は経営理念を「明治安田フィロソフィー」として掲げている。「確かな安心を、いつまでも」の経営理念の下、「信頼を得て選ばれ続ける、人に一番やさしい生命保険会社」を目指している。その実現に向けて、CCでは期待を超える「感動」の提供を目指す。お客様へ安心感をお届けすることを前提に、「満足・特別感」「簡単・利便性」を追求している。

改革の背景

当社のCCはこれまで応答率90%以上の維持を目標に運営してきた。しかしコロナ禍の影響を受け、2020年4月は54.1%まで落ち込み、早急に応答率を回復させる必要があった。CC運営体制の強化・高度化のため、若手職員を中心とした「安定・安心感PT」「満足・特別感PT」「簡単・利便性PT」の3つのPTを組成。各PTではコミュニケーター(以下CM)とスーパーバイザーの意見を集約し、ボトムアップで改善策に反映させる流れで、自立的に運営している。CC運営体制の強化・高度化により、応答率回復と苦情縮減に繋がった。

3つのPTに加え、「Kizuna運動」と「CCイノベ塾」も改善の土台となった。Kizuna運動は全役職員が取り組む全社運動で、CCでもボトムアップ活動を実施した。CCイノベ塾では若手職員を中心にCCにおける先進技術の活用方法についてディスカッションを行い、3つのPTについても成功に向け意見交換を行った。

「安定・安心感」の提供

「安定・安心感PT」では、応答率の改善・向上をメインテーマとして活動してきた。パンデミックを始めとする不測の事態でも強固な受電サービスの提供方法や、電話応対の効率化を検討した。その結果、AIを活用したCM応対支援の高度化、リモートワーク環境の整備を基本方針とした。

具体的な施策の1つが「CCナレッジ」と呼称しているAIマニュアルだ。これまで紙ベースのスクリプトや事務ルールなどを使用した電話応対のため、正確性や迅速性に一部課題があった。そこで各種マニュアルの整備・電子化を行った。また、音声認識システムと連携し、応対中のキーワードからアラート・マニュアル等を自動表示されるようにした。AIを活用したサポートにより、自宅でもセンター内と同水準の効率を実現した。

2つ目の施策はリモートワーク環境の構築で、以前は紙ベースのマニュアルや直接会話による管理・指導で、センターのみで受電可能な体制であったことが課題だった。そこでノートPC型CTIやCCナレッジ参照用モニター、Teamsを活用することで、スムーズに管理・指導が可能になり、自宅でもセンター内と同水準の効率を実現した。

取組成果として、導入前は1件当たりの応対時間は16分かかっていたが、導入後は14分と約12%削減した。特に短縮割合が高かったのは、給付金・保険金、料金、その他保全・税金などの分野だ。応答率も2021年度は98.1%と高い結果を記録した。2022年度は円安やコロナ給付金のお問い合わせにより入電が増加し、難易度の高い応対も増えたが、足元では95%前後を維持している。

「満足・特別感」の提供

「満足・特別感PT」では電話応対の効率だけでなく、品質向上も重要だと捉え、お客さま目線に立った応対品質の向上策を検討した。施策の1つ目はSMSアンケートの導入・展開で、SMSアンケートによるお客さま評価と、音声認識システムを活用したコール品質評価により、CMの応対品質向上を図った。

以前は専任担当者による通話評価のみで、評価対象コールが限定的であった。また、課題のあるコールが抽出されづらく、評価が限定的でCMに不公平感があった。そこで半年かけて検討し、電話応対の印象面(わかりやすさ、やさしさなど)について終話後のSMSアンケートでいただくようにした。また、基本動作については音声認識システムを活用し、評価を一部自動化した。この結果、原則全てのコールが品質評価の対象となり、課題のあるコールの全抽出や不公平感の解消に繋がった。

SMSアンケートで実施しているのは5項目で、応対の基本、傾聴力、最適解の提案、伝える力、総合満足度だ。導入時から総合満足度は80%以上を目標に運営しているが、「満足」と「やや満足」の合計で80%以上を達成している。さらに2022年度は、トップボックスの「満足」も70%以上の高い水準を維持している。電話応対の品質向上のための施策であるが、CMの納得感にも繋がっていく。AIによる応対支援や在宅リモートワークなどとセットで、職業魅力度の向上・やりがいの高まりに繋がると良いと感じている。

「簡単・利便性」の提供

「簡単・利便性PT」では、FAQやチャットボットを始めとするデジタルチャネルを中心に検討を進めている。利用件数がそもそも少なくお客様にもっと利用していただけるように改善する必要があること、お客様の利便性向上と入電抑制に繋がっていないことが課題であった。そこでテキストマイニングを活用したFAQ・チャットボットの改善、有人チャットの要件拡大、お手続きフォームの新設を検討。お客様の自己解決手段の最適化と拡充により、利便性向上を目指してきた。

FAQ・チャットボットの改善では、電話応対のテキストデータをテキストマイニングし、お客さまの疑問を把握。FAQ有無を「有」「不完全」「無」に分類し、追加すべきFAQを準備した。手順としては、テキストマイニングで洗い出した問い合わせ内容について、WEBで解決したかを判定し、ない場合は新たなFAQを作成する。ある場合はFAQの閲覧数を調べ、少なければ掲載場所の変更、カテゴリーの括りの変更等を行う。さらにFAQでは問題が解決したかをお客様にアンケートを行っており、解決しなかった場合は、回答の表現を変えたり、検索してヒットした際の重みづけを変えたりしている。特にWEB解決の有効性の高いFAQを意識して進めており、利用数や解決数の増加に繋げていくことを目指す。

デジタル化の推進については2020年度から、有人チャットで口座振替や名義変更が対応可能となり、お手続きフォームも開始した。さらにテキストマイニングから、お客さま専用ページのログインサポートのニーズが高いことが判明し、有人チャットにて専用窓口を開設した。デジタルの利用件数は毎年増加しており、入電削減に寄与している。

新たな取組み

高齢者向け音声明瞭機「サウンドアーチ」を導入している。ご高齢のお客さまに寄り添ったアフターフォローサービスを追求する中から発案した取り組みだ。国際特許の「ニートプロセッサ」を搭載しており、低い音程でもこもらず、高い音程でもキンキンしない声に変換できる。2023年1月からサウンドアーチを100台設置し、電話の声が聞き取りにくい方に寄り添った応対を実践している。

サウンドアーチの使用による改善効果を確認した結果、お客さまの約8割が「聞こえやすくなった」、CMの約9割が「会話が通じやすくなった」と回答した。実用面における有用性があるものと評価いただいたこととなる。