Embedded Financeのサービス例と日本法

以下、米国でのEmbedded Financeの事例をHydrogen社Head of MarketingのScott Raspa氏のブログ”6 Examples Of Embedded Finance Changing The Future”を参考に、支払、貸付、投資、保険、銀行、カード決済という分類に基づき、日本のEmbedded Financeの導入事例や、導入が予想されるビジネスを記述し、Embedded  Financeの裏側でシステム提供等を行うFinTech企業(通常はEnablerとLicense Holderを兼務するのでその例を中心に記載)への規制、同サービスの提供を受けるBrand(顧客に接点を有する企業)への規制について検討する(※1)。

脚注 ※
※1 Embedded Finance導入事業者に対する犯罪収益移転防止法規制の内容等の検討については「Embedded Finance(Modular Finance)の概要と日本法、日本での可能性」を参照されたい。

Embedded Payment(埋め込み型支払)

ユーザーが、アプリ経由でサービスや物品の購入をし、そのアプリ上でサービス提供者や物品販売者(以下、ここでは単にBrandという。)への対価の送金(支払)までも併せて行うようなビジネスを日本で導入する場合を考える(※2)。

(1) Enabler/License Holderへの法規制

Enabler/License Holderが、銀行に対してユーザーからの為替取引の指図を伝達する電子送金サービスプログラムをAPI提供し、それを運営する場合は、電子決済等代行業に該当し内閣総理大臣の登録を受ける必要がある(銀行法2条17項1号、52条の61の2)。

また、Enabler/License Holderが、ユーザーから回収した対価をBrandに引き渡すサービスを「収納代行サービス」として行う場合であれば特段の規制は適用されないが、Enabler/License HolderがBrandから代金回収権限を授権されずにユーザーから回収した対価をBrandに送金する等により「為替取引」を行う場合には、銀行業を行う者として内閣総理大臣の免許を受けるか(銀行法2条2項2号、4条1項)、資金移動業者として内閣総理大臣の登録を受ける必要が生じる(資金決済法2条2項、37条)。

(2) Brandへの法規制

Brandが物やサービスの販売に紐づかずに送金サービスを提供する場合、Brandにも資金移動業の登録が求められる。もっとも、Brandが、為替取引業務を行うEnabler/License Holderとユーザーを繋ぐユーザーインターフェースの提供を行っている場合などEnabler/License Holderの為替取引業務の一部を担っているに過ぎない場合、Brand自身は、資金移動業者の一部業務の委託先(資金決済法38条1項9号)となり、資金移動業の登録は求められないと考えられよう。

脚注 ※
※2 なお、物品の販売やサービスの提供を行うBrandについては元来のAmazonのように自社で物品を販売する事例と、楽天市場のように他ショップが物品を販売するサービスの両者があるが、本稿では前者を念頭に置いて検討する

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