Embedded Lending(埋め込み型貸付)

ユーザーがBrandのアプリ上での物品の購入に合わせて購入代金の分割払いローンを組むような事例も想定され、これは(自社)割賦販売、信用(割賦)購入あっせん、ローン提携販売、提携ローンのいずれかをアプリでシームレスに提供する取引ということになろう。以下では、信用(割賦)購入あっせんを例に説明する(※3)。なお、国内事例としては、クレジットエンジン株式会社が、融資の申込、契約、借入、返済までの登録と管理をオンラインで完結できる仕組みを備えたオンライン融資管理システム「CE Loan SaaS」の提供を公表している。

(1) Enabler/License Holderへの法規制

信用(割賦)購入あっせんは、包括信用購入あっせん(割販法2条3項)と個別信用購入あっせん(同法2条4項)に分けられるが、Enabler/License Holderがいずれのサービスを提供する場合でも、事業者の登録制(同法31条、35条の3の23等)、取引条件表示義務(同法30条、35条の3の2)、書面交付義務(同法30条の2の3、35条の3の8等)等の規制が課される。もっとも、いわゆるマンスリークリア (※4) は規制対象外となる。

なお、少額の分割後払い規制が導入され、利用者の極度額(利用限度額)を10万円以下にすることを条件として、登録少額包括信用購入あっせん業者について規制緩和が行われている (※5) 。

(2) Brandへの法規制

Enabler/License Holderが提供する信用(割賦)購入あっせんについて、Brandが取引の媒介を行う場合、Brandに適用される法規制はない。

脚注 ※
※3 (自社)割賦販売、信用(割賦)購入あっせん、ローン提携販売、提携ローンの取引の仕組みや信用(割賦)購入あっせん以外の法規制の詳細については「Embedded Finance(Modular Finance)の概要と日本法、日本での可能性」のⅡの2を参照のこと。
※4 ユーザーが商品サービスの提供を受ける契約を事業者と結んだ時から2ヵ月以内に、与信を行った事業者との清算が完了する取引。
※5 少額包括信用購入あっせん業者は、経済産業省に登録を要するが(割販法35条の2の2)、その際の純資産要件が緩和され(同法35条の2の11第1項3号)、資本要件(現行登録時最低2000万円)が撤廃されている。また、与信管理等や社内体制も簡易なものとすることが認められている(同法35条の2の4、35条の2の11第1項11号)。

Embedded Investment(埋め込み型投資)

国内事例としては、金融機関の口座において投資一任業務を提供する株式会社FOLIOの4RAPというサービスが誕生している。当該サービスは、Enabler/License Holderがプラグイン型SaaSを提供し、Brandである金融機関が管理する口座上で、口座保有者にラップ・ロボアドサービスを提供するというものである。

(1) Enabler/License Holderへの法規制

実際に投資一任業務を行うEnabler/License Holderは、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて有価証券又はデリバディブ取引に係る権利に対する投資として、ユーザーの金銭その他の財産の運用を行うもの(金商法2条8項12号ロ)であれば、投資運用業者としての登録(同法28条4項1号、29条)が求められ、最低資本金規制(同法29条の4第1項4号イ等)、体制整備義務(同法29条の4第1項1号へ)等の規制が適用される。

(2) Brandへの法規制

上記の4RAPの例ではBrandである金融機関は、自社内の口座の顧客に対し投資一任契約の締結の代理又は媒介(同法2上記の4RAPの例ではBrandである金融機関は、自社内の口座の顧客に対し投資一任契約の締結の代理又は媒介(同法2条8項13号)をすることになり、投資助言・代理業(同法28条3項)を行うために金商法33条の2に基づく登録をする必要が生じる。このような登録を受けた金融機関を登録金融機関といい(同法2条11項柱書)、金融商品取引業者と同様の行為規制(同法36条~40条の5)等が適用される。

なお、銀行、協同組織金融機関その他政令で定める金融機関以外の者(第一種金融商品取引業を行う者及び登録金融機関の役員及び使用人を除く。)の場合には、投資助言・代理業を取得するほか、金融商品仲介業の登録を行うことでも、投資一任契約の締結の媒介を行える(同法2条11項4号、66条) (※6) 。

また、銀行などの金融機関以外の者に関しては、金融サービス仲介業の登録を受けた場合にも、顧客に対し高度に専門的な説明を必要とするものとして政令で定めるものを除き、投資一任契約の締結の媒介が可能となる(金融サービス法11条4項4号)(※7)。

脚注 ※
※6 なお、金商法66条が金融機関以外の者のみに金融商品仲介業の登録を認めているため、金融機関は金融商品仲介業ができない。
※7 金融機関が金融サービス仲介業を行えるか否かは個別業務ごとに見る必要があり、銀行その他の政令で定められる者については金融サービス仲介業にかかる有価証券等仲介業務を行えない(金融サービス法15条6号、金融サービス法施行令22条)。

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