第三の問い 顧客の価値は何か
対象とするお客様が決まったら、次に行うことは、「お客様が望んでいるものを知ること」です。お客様が望んでいるものを知るために具体的な仕事の進め方を教えてくれているのが、ドラッカー5つの質問「第三の問い 顧客の価値は何か」です。
前回、誰をお客様の対象とするかを明らかにする重要性をお伝えいたしました。対象とするお客様を決めるということは、事業を提供する側の勝手です。対象とするお客様を決めたからといって事業が成功するわけではありません。対象とするお客様から選んでいただいてはじめて事業は事業として成り立ちます。
では、対象とするお客様から選ばれるためにどうすればいいのでしょうか。まずは、お客様が望んでいること知り尽くすということです。
お客様を知り尽してはじめて、自分たちは何をどのように仕事を進めていけばいいのかがわかり、何をどのようすれば喜んでいただけるのか、がわかるからです。こうしてはじめて、自分たちが対象とするお客様から選んでいただけるようになります。
顧客と市場を知っているのはただ一人、顧客本人
お客様が求めているものを知り尽くすためにどうすればいいのでしょか。ドラッカーはこう言っています。
「顧客と市場を知っているのはただ一人、顧客本人である。したがって顧客に聞き、顧客を見、顧客の行動を理解して、はじめて、顧客とは誰であり、何を行い、いかに買い、いかに使い、何を期待し、何に価値を見いだしているかを知ることができる」。
ディズニーランドを運営するオリエンタルランドは、ディズニーランドを開業して31年間、1日たりとも欠かさずに園内のお客様にインタビューをしているそうです。まさに、それは顧客から学んでいる姿です。お客様が求めているものを、勝手に憶測せずに、お客様に聞き、お客様を見て、お客様の行動を理解する取り組みを欠かさず続けていってください。
お客様が望んでいることに向き合い続ける
一方、その事業に携わり、その仕事に精通すればするほど見えなくなるものがあります。それは、【第3回】われわれの顧客は誰かでお伝えした、「お客様が望んでいること」です。
お客様が求めているものは、つい品質だろう、と考えてしまいます。気が付くと、売り手の勝手に陥ってしまいがちです。
お客様が手に入れているものは、商品やサービスそのものではなく、商品やサービスを通して得られる「欲求の充足」です。商品やサービスはお客様のニーズを満たすための橋渡しに過ぎません。
商品やサービスが価値となって現れるのは、お客様のところです。商品やサービスを価値あるものに変えてくれるのは、唯一、お客様だけです。
お客様の求めているものが明確になるまで、商品開発をスタートさせない、お客様が求めていないような商品やサービスを作らないことです。
まだ「お客様になっていないお客様」を見る
喜んでもらう人を増やすためには、現在のお客様だけでなく、お客様になっていないお客様についても考えていく必要があります。なぜなら、現在のお客様よりも、お客様になっていない人の方が圧倒的に数が多いからです。
事業に影響を及ぼすような大きな変化はお客様になっていないお客様から生まれるのです。お客様になっていないお客様はそれだけ市場に対する影響力が強いのです。だから、しっかりとお客様になっていないお客様へ関心を注がなければならないのです。
経営者の方とお話しさせていただくと、多くの経営者は、お客様についてはすでによく知っているし、毎日考えていると言われます。また、研修やセミナーでお客様のことを学んでいると言われます。しかし、それではお客様について考え抜いているとは言えません。
「顧客の価値」を知るための問い
喜んでもらう人を増やすために、次のような問いに対する答えを創り出してください。
- お客様は何のために買ってくださっているのか
- お客様はどんなニーズを満そうとされているのか
- お客様はわれわれの商品・サービスを買うことで何を手に入れようとしているのか
- どのような人にお客様になってほしいか
- そのお客様はどこにいるのか
- 現実のお客様はどのようなお客様なのか
- お客様になってほしい人たちから選ばれているか
- 継続的にお客様になってくれているお客様はどんなお客様なのか
- なぜお客様になってくれているのか
- 寄稿
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トップマネジメント株式会社山下 淳一郎 氏
ドラッカー専門のコンサルタント