第四の問い われわれの成果は何か
お客様が望んでいるものを十分に理解できたら、次に行うことは「成果を決めること」です。成果を決めるために具体的な仕事を教えてくれているのが、ドラッカー5つの質問「第四の問い われわれの成果は何か」です。
真面目にやっていればそれでいい。そんな仕事は一つとしてこの世にありません。ありとあらゆる仕事が、なんらかの成果をあげるためにあります。
どんな成果をあげるためにどんな仕事をすべきか、といったことが明確でないまま漫然と仕事をしていては、たまたまうまくいくことはあっても、成果をあげ続けることはできません。
「仕事を終えた」ではなく、「仕事を終えたその先」に、何が起こったか。つまり、仕事の結果、組織の外で起こる変化を見ていかなければ、どれくらいお客様のお役にたっているかがわからなくなってしまいます。どれくらいお客様のお役にたっているかがわからなければ、喜んでもらう人を増やしていくことができなくなってしまいます。
成果は自分たちの行動を、使命の実現に向けさせてくれるものでなければなりません。喜んでもらう人を増やすために、あげるべき成果の内容を明らかにしてまいりましょう。
「売上」は成果ではない
御社の成果は何ですか? こうお尋ねすると、売上げ以外に何があるのですか? と聞き返されることがあります。売上だけを成果としてしまうと、社員さんは「売上げのためだけに仕事をしている」ことになってしまいます。
ドラッカー ~5つの質問~【第4回】顧客の価値は何かでもお伝えしたように、私たちはつい組織内部の事情や都合に関心が引っ張られてしまいます。ややもすれば、成果の内容も自分たちの事情や都合にしてしまいがちです。その典型的な成果の例が売上です。
どんな事業もお客様のために存在しています。ゆえに、お客様のためになって初めて成果と言えるのです。映画であれば面白かったと思ってもらうことであり、本であれば役に立ったと思ってもらうことであり、飲食店であれば美味しかったと思ってもらうことです。
成果とは、使命に対する貢献度合いであり、お客様に起こる良い変化の内容です。
何が、どのように、どれだけ良くなったかモニターする
何をもって成果とするか。それが決まったならばその成果をモニターしていきましょう。多くの会社が自分たちの事業を見直そうと思う時は売上が落ち始めてからです。
大事なことは、自分たちが事業を通して関わることによって、「お客様の何が良くなったか」、「お客様がどのように良くなったか」、「お客様はどれだけ良くなったか」といったことをモニターしていくことです。そうすれば、打つべき時に、打つべき手立てが打たれ、漠然と事業を進めてしまうようなことにはなりません。
成果をモニターしていくということはどういうこと? と思われたかもしれません。モニターとは呼んで字のごとく、レーダーでその状態を監視することです。必要な情報を正確に知るということです。
たとえば、飛行機がある目的地に向かって飛行するためには様々な情報が必要です。飛行機が安全な飛行をするには、天候、気温、気象、気圧、高度、緯度、経度、方位、走行距離、走行速度、振動、燃料、電力、油圧、室温、湿度、日出、日没、風向、風速、風力、磁気といった情報が必要です。
同じように、会社が事業を通じて喜んでもらう人を増やしていくために、様々な情報が必要です。必要な情報は、会社によって、事業によって、業種業態によって違います。使命に向けて事業が適切に進んでいるかどうかを見極めるためにあなたの会社はどんな情報が必要でしょうか。
正しい成果の設定が日々の仕事を使命に繋げる
部下の意識づけに悩まない上司はいません。それは、部下の意識に問題があるのではなく、何を成果としているか、その成果の内容に問題があるのです。
何を成果とし、何をモニターしていくか、その内容が働く人の関心事と行動を決定付けてしまうからです。
たとえば、上司に「今月はいくら売上をあげたのか?」と聞かれ続ければ、部下の頭の中は当然、売上だけになります。部下は、会社の使命を記憶として留めているだけで、会社の使命は自分の仕事にとって完全に関係のないものになってしまいます。
一方、上司から「今月は、どんなことをしてどれくらいお客様に喜んでもらえたか?」と聞かれ続けられれば、部下の頭の中は「お客様に喜んでもらうこと」でいっぱいになります。会社の使命は日々の仕事として実行され、使命は部下の行動に定着している状態になります。
あげるべき成果を明らかにし、その成果をモニターしていくことで、どんな仕事をどのように進めていけばいいのかを決めてください。
- 寄稿
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トップマネジメント株式会社山下 淳一郎 氏
ドラッカー専門のコンサルタント