1. HOME
  2. 事業戦略
  3. ドラッカー ~5つの質問~【第5回】われわれの成果は何か

ドラッカー ~5つの質問~【第5回】われわれの成果は何か

正しい成果を設定しモニターすることで、使命が日々の仕事として実行されていくという。本稿は、ドラッカー専門コンサルタントの山下淳一郎氏の説明のもと、ドラッカーの5つの質問を通してマネジメントを読み解く、全6回の連載の第5回目。働く人の関心事と行動を決定付ける「成果」について学ぶ。

ドラッカー ~5つの質問~【第5回】われわれの成果は何か
  1. 第四の問い われわれの成果は何か
  2. 「売上」は成果ではない
  3. 何が、どのように、どれだけ良くなったかモニターする
  4. 正しい成果の設定が日々の仕事を使命に繋げる

第四の問い われわれの成果は何か

お客様が望んでいるものを十分に理解できたら、次に行うことは「成果を決めること」です。成果を決めるために具体的な仕事を教えてくれているのが、ドラッカー5つの質問「第四の問い われわれの成果は何か」です。

真面目にやっていればそれでいい。そんな仕事は一つとしてこの世にありません。ありとあらゆる仕事が、なんらかの成果をあげるためにあります。

どんな成果をあげるためにどんな仕事をすべきか、といったことが明確でないまま漫然と仕事をしていては、たまたまうまくいくことはあっても、成果をあげ続けることはできません。

「仕事を終えた」ではなく、「仕事を終えたその先」に、何が起こったか。つまり、仕事の結果、組織の外で起こる変化を見ていかなければ、どれくらいお客様のお役にたっているかがわからなくなってしまいます。どれくらいお客様のお役にたっているかがわからなければ、喜んでもらう人を増やしていくことができなくなってしまいます。

成果は自分たちの行動を、使命の実現に向けさせてくれるものでなければなりません。喜んでもらう人を増やすために、あげるべき成果の内容を明らかにしてまいりましょう。

「売上」は成果ではない

「売上」は成果ではない

御社の成果は何ですか? こうお尋ねすると、売上げ以外に何があるのですか? と聞き返されることがあります。売上だけを成果としてしまうと、社員さんは「売上げのためだけに仕事をしている」ことになってしまいます。

ドラッカー ~5つの質問~【第4回】顧客の価値は何かでもお伝えしたように、私たちはつい組織内部の事情や都合に関心が引っ張られてしまいます。ややもすれば、成果の内容も自分たちの事情や都合にしてしまいがちです。その典型的な成果の例が売上です。

どんな事業もお客様のために存在しています。ゆえに、お客様のためになって初めて成果と言えるのです。映画であれば面白かったと思ってもらうことであり、本であれば役に立ったと思ってもらうことであり、飲食店であれば美味しかったと思ってもらうことです。

成果とは、使命に対する貢献度合いであり、お客様に起こる良い変化の内容です。

何が、どのように、どれだけ良くなったかモニターする

何が、どのように、どれだけ良くなったかモニターする

何をもって成果とするか。それが決まったならばその成果をモニターしていきましょう。多くの会社が自分たちの事業を見直そうと思う時は売上が落ち始めてからです。

大事なことは、自分たちが事業を通して関わることによって、「お客様の何が良くなったか」、「お客様がどのように良くなったか」、「お客様はどれだけ良くなったか」といったことをモニターしていくことです。そうすれば、打つべき時に、打つべき手立てが打たれ、漠然と事業を進めてしまうようなことにはなりません。

成果をモニターしていくということはどういうこと? と思われたかもしれません。モニターとは呼んで字のごとく、レーダーでその状態を監視することです。必要な情報を正確に知るということです。

たとえば、飛行機がある目的地に向かって飛行するためには様々な情報が必要です。飛行機が安全な飛行をするには、天候、気温、気象、気圧、高度、緯度、経度、方位、走行距離、走行速度、振動、燃料、電力、油圧、室温、湿度、日出、日没、風向、風速、風力、磁気といった情報が必要です。

同じように、会社が事業を通じて喜んでもらう人を増やしていくために、様々な情報が必要です。必要な情報は、会社によって、事業によって、業種業態によって違います。使命に向けて事業が適切に進んでいるかどうかを見極めるためにあなたの会社はどんな情報が必要でしょうか。

正しい成果の設定が日々の仕事を使命に繋げる

正しい成果の設定が日々の仕事を使命に繋げる

部下の意識づけに悩まない上司はいません。それは、部下の意識に問題があるのではなく、何を成果としているか、その成果の内容に問題があるのです。

何を成果とし、何をモニターしていくか、その内容が働く人の関心事と行動を決定付けてしまうからです。

たとえば、上司に「今月はいくら売上をあげたのか?」と聞かれ続ければ、部下の頭の中は当然、売上だけになります。部下は、会社の使命を記憶として留めているだけで、会社の使命は自分の仕事にとって完全に関係のないものになってしまいます。

一方、上司から「今月は、どんなことをしてどれくらいお客様に喜んでもらえたか?」と聞かれ続けられれば、部下の頭の中は「お客様に喜んでもらうこと」でいっぱいになります。会社の使命は日々の仕事として実行され、使命は部下の行動に定着している状態になります。

あげるべき成果を明らかにし、その成果をモニターしていくことで、どんな仕事をどのように進めていけばいいのかを決めてください。

事業戦略カテゴリのオススメの記事
Brexitは日本の「ウェイクアップコール」経済成長著しい東欧に進出するチャンス

英国は2020年1月31日、EU(欧州連合)を離脱した。Brexit (英国による欧州連合からの離脱)は、日本の経済・金融および企業活動にどのような影響を及ぼすのか。本連載の第1回目は、日本企業の対欧州戦略に関するポイントと今後の英国・EU・日本の関係について、マルティン・シュルツ氏に解説してもらった。

【特別対談】自動車保険のDX最前線~顧客の「面倒だから後回し」の解消へ CX起点による価値創造とコスト低減

デジタル技術で事業変革を促す「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の注目度が、損害保険分野でも高まっている。中でも、自動車保険では、DXを有効活用して業績を伸ばす通販型のネット系保険会社の存在感が増している。CX(カスタマー・エクスペリエンス)を起点とした業績拡大につなげるDX戦略のポイントを、イーデザイン損害保険取締役社長の桑原茂雄氏と、日新火災海上保険顧問の星野明雄氏が語り合った。

地銀は中核ビジネスの貸出収益の向上を

マイナス金利政策により貸出金利の水準は今も低く、地方銀行は苦境に立たされている。厳しい経営環境が続く中、生き残りをかけて再編や異業種との提携が広がる国内の地域金融ビジネスの今後についてY&P法律事務所の細田隆氏に話を伺った。

科学技術の社会実装と産官学のデータ連携構築

国際競争や経済成長のために科学技術の振興は欠かせない。日本の科学技術政策の方針を示す「科学技術基本計画」を主軸に、各省庁による研究開発プロジェクトや成長戦略が数多く実施されている。本連載の初回は、世界に先駆けて提唱した「超スマート社会」を実現する「Society 5.0」などを中心に、産官学で目指す日本の未来の社会について、内閣府に話を聞いた。

山下 淳一郎 氏 【 寄稿 】
トップマネジメント株式会社
ドラッカー専門のコンサルタント

山下 淳一郎 氏

The Finance をフォローする
注目のセミナー すべて表示する