1. HOME
  2. 事業戦略
  3. ドラッカー ~5つの質問~【第1回】企業に不可欠な5つのこと

ドラッカー ~5つの質問~【第1回】企業に不可欠な5つのこと

マネジメントの父と呼ばれるピーター・ドラッカー。その哲学と理論は、今なお多くの経営者を動かし、企業の成長を支えている。本稿は、ドラッカー専門コンサルタントの山下淳一郎氏の説明のもと、ドラッカーの5つの質問を通してマネジメントを読み解く、全6回の連載の第1回目。企業を成長させるための5つの質問に迫る。

ドラッカー ~5つの質問~【第1回】企業に不可欠な5つのこと
  1. 事業には目的が必要
  2. 事業の目的は喜ぶ人を増やすこと
  3. 企業には2種類のお客様が存在する
  4. 究極のマネジメント
  5. 主語を「われわれ」にする
  6. ドラッカー5つの質問

事業には目的が必要

私たちは社会の中で生きています。社会とは人と人が関わりながら生きていく場です。私たちが住む社会は、ほんの200年前まで一つ一つの家族が生活を立てるために代々受け継いできた仕事をして暮している社会でした。いわゆる「家業からなる社会」でした。

現在は、事業を提供する会社に人が集まり、人と人が一緒に仕事をしている社会になっています。私たちは今、「事業からなる社会」に生きています。

私たち人間は、常に何かを考えずにはいられません。人間は今よりも少しでも向上したいという意思を持った精神的な生き物だからです。

仕事は生活さえできればどんな仕事でも構わないという人はいないと言っていいでしょう。仕事は生活の手段としてだけではなく、人生を形作る重要なものになっています。仕事に何らかの意味を求めて、価値ある仕事をしたいと誰もが望んでいます。

仕事に価値を求める人間が集まって、力を合わせて仕事をしようというのですから、事業は「何のため」という目的が必要です。

事業の目的は喜ぶ人を増やすこと

1954年、ピーター・ドラッカーは「事業の目的は顧客の創造である」と言いました。

あなたは「事業の目的は顧客の創造である」ときいてどう思われたでしょうか。企業の営業部門で聞こえてくる「新規顧客の開拓」と思われた方もいるかもしれません。顧客の創造というと難しく聞こえますが、「事業の目的は喜ぶ人を増やすこと」ということです。

もちろん、会社は利益を出さなければなりません。どんな良い会社であっても利益がなければ生きていくことはできません。人間が生きていくために栄養が必要であっても栄養を摂るために生きているわけではありません。

それと同じように、会社も生きていくために利益が必要であっても利益を得るために事業を行っているわけではないのです。

企業には2種類のお客様が存在する

顧客の創造という言葉は、厳しい現実を教えてくれています。病院は患者さんが一人もいなくなれば存在できません。学校は生徒がいなくなったら廃校になってしまいます。同じように、会社もお客様がいなくなったら生きていけません。あらゆる組織がお客様に生かされているのです。

したがって、お客様に喜んでもらえるものを考え、お客様に喜んでもらえる商品やサービスを提供し、お客様に喜んでもらえる仕事をしよう、ということは、きれいごとではなく、ごく当たり前のことなのです。

もう一人の忘れてはいけない大切なお客様がいます。それは、社員さんです。社員さんはその事業の目的に共感し、その事業を成功させる、大事な、大事な協力者です。

どんなに優れた人であっても、一人でできることはおのずと限界があります。協力者がいるからこそ、事業を事業として進めていくことができ、事業は喜んでもらえる人を増やしていくことができるのです。

仮に、社員さんが事業の目的に共感もせず、仕事に価値を感じていなければ、事業は価値あるものになりません。そこに社員さんの共感がない限り、自発性も創意工夫も生まれず、優れた仕事にはなりません。

会社には、二種類のお客様がいることがおわかり頂けたと思います。一人は、会社の外にいて商品やサービスを使ってくれる人です。もう一人は、会社の中にて会社の仕事をしてくれる人です。会社は、二種類のお客様がいなければ成り立ちません。

究極のマネジメント

「事業を提供する一つ一つの会社が、喜んでくれる人を増やしていけばどんどん良い社会になっていく」。これがドラッカーの考えの根底にあるものです。

企業が事業を通して社会の役に立ち、組織で働く一人ひとりが個性ある一人の人間として、喜びを感じることができる社会に必要なものこそ、「マネジメント」であると主張したのです。

マネジメントというと、管理することという風潮が根強く残っていますが、「管理しなくていいようにすることがマネジメント」です。

管理しなくていいようにするということは、「そこで働く一人ひとりが、何をやるべきか決まっていない状況であっても、自ら何をやるべきかを考え、自ら行動を起こすことができ、働く一人ひとりの総和を超える総和の力を生み出せている状態のこと」です。

主語を「われわれ」にする

ドラッカーは難しい。多くの方がそう言います。難しいのは、ドラッカーではなくあなたの事業です。さらに噛み砕いていうならば、難しいのはあなたの組織です。

組織で事業を進めている以上、組織には、様々な部署があり、様々な仕事があり、様々な責任があり、様々な役職があり部署、仕事、責任、役職が異なれば、見えるものも違いますし、見ているものが違って当然です。

働く人同士が話し合うときに、主語が、「わたし」であっては、お互いの考えが交わることはありません。ではどうすればいいのでしょうか。主語を、「われわれ」にすれば、組織全体に立って考えざるを得なくなります。そして、組織全体に立った発言にならざるを得なくなります。

お互いが、組織全体に立って考え、組織全体に立った発言になるとき、考えの接点が生まれ、こうしてはじめて「われわれ」の考えを創り出すことができ、仕事上の協力関係を生み出していくことができるに至ります。

今日から、社内で何か話し合いをされる時、「主語をわれわれにしよう」と申し合わせをして進めてください。仕事上の協力関係を生み出す第一歩になります。その小さな一歩は、きっと大きな前進となるでしょう。

ドラッカー5つの質問

では、具体的に何を話し合えばいいのでしょうか? ドラッカーはその仕事の中身を丁寧に教えてくれています。それが、ドラッカー5つの質問です。

ドラッカーはこう言っています。「これら5つの質問は、正面から答えていくならば、必ずや、各位のスキルと能力とコミットを深化させ、あるいは向上させていくはずである。ビジョンを高め、自らの手で未来を築いていくことを可能にするはずである」。

  • 第一の問い われわれの使命は何か
  • 第二の問い われわれの顧客は誰か
  • 第三の問い 顧客の価値は何か
  • 第四の問い われわれの成果は何か
  • 第五の問い われわれの計画は何か

ドラッカー5つの質問とは、喜ぶ人を増やすために必要なことが質問形式でまとめられているもので、その主語はすべて「われわれ」になっています。あなたの会社の繁栄のために、そして、あなたとあなたの部下のために、あなたとあなたの部下がこれら5つの質問に取り組まれ、未来を築いていかれることを心から願っています。

それでは、次回からドラッカー5つの質問を詳しくお伝えしてまいります。

事業戦略カテゴリのオススメの記事
アジアに対するインフラ輸出推進戦略は日本経済の切り札となるか

経済成長に伴うインフラ整備の需要が、アジアを中心に高まってきている。日本政府も成長戦略の一環としてインフラ輸出を推進しており、受注実績も伸びてきている。中国やインドなどの新興国の参入による競争の激化や、民間資金の導入の必要性など、課題も残されている中、いかにインフラ輸出戦略を進めるのか。概要を読み解く。

インバウンド消費が変わる?爆買い終了とインバウンド観光の未来

2015年後半以降、訪日客によるインバウンド消費の減速感が強まっている。訪日客数が底堅く推移する一方、一人当たり支出の減少が顕著だ。この背景には、円安傾向の一服や免税対象品拡大などの政策効果の一巡がある。今後の一人当たり支出の底上げに向けて、買物だけでなくサービス消費の取り込みがカギとなる。

スマート農業とは?IoT×農業が変えるアグリビジネスの未来

スマート農業が日本の農業を救うかもしれない。通信機器と小型センサーで最適な時期を見極め自動で収穫をする収穫ロボットや、様々な地形で活躍する農業用ドローン、農地を自動で走る自動運転農機、温室を一定の環境に保つ環境制御技術など、スマート農業は農業の生産性に革命をもたらす技術となりえるのか。本稿は、その概要と課題に迫る。

企業のためのデジタルマーケティングのすすめ-潮流と全体像を学ぶ

デジタルマーケティングは、ただホームページを構えるだけの時代から、顧客一人ひとりを認識し、その生涯価値を高めるツールへと進化した。オムニチャネルを活用してカスタマーエクスペリエンス・ジャーニーを創出し、ビッグデータを駆使して効率的な施策を実施する。本稿では、その全体像をわかりやすく解説する。

山下 淳一郎 氏 【 寄稿 】
トップマネジメント株式会社
ドラッカー専門のコンサルタント

山下 淳一郎 氏

The Finance をフォローする