高い成果を上げる保険企業から学ぶ未来のオペレーションモデル

【講演者】
ServiceNow Japan合同会社
アカウントエグゼクティブ
内田 瑛一 氏

消費者の49%が重要だと感じていること

ServiceNow Japanのアンケート調査で「顧客サービスの最も重要なポイントは」という問いに対して、実に49%の顧客が「迅速な対応」と答えている。およそ2人に1人が、スピーディな対応をもってサービスを提供することが大切だと考えていることになる。世界情勢ではすでに、自社のオペレーションモデルを変えながら業務を自動化することでサービス提供のスピードアップを図っている。日本も将来的には同様の施策が広がっていくだろう。

総務省発行の情報通信白書でも、デジタル化において日本が世界各国に対して後れを取っているのは、ICTの投資が少し低迷していることが要因の一つだと指摘されている。これまでの既成概念を越えるオペレーションモデルに変えた上で、支出を抑えるポイントと投資サービスをより良くするポイントの両方に対応できる取り組みを推進していくことが必要だ。

厳しい競争の中で起きているデジタル変革疲れ

金融業界の中では、規制緩和やテクノロジーの進化によって、思わぬ脅威にさらされる状況が生まれている。障壁が低下したことで、他業種からの新規参画が相次ぎ、流動性リスクも変容するなど、さまざまなプレッシャーを抱えながらDX化の施策検討を進めているのに、なかなかうまくいかずに疲弊している状況の企業もあると聞く。この状況を打破するには、ビジネスの前線である顧客接点で正しく状況を把握し、顧客の期待を理解していくことが必要だ。

競争力を高めるデジタル化推進の目玉施策の一つとして、顧客接点における付加価値(CX)に注目し取り組まれている企業もいるだろう。だが、日常で使われる顧客サービスを思い浮かべると、CX系の施策で期待通りの成果を上げているブランドや企業は一部で、実際はそれほど多くはないと予想している。

金融機関のデジタル化施策でよくある課題

この10年間で多くの金融機関が顧客接点に着目し、問い合わせ対応でデジタル化施策を進めたが、CXの投資に集中しすぎるあまり、イノベーションのジレンマに陥ってしまう企業が多かったのも事実だ。

ビジネス課題を解決しようとCRMなどのシステムを導入して問い合わせや依頼をしやすくしたのはいいが、実際の業務で適用して運用しようとすると、一つのシステムで完結することは少なく、各システムで承認作業を行わないと次に進まず、それぞれで問い合わせと補足確認作業が発生している。結局、まだまだ手作業で処理するアナログの部分が残っていたり、紙を介した対応を進めていたりすることはないだろうか。

こうした事例は、CRMへの過度な期待と部分最適によるシステムのサイロ化によって引き起こされたものであり、後続処理に手作業が残されたままブラックボックス化してしまったケースなのだろうと予想している。

補足や運用面は人がカバーする体制のままでは、本質的な迅速化は進まない。一部の優秀な社員のスキルや経験に依存した人海戦術でバックオフィス業務を成り立たたせるため、属人的で一貫性のないプロセスをたどってしまう。本質的な課題解決に至っていないので、「顧客体験がむしろ低下した」と評価されてしまうケースが少なくないのだ。

成長戦略に適応するカギはCXとEXの両立

CXを向上させるには、従業員体験いわゆるEXの部分も改善していく必要があるだろう。従来の受動的で、企業の利益を主軸とした個人プレーによる顧客接点は、コスト削減を優先した守りの施策には有効だが攻めの施策には向かない。

全社をあげて人間を主体とした発想で、積極的にチームプレーを実践していく。そうした攻めの施策に転じ、CXとEXの両輪が相乗的に作用して初めて、顧客接点も良くなっていくと推測している。実際、厚生労働省が公表している労働経済の分析の結果では、顧客満足度の上昇とワーク・エンゲージメント・スコア、いわゆるEXのスコアには正の相関があるという結果が出ている。

EXを向上させることがCXの向上にも寄与するのであれば、まさしくここにチャンスがあると言えよう。特に改善にフォーカスすべき領域は「スピード」「オペレーション」「透明性とエンゲージメント」の3つだ。

まずは、クレームや問題の解決にかかる時間を短縮する。スピーディな対応はエンドユーザーが根強く求めていることだけに、改善すれば効果は高い。さらに、オペレーションの改善を図れば、EXの向上に大きく寄与する。最終的に透明性とエンゲージメントを意識することで、組織の調和と理解、連携を高めて顧客ケア文化の発展につながるだろう。

どのようにオペレーションモデルを変えていけばビジネスに貢献できるのか

CXとEXの両輪を相乗的に作用させるためには、どのようにオペレーションモデルを変えればいいのだろうか。

前年対比60%以上の高い成果を上げている金融機関が行った施策に着目してみると、真のデジタル化を先行していることが分かった。業績上位の金融機関がカスタマーファースト以上に投資している分野をひも解くと、「システム近代化」「業務のデジタル化」「部門横断の社内の連携強化」「リスク管理の一元化」だと分かる。この4領域におけるオペレーションモデルの変革がキーファクターだと考えられる。

ServiceNowが提唱する「システム近代化」は、戦略的テクノロジートレンドの一つであるハイパーオートメーションを駆使した解決策だ。RPAなどに代表されるオートメーションは、テクノロジーを応用して重要なタスクを自動処理する手法だ。部門内やチーム内など、小規模なプロセスごとに行われる。これに対してハイパーオートメーションは、複数の自動化ツールやAIなどを組み込んで包括的に自動化の取り組みを構築する手法だ。まだ日本ではなじみが薄いが、より少ない労力でより多くのことを行える環境を構築すると同時に、業務の見える化を高めて、重要なタッチポイント全てにおいて従業員の行動を最適化するのに役立つ技術だけに、デジタルビジネスを推進する企業にとって、次の段階に進むための重要なテクノロジートレンドだとみなされている。

ハイパーオートメーションを実現させると、社内にまたがる業務プロセスが整流化する。依頼主から要望を受け付けた後は、徹底的に無駄を省いて自動化し、効率的なワークフローの流れを作るのが、ServiceNowのソリューションだ。効率的なワークフローを実現させると、ServiceNow上で一連のプロセスが流れるので、タスクの数が圧倒的に減少する。誰がどのタイミングでどのような作業をしているのか、滞っているタスクは何かなど、流れが明確に見えるようになるので、共通認識の中で作業を行えるようになる。その結果、問題解決までの時間が大きく短縮される。

ハイパーオートメーションを実現させることで、先述した「スピード」「オペレーション」「透明性とエンゲージメント」の3つの領域の改善が一度に行われるため、相乗効果でCXとEX向上にもつながると考えている。

ServiceNow導入企業が実践するオペレーションモデル変革とその効果

「Moments that matter(MTM)」は、金融サービスに対してエンゲージメントの可否に関わる体験の瞬間のことで、特に注力すべきポイントは「知りたい」「申請したい」「解決したい」「ケアしてほしい」という4点だ。これら4つのMTMを適切にマネジメントすることで、付加価値が創造される。ServiceNowでも重視している。

ServiceNowでは、既に使用している基幹システムやツール群(System of Record)と連携して、オーケストレーションによって業務プロセスを統合。統一されたユーザーインターフェースで業務を進めるSoE(System of Engagement)を実現する。

例えばコンタクトセンターでの事務業務での活用イメージ例を紹介しよう。コンタクトセンターに連絡してくる依頼主の立場にたって考えると、人のサポートを必要としている場合もあれば、情報さえあれば自己解決できる場合もある。自己解決できる場合は、主要な最低限のところでデジタル対応にワークフローを分岐させれば、必要なときだけコンタクトセンターで有人対応できるようになる。

有人対応が必要な場合も、過去に同じような問い合わせがあれば、担当者に示すことでスピーディに解決策を示すことができるし、電話対応後に得られた知見を内部に蓄積して機械学習させれば、次の業務に生かせるようになる。

このように、受付から作業完了まで、従業員を徹底サポートする未来のオペレーションモデルを適用した企業は、運用コスト削減、案件処理時間の短縮など、業務改革を実現させている。

◆講演企業情報
ServiceNow Japan合同会社:https://www.servicenow.com/jp/