リアルタイムデータ統合で変革(DX)を実現
~データ仮想化手法と保険業界における実例~

【講演者】
日鉄ソリューションズ株式会社
金融ソリューション事業本部 エキスパート
中谷 祐哉 氏

【講演者】
Denodo Technologies株式会社
プリセールス・エンジニア
三浦 大洋 氏

保険DXを支える論理データファブリック

人口減少社会を迎えている日本は、市場競争で秀でるために、顧客1人ひとりに対してより付加価値の高いサービスを提供することが求められている。契約条項をはじめとした大量のデータを保有する保険会社では、いかにデータを活用してサービスに反映させていくかが競争力を左右する時代になっているともいえるだろう。

従来は大規模な統計データに基づいたマス向けの商品設計が多かったが、今では個人の健康データに基づいてカスタマイズされた商品設計により、個人個人に最適な保険料で商品を提供するという多様性が求められる傾向が見受けられる。

最適なカスタマイズを支えているのは、データ基盤だ。データを利用するのは、営業部門、アンダーライティング部門、企画部門、管理部門などさまざまで、それぞれ必要なデータは異なるが、ビジネスに反映させるには、自分のほしいデータの要件を調整したり、スピーディに抽出・提供したりすることが望ましい。データがサイロ化して、自部門のデータは見られるが、他部門のデータは閉じられているような状態では、有効なイノベーションが促進されづらいだろうと推測できる。

データ利活用に求められる3要素

保険DXを実現するためのデータ利活用に求められる3要素を「横断的なデータ収集」「データ価値の向上」「データの民主化・管理」と定義した。

「横断的なデータ収集」は、部門ごとに個別最適化されていながらも、基幹系システム、業務システム、データウェアハウスなどにデータが存在していることで、部門の壁を越えて横断的にデータを収集し、組み合わせて分析したり、業務利用できたりする状態のことだ。

「データの価値向上」は、主にデータを入手するまでのスピードだ。利用目的に応じて使いやすく加工されたデータモデルをタイムリーに利用者に提供することで、データ自体の価値も高められていく。

「データの民主化・管理」とは、データ管理の柔軟性だ。セキュリティやガバナンスの観点で、データを誰にでもオープンにすることは難しい。しかし、厳重に隠してしまうと、いざ使いたい時にデータが探しづらくなる。そこで、データの提供範囲を限定したり、一部マスキングしたりするなど管理設定を整えられるようにするとともに、利用者が求めるデータを自己裁量で自由に探し出せるようにするなど、管理面での柔軟性も重要なポイントだ。

従来型のデータ提供アプローチと論理データファブリック

データの活用は、データベースからいかにほしいデータをスムーズに抽出できるかがカギになる。従来型の物理的なデータ提供アプローチでは、データ蓄積層に保存された源泉データを元にバッチ処理でデータを抜き出し、データレイクやデータウェアハウスなどにコピーしながら整えて、データセットを作り上げる多段構成になっている。バッチ処理を繰り返すため、データが大量になるほどリアルタイム性が失われやすい。また、開発や変更に時間がかかり、データのアクセスルートも煩雑化してしまうことから、DXに用いるには不向きとされる。

一方、論理データファブリックは「データと利用者を、共通層を通じて疎結合につなぐためのデータ統合の概念」と定義されるもので、データソースが複数ある場合でも全てのデータソースから全ての利用者に一つの共通層を通じて提供可能にする「シングルポイント化」、データソースとのつながりを保ちながらも容易に追加や修正を加えられる「疎結合化」、データ統合における効率性、堅牢性、柔軟性を満たす「多様な要素」が特徴となっている。ユーザビリティ、自動化、セキュリティ、アジリティなどの要素も兼ね備えている。柔軟性のあるデータ活用が求められるDXにおいては、データソースの分散や多様化も許容して、論理的にデータを統合できるアプローチが望ましい。それを実現するのが論理データファブリックだ。

全てのデータを一つのプラットフォームでカバーするDenodo

Denodoはデータ仮想化技術を駆使して、論理データファブリックを実現するプラットフォームだ。源泉となるデータソースは非構造化データのままでも、クラウドにバラバラな状態で点在していてもよく、利用者側の多種多様なニーズに応えてデータを提供する。論理データファブリックの中で、データソースと利用データがN対Nの関係になっても、論理的に統合することができる仕組みだ。

Denodoでは、バックエンドの全てのデータソースに対して、透過的なPULL型でアクセスできる。物理的にデータをコピーして集めるのではなく、データ自体は元の状態のまま、データが統合されている状態に見せるテクノロジーなので物理的なデータコピーなどはせず、必要に応じてデータ提供層に利用者がデータを取りに行くオンデマンド方式なので、提供までのリードタイムを大幅に削減でき、処理を高速化できる。

それぞれの利用サイドとデータソースに対してこの横断的なデータ提供を導入するというようなところで、今までだとなかなかリーチしづらかった他部門のデータにも容易にアクセスする形がとれるので、データ利用の網羅性が高まり、イノベーションの促進にも寄与しやすくなる。

論理データファブリックによる保険DXの下支え

論理データファブリックのような柔軟性の高いプラットフォームは、保険業務の高度化を支えるデータ基盤となるだろう。

例えば、医療データを活用した引受基準緩和や給付範囲の拡大を踏まえた「新商品の開発」、成約率を高めるために顧客1人ひとりに最適な保険商品やサービスをレコメンドする「1to1マーケティング」、繁忙期におけるアンダーライティングの業務量予測をした上での「人員配置の最適化」、コスト削減のために支社やオフィスを統廃合、顧客の利便性を考えた営業時間の見直しなどの「店舗施策の検討」、コンプライアンスの強化、営業体制の強化や維持にも、Denodoのような論理データファブリックは役に立つだろう。

日鉄ソリューションズはDenodo Technologiesの国内第1号の公式パートナーであり製品の紹介や導入支援、ソフトウェア販売、日本語による製品保守サポートなどを提供している。

最新データ統合手法であるDenodo

ビジネスではデータの重要性は高く、多くの企業が長年にわたってデータ活用に取り組んできた。その結果、データ活用基盤、データ管理のマネジメントの仕組みの構築は進んだが、プロジェクトが発足するたびに新たなデータソースや利用シーンが追加されるため、非常に複雑なシステム構成ができあがってしまうことも多い。

データが増えるにつれ、新たなデータ創出やデータ提供の時間がかかる。データのコピーが複数の場所に存在するため、目的のデータが見つかりづらいだけでなく、信用性も薄れてしまっている。複雑なシステムになったがゆえに、監査対応などのデータガバナンスに関する取り組みが実現しづらいなど、いくつもの課題が浮かび上がってきた。

このような課題への処方箋として、Denodoは、分散しているデータはそのままに、物理的なデータをこれ以上増やすことなく、データを抽象化して、論理的、仮想的に統合する論理データファブリックを提唱。データを論理的に統合するという新しいアプローチでデータ活用を効率化し、データ主導のビジネスを推進する。

さまざまなデータソースが一元的に管理されるため、新たなデータ活用ニーズへの対応や、データガバナンスを迅速に強化することができる。Denodoはデータを統合するだけではなくデータマネジメントを広範囲にサポートするソリューションとなる。

Denodoでデータ活用のあらゆる課題を解決

すでに多くの顧客がDenodoを使ったデータ活用を推進している。先ほどの事例にもあった通り、大手金融機関の実績も多い。

金融機関のユースケースではリスク管理、顧客マネジメント、マーケティングシステム移行など、データを使用する多くの局面で、Denodoが使われている。データを論理的に結合するだけの論理データファブリックは、構造がシンプルなため、システム運用の負荷が小さく、処理スピードは格段に早くなる。データは扱いがセンシティブで、データのセキュリティやガバナンスも重要。源泉データをいじることなく、論理的に結合して見せているだけなので、データの信頼性はそこなわれない。

今後、新たなテクノロジーやユーザーのニーズなどによりビジネスの状況は変化し続け、そのスピードも速くなることが見込まれる。そうした変化にすぐに対応できることも、大きなポイントで、環境の変化にも柔軟に対応できる。データ活用のアプローチの一つに、論理データファブリックがあることを覚えておいてほしい。

◆講演企業情報
日鉄ソリューションズ株式会社:https://www.nssol.nipponsteel.com/ss/detail/denodo_platform.html
Denodo Technologies株式会社:https://www.denodo.com/ja