「データ活用がもたらす真の顧客理解と顧客エンゲージメントの向上」

栢菅 裕介 氏
【講演者】
トレジャーデータ株式会社
Beyond Marketing部門 セールスディレクター
栢菅 裕介 氏

<当社の紹介>

当社は2011年に日本人3名によってシリコンバレーに設立され、日本でのビジネスにも早くから注力してきた。当初はビッグデータプラットフォームとしてソリューションを提供していたが、2016年から顧客データに特化した「CDP」というソリューションを展開し、市場自体を牽引してきた。日本では銀行、保険会社等の金融機関を含め300社を超える企業様にご利用いただいている。

<CDPが求められる理由>

昨今、CX(顧客体験)の重要性が叫ばれるなか、顧客を正しく理解し、エンゲージメントを向上していくことが企業にとって最重要課題となっている。消費者行動は大きく変化し、顧客接点も多様化している。しかし、顧客の接点ごとの行動ログや決済情報、アクセスログ・アプリログ・購買情報といった様々なデータが、別々の場所に格納されているのが現状ではないだろうか。この状態では、必要な情報が分断され、顧客理解が進まず、顧客体験の向上は実現しづらい。
このような状況から「CDP」を活用した顧客理解が求められている。

<CDPとはどのようなものか>

CDPは「Customer Data Platform」の略称である。自社が持つ顧客データを収集・統合するための基盤だ。トレジャーデータのCDPは、簡単にデータを収集して一元管理し、素早く分析して施策に活用できる。企業内のシステムから当社で用意したコネクタを通してデータを簡単に収集できる。口座や顧客との取引データ、営業担当者の商談履歴、Web・アプリの閲覧履歴など、あらゆるデータの収集・統合が可能だ。これらのデータを分析することで、ある商品の成約率が高そうな顧客にキャンペーンなどの情報を届けるといった施策を展開できる。施策のためのコネクタも当社で既に用意しているため、自社で運用するより圧倒的に効率的だ。

CRMや、DWHでのデータ統合とCDPの違いは、CDPは全方位・立体的な顧客理解ができることだ。ある一時点のデータだけでは捉えられない顧客の興味・関心や嗜好を高解像度で理解可能だ。

<保険業界にみる、求められるコンタクトセンター像>

ここからは、保険業界での4つの課題から、どのようなコンタクトセンター・カスタマーサポートが求められるのか、そして当社のCDPがどのように貢献できるのか、ご紹介しよう。

まず、主な4つの課題として、高齢化・人生100年時代、若年層へのアプローチ、既存ビジネスの変容・縮小、顧客接点の多様化が挙げられる。こうした課題を解決する、これからのコンタクトセンター像をみていく。

  • 課題1. 高齢化・人生100年時代
    高齢化・人生100年時代に向けて、より長い期間に渡って顧客を把握し、ライフステージに応じたオファーやLTVを意識したエンゲージメント向上が必要だ。顧客を全方位から理解した対応が求められる。
  • 課題2. 若年層へのアプローチ
    若年層へのアプローチに関しては、デジタルチャネル等の活用で、従来と異なる顧客獲得手法の確立が必要だ。コンタクトセンターもプロフィットセンター化を図り、顧客獲得の重要なチャネルとなることが必要だといえる。
  • 課題3. 既存ビジネスの変容・縮小
    既存ビジネスの変容・縮小については、新たなビジネスモデルやインシュアテックへの対応強化が急務だ。増加、変化し続ける情報やナレッジに対応していくためには、センター全体でのナレッジ・スキルの向上が求められる。
  • 課題4. 顧客接点の多様化
    顧客接点が多様化しても、接点ごとに応対のバラつきがあってはならない。全ての接点の把握と一貫した応対、応対品質の均質化が必要だ。

さらに、コンタクトセンターの役割は広がっており、今後は顧客接点を包括的に管理し、コンタクトセンター起点で顧客一人ひとりに適した対応を行うことが求められる。商品の認知・探索、契約、エンゲージメントといったカスタマージャーニー全体に関して、コンタクトセンターが司令塔のような役割を果たす必要があるのではないだろうか。

では、当社のCDPでは、これらの課題がどのように役立つか、ご紹介しよう。

<カスタマーサクセス実現のためのプラットフォーム「Treasure Data CDP for Service」>

トレジャーデータのCDPには現在、コンタクトセンター向けに主に5つの機能が追加されている。

  • 機能1.:顧客プロファイル / ステータスの可視化
    これは、顧客情報を全方位から把握することができ、既に活用中のCRMの中で、顧客プロファイルやステータスなど、リアルタイムのより詳しい情報を付加した上で可視化できる。
  • 機能2.:機械学習によるLTVや解約確率の予測
    CDPに備わる機械学習により、対象の顧客が将来ロイヤルカスタマーになるのか、それともサービスの解約可能性が高いのかなどを予測し、オペレータに提示する機能だ。オペレータは顧客に対して、より適切な応対が可能になる。
  • 機能3.:1to1の最適なルーティング(分配)
    コンタクトセンター業界では、既に実施されてるIVR(Interactive Voice Response)によるルーティングが、より詳細な1to1でのルーティングが可能だ。CDPが購買意欲が高いと判断した顧客には販売が得意なスキルセットがあるオペレータにルーティングするといったことが可能になる。
  • 機能4.:次に実行すべき最適なアクションの提示
    オペレータが顧客に応対する際、商品レコメンドや、応対スクリプトなど、「次に実行すべき最適なアクション」をオペレータに提示する機能だ。
    オペレータはよりスムーズに応対できるようになり、ストレスの軽減にも繋がる。さらに、商品の成約率および顧客満足度の向上も見込める。
  • 機能5.:自然言語処理によりVOC(顧客の声)を活用
    電話応対の内容などをテキスト化したデータ、いわゆるVOC(顧客の声)を活用し、コンタクトセンターのオペレータのナレッジ作成や、FAQの更新に役立てることができる。また、商品やサービスに対する新たなインサイトを発見し、マーケティングや、商品開発部門へフィードバックすることも可能になる。

<CDP for Serviceが可能にするサポート例>

Treasure Data CDP for Service(以下、CDP for Service)が可能にするカスタマーサポートのケースを3つご紹介する。

1.データ分析(機械学習での予測)による成約率の向上
顧客からの問い合わせに応対する際、分析データをもとに、顧客の成約確率が高い商品レコメンドと最適なスクリプトを自動表示する。さらに顧客の要望に合わせて適切なチャネルでフォローアップすることもでき、購入・成約へと繋げる。

2.自動ルーティング
顧客の契約・行動・応対等の履歴からステータスを常に刷新し、顧客ID単位で付与する。発信者番号から適した対応レベルのオペレータへルーティングし、適切な対応を実施することで、購買・成約を促進する。チャットボットから有人チャットやオペレータへ繋ぐといった際にも、問い合わせ内容やステータスに応じて最適なオペレータに繋ぐといったことも可能だ。

3.顧客の行動ログにもとづく自動アラート
これは、機器稼働ログや顧客によるサイト・FAQの閲覧ログをCDPに収集し、機器の不調時や顧客の行動ログからトラブルを検知し自動でコンタクトセンターの担当者へアラートを発信する、というものである。アラートによって顧客から問い合わせが来る前にトラブルを把握し、先手でサポートをすることが可能だ。プロアクティブなお客様サポートを実現し、満足度向上、ロイヤルカスタマー化、LTV最大化へと繋げることができる。

<EX(従業員体験)向上にも貢献するCDP for Service>

CDP for ServiceはCX(顧客体験)だけでなく、EX(従業員体験)向上にも貢献可能だ。顧客プロファイル/ステータスの可視化により、顔の見えない相手の状況を詳細まで事前に把握することができれば顧客とのコミュニケーションが円滑になり、オペレータのストレス低減につながる。ルーティングを細かく設定することにより、オペレータの得意領域、スキルに応じた問い合わせ対応ができるため業務負荷が軽減されるだけでなく、スキル習得やトレーニングを最適化することができる。機械学習による、LTVや解約確率等の予測や最適なアクションの提示により、予測に基づいた応対が可能になるためパフォーマンスが向上し、応対の難易度も軽減される。自然言語処理によるVOC活用により、ナレッジや応対スクリプトの拡充に繋がる。コンタクトセンターの人材難が叫ばれる中、こういったテクノロジーがEXにおいて果たせる役割は大きいのではないだろうか。

<保険会社におけるコンタクトセンターでのCDP活用事例>

音声系システムに強みを持つSIer様でのコンタクトセンターソリューションへの活用を紹介したい。CDPで保有する顧客データに、音声認識や感情分析などを掛け合わせて、ライフステージの予測スコアリングを行った。結婚直近間近と思われる人、住宅購入間近と思われる人など、個々の顧客に最適化されたプロモーションやキャンペーン等の情報をコールセンターのエージェントに提供した。これにより、顧客の興味関心に沿った応対、ベストタイミングでの案内・紹介、顧客の不満・不安への適切な対処に繋がった。保険会社が既存顧客向けに、顧客一人ひとりに最適化された対応を実現したことで、エンゲージメント向上を実現した事例だ。

<働き方も変革するCDP>

上記のCDP for Serviceの事例が示すように、顧客一人ひとりにあった対応をすることで、顧客満足度が上がり、コンタクトセンターの運営もよりしやすくなる。顧客プロファイルやステータスの可視化によって、何より顧客に向き合うオペレータのストレスが軽減し、顧客対応の向上も見込める。
また、コンタクトセンター以外の業務領域においても、顧客のデータを活用したいという要望は多く存在する。例として、全国に配属されている営業担当者のタブレットを通じて顧客情報を届ける等の形でソリューションを提供している。
現在、CDPを導入していない企業もこの機会に検討いただけたら幸いだ。

◆講演企業情報
トレジャーデータ株式会社:https://www.treasuredata.co.jp