保険業界におけるコンタクトセンター成長のカギとは
~生命保険会社の事例と共にご紹介~

【講演者】
テクマトリックス株式会社
CRMソリューション事業部
CRMソリューション営業第1部 CRM営業第2課
山下 誠也 氏

テクマトリックス株式会社とは

当社は、今期40期目を迎えた東京の品川に本社を構える東証プライム上場企業。会社としては多種多様なサービスを提案しているが、CRMソリューション事業部では、コンタクトセンター向けのCRM/FAQシステムの自社開発および販売を行っている。

販売商品は、CRMの「FastHelp5」、FAQの「FastAnswer2」と呼ばれる2種類のシステムだ。当社商品の特徴はコンタクトセンターで利用するために特化したシステムとして、オペレーターの負荷をなるべく軽減することを目的とした機能群を搭載している。また、オンプレミス・クラウド双方の導入形態でご利用いただける点となっている。

カスタマージャーニーとコンタクトセンター成長のカギ

まず当社の考えをご紹介するにあたり、カスタマージャーニーについてご紹介したい。古くは製品・サービスが認知されてから購入されるまでの流れである「AIDAカスタマージャーニー」、すぐ購入されない方に覚えておいてもらう、あるいは思い出してもらうための施策が必要という「AIDMAカスタマージャーニー」が知られていた。

近年では、フィリップ・コトラー氏の「マーケティング4.0」において、オンライン体験とオフライン体験の融合という現代の状況にあった「5Aカスタマージャーニー」が提唱されている。認知したあとに、大量の製品やサービスの中から印象に残るものを選んで比較し、実際に使用した後に他者に推奨するところまでをゴールとするものだ。コトラー氏は「認知=推奨」、つまりブランドを認知している人がすすんで当該ブランドを推奨していくような状況を理想と考えている。

保険業界のカスタマージャーニーの特徴

コトラー氏は業界・業種の形態に合わせて、カスタマージャーニーを分類している。中でも「漏斗型カスタマージャーニー」が、保険業界に当てはまるのではないか。保険業界では競合ブランドとの比較が容易にできることから、購入が計画的に行われる傾向にある。顧客はブランドの主張よりも、実際に個人で体験したものを重視している。本人が気にいってはじめて推奨へと進むために、CX向上といったイノベーションが求められているのだ。

お客様に強力な顧客体験をしていただくためには、どのような課題を解決すべきなのか。NTTコム オンラインが公開したNPSベンチマーク調査によると、顧客満足度が低くロイヤルティ醸成を阻害するポイントは、Webサイト上での保険内容の確認のしづらさや手続きに必要な書類のダウンロードのしづらさであった。

電話をかけはじめてからオペレーターにつながるまでに長い時間待たされる、アクションを起こしてからお客様が求める回答が返ってくるまでに時間がかかる、Webサイト上で簡単に手続きができないなどもNPSが低下する要因の1つだ。そこでこれらの点を解消できれば、強力な顧客体験につなげられると考える。

コンタクトセンター成長のカギとは

当社が考えるコンタクトセンター成長のカギとは「システム基盤の選定」だ。システム基盤を選定する際に重要視したい要件は、次の2つが挙げられる。1つめは、基幹システムをはじめ周辺システムと連携ができること。2つめは、連携によってフロント対応とバックオフィス対応を一気通貫できるようにシステム全体の軸になれることだ。

では軸になるシステムにおいて、どこまでの周辺システムを連携させるべきなのか。金融業界はDX推進に力を入れていることから、金融業界のコンタクトセンター周りのシステムはかなり複雑化している。コンタクトセンター周りにあるシステムとは、基幹システム、CTI、通話録音ツール、音声認識ツール、チャットボット、AIチャットボット、FAQシステム、バックオフィスシステムなどのことだ。

しかも金融業界の会社様ではユーザー数が非常に多いという特性があることから、マルチチャネル化が進んでおり、これら多数のシステムを業務フローに合わせて連携させることが必要になる。そのため他業種と比べてDXが複雑になり、お困りのことと思う。

複雑化したシステムを業務フローに合わせて連携するソリューション

このような悩みは、「FastHelp5」を軸に置いていただくことで解決できる。マルチチャネルで問い合わせを受け付けた際に、「FastHelp5」につなぐ。軸となる「FastHelp5」上で問い合わせ情報を入力することになるので、データを一元管理できるようになる。音声認識ツールとの連携も可能だ。

周辺システムが1つでも独立して動くと、顧客情報や応対情報の二重管理などが発生しオペレーターの評価も低くなる。そこでCRMシステムである「FastHelp5」なら、契約管理システムをはじめとする基幹システムとの連携も実施可能だ。CSVでの日次の連携ほか、APIでのリアルタイムな情報共有も可能にする。

保険業界においてロイヤルティを醸成するためには、チャネルの拡充や一元管理はもちろん、バックオフィスシステムとの連携も必要だと当社は考えている。バックオフィスシステムとの連携とは、手続きの自動化のことだ。手続きの自動化はCXの向上、NPSの向上につながる。次に、手続きの自動化の実例をご紹介したい。

第一生命保険株式会社様の事例

第一生命保険会社(以下、第一生命)様は、昨年度120周年を迎えた歴史ある企業様だ。従来はコンタクトセンターで有人対応したのちに書類を郵送し、お客様にご記入いただいた書類をご返送いただく流れであった。しかし多様化するニーズに対して、選択肢が少ないのではないか。CXの観点では十分な対応ではないと判断された第一生命様は、新しいサービスを導入することとなった。

チャットボットとRPAの連携システム

ご契約者専用サイトチャットボットの自動回答のみでは、保険契約内容などの確認はコンタクトセンターへの電話や有人チャットでの問い合わせとなる。これでは、お客様側に待ち時間が発生してしまう。そこで登場したのが、チャットボットとRPAの連携システムだ。

オペレーターが対応していた解約手続き等の請求書の送付依頼受付を、チャットボットとRPAの連携により無人対応でお申し込み可能なシステムを導入することになった。この対応により、ご契約者様の保全のお手続きは自動化が可能になるために、CX向上を推進可能だ。

新しい連携システムは、既存のシステムと組み合わせて構築している。有人対応では、まずお客様からのお申し出内容にそった書類をマイページ(ご契約者専用サイト)上に作成する。マイページ上にアップロードできたことをお客様にメールにてお知らせしてご確認いただき、問題がなければ本人確認書類をアップロードすることでお手続きできるという仕組みであった。

無人対応を実現するために必要なこと

この従来の仕組みの中で、有人対応していた部分をRPAに実施させることで無人対応を実現させている。無人対応を実現するためには、複数のシステムを連携していく。そこでチャットボットにて、まずは自動受付のパターンを選択してもらうようにする必要がある。つまりチャットボットのシナリオを考えていただく必要があるということだ。複数のエスカレーションパターンの中で、インターネットで受け付けるという選択肢を作成していただいた。選択するとブラウザが立ち上がり、別画面での構成となる。従来は有人対応していた部分なので、わかりやすいシンプルなインターフェースを重視した。

RPAを介して社内システムからお客様の契約情報を取得することで、お客様の契約情報が表示される仕組みだ。受付用のRPA、契約情報を取得するRPA、お客様の選択に応じて回答を表示するRPA、受付完了を示すRPAなど、複数のRPAを組み合わせて構築されている。受付が完了すると、チャットボットで受付完了を示す画面が表示される流れだ。

課題点は多く、導入時に大変だったことは「ユーザーインターフェースの作成」「有人チャットやコンタクトセンターなど異なるシステムに連携するエスカレーションパターンの構築」「複数システム連携の整合性」だ。複数のベンダーがかかわることから、テスト関係の工程にも時間がかかることになった。当社では第一生命様とご一緒に対応させていただいたことから、本事例で得た知見を生かし、できる限りのサポートをさせていただく所存だ。

結びに

当社ではお客様の負担を少しでも軽減し、Web上でも手続きができると思っていただくことでCXの向上やNPSの向上につながるお手伝いができればと考えている。コンタクトセンターの成長のためには、システムの軸となる基盤の選定が重要だという点をご理解いただければ幸いだ。

◆講演企業情報
テクマトリックス株式会社:https://fastseries.jp/