保険業界のDXを加速させる本人確認業務
〜これからのコンタクトセンターのあり方〜
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【講演者】
- 株式会社TMJ
金融事業本部
第1営業部 営業1課 課長
西川 哲平 氏
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【講演者】
- 株式会社TRUSTDOCK
Verification事業部
セールスグループ マネージャー
田崎 十悟 氏
<株式会社TRUSTDOCKとは>
TRUSTDOCKは、eKYCと呼ばれる顧客確認および本人確認のデジタル化を支援するサービスを提供している。2017年に、株式会社ガイアックスよりカーブアウトして創業したスタートアップだ。
大きな特徴としては、本人確認に特化した事業者であり、保険業界を含むあらゆる業界・業種への導入実績がある点だ。また法令もかかわることなので、関係省庁と連携して提供サービスは法令アップデートに最短で対応している。
eKYCとは「electronic Know Your Customer」の略であり、容貌や身分証を撮影したものをデジタルデバイスを使って事業者様に提出することで「本人であること」の確認を行う仕組みのことだ。
<株式会社TMJとは>
TMJは、コールセンターやバックオフィスの構築・運営を行うセコムグループのBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)ベンダーだ。前の社名であるテレマーケティングジャパンであれば、ご存知の方もいらっしゃるのではないかと思う。BPOについてご相談いただく機会が増えたことから、株式会社TMJに社名を変更して事業を行っている。
保険会社様、金融会社様とのお付き合いが多い中で、本社がある東京だけでなくBCP(事業継続計画)が図れるように、北海道や九州にも拠点を多く設けている。当社の事業は、コールセンターやバックオフィスをBPOのサービスで効率化していくというものだ。最近では企画・分析など、次の形をどう描くかという領域に力を入れている。そこでさまざまな会社様とのタイアップや協業を行うことで、サービスの面積を広げているところだ。
<2023年4月よりスタートしたパートナーシップ>
今回2社でウェビナーに登壇した背景には、TRUSTDOCKが提供するeKYCの仕組みとTMJが提供する運用をパッケージとして提供できないかと考えパートナーシップをスタートさせたことがある。TMJは、eKYC専門センター「SleekyC²(スリーキーシー)」を2023年3月に開設している。
導入から運用までをワンストップで支援できることはもちろんのこと、アウトソースという観点から柔軟性に注力しており、24時間365日対応が可能だ。シェアード形態での運用であるために、1席からでも対応できる。またセキュリティ面にも非常にこだわり、運営している。
<保険×本人確認の最新状況>
保険事業主様におかれてはご存知かと思うが、犯罪収益移転防止法(以下、犯収法)施行にに伴い、ご契約の際、お支払いの際には法令に基づいた本人確認を実施する必要がある。犯収法において定められているのは、全部で8つの本人確認方式だ。eKYCを使った郵送なしの方式では、身分証の裏表や厚み、ご自身の容貌を撮影する方法が主に採用されている。
<行政が推進する公的個人認証サービス(JPKI)>
一方、マイナンバーカードによる公的個人認証(JPKI)が、行政イチオシの方式だ。2023年6月にデジタル庁が発表した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」によると、犯収法に基づく本人確認方式は今後公的個人認証に原則一本化し、本人確認書類のコピーはとらない方針が示されている。2025年度以降、十分な準備期間を確保した上で、保険事業主をはじめ、銀行や携帯電話を販売する事業者を対象に施行される見込みだ。つまりマイナンバーカードのICチップを読み取る方法は、今後、国内では一般化していく。
マイナンバーカードのみを本人確認書類として扱う公的個人認証の大きな特徴は、即時性が高く審査時間がかからない点だ。そのため保険契約の開始や口座開設などのリードタイムを短くできる。保険事業主様は、公的個人認証(ワ方式)と身分証・容貌の撮影で本人確認(ホ方式)をする本人確認方式と併用しながら徐々に公的個人認証に一本化していく流れになるだろう。
<生前マイナンバー取得から現況確認は可能か?>
マイナンバーを取得している契約者の住所変更や結婚で苗字が変更になったなどのタイミングで、登録情報が変更になっている可能性について国のデータベースから通知を受けるサービスがある。
そのため「各保険会社様が進めている生前マイナンバー取得から、契約者の現況確認ができるのでは?」というお問い合わせを多くいただく。しかし生前マイナンバー取得から、契約者の現況確認はできない。マイナンバーカードを利用した現況確認を実施するためには、公的個人認証を含めたステップを経て、ユーザー様に現況確認として事業者が通知を受け取ることに同意していただく必要がある。つまり事業者様は、公的個人認証を導入しないと現況確認ができない。これが重要なポイントだ。
<保険 × 本人確認の現状とこれから>
本人確認手段がデジタルになることにより、コンタクトセンターが直面する変化をご紹介したい。保険知識を必要としないテクニカルな問い合わせが増加することが想定されるだろう。そこで問い合わせ内容の混在を防ぐため、ビジュアルIVRやボイスボットなどの活用も視野に入れたい。
またお客様とオペレーターの画面を同期させながらサポートするなど、安心につながる問い合わせ対応の必要がでてくる。画面の同期についてはbellFace社を含めた3社で新たなソリューションを検討しているところだ。
<中長期で予想される影響>
今後は、マイナンバーカードによるeKYCが主流化するだろう。これに伴い、コンタクトセンターに新たな問い合わせが発生する可能性がある。またマイナンバーカードを取得していれば、公的個人認証サービスを活用できるということではない。契約者の同意が必須となる。そのあとに本人確認の手続きに入るということで二度手間になることから、問い合わせが入る可能性がある。公的個人認証と契約者の同意によって、住所変更や名義変更、ライフステージの変化を把握できるようになることから保険会社から契約者へコミュニケーションをとる機会が増大する。
<金融・保険 × eKYCによるDX>
eKYCによるDXは、非対面契約、オンライン申し込みの増加や諸届業務の利便性向上などがイメージしやすいだろう。さらにTMJのBPOを活用することで、eKYCによるDXの効果をコンタクトセンター業務に波及させられる。たとえばマスキング処理の統一・効率化、対面時のペーパーレス契約、生前マイナンバー収集だ。
eKYC業務プロセスにおけるBPOの有用性を挙げてみたい。まずは本人確認情報の厳格な管理、安心・安全な運営だ。ちなみにBPOは、固定のサービスではない。形を柔軟に変えられるサービスなため、マスキングなどの業務は、BPOでルールを統一化・標準化するなど自動化に向けた段階的なアプローチが可能になる。
<TMJのeKYCセンター「SleekyC²」>
今後ますます、外部のソリューションを利用する意義が増す。そこで開始に至ったTMJのeKYCセンター「SleekyC²」をご紹介したい。法律に準拠したeKYC業務の運用面においてもしっかりケアができるように、高セキュリティセンターとして運用している。現時点で、eKYCの専門センターを運営しているBPOはTMJのみだ。
指紋認証システム、PC画面の撮影を防止するスマートフォン検知、顔認証入退室管理を導入するなど、厳格なセキュリティ対策を取り入れている。eKYCにおける身分証のデータ化に関して、安全な環境にあるBPOを活用すればいろいろな、DXの下支えにつなげられるのではないか。たとえば現場・店舗で行っている各種控えの管理を、システムの力を使って高セキュリティ下で運用されているコンタクトセンターに集約していく。 実際にマイナンバーの保管・管理やマスキング処理に悩む事業者様は多い。このあたりはBPOを併用した業務プロセスのさらなる発展性が期待される部分になるのではないか。
<結びに>
本人確認における政府のマイナンバーカード推進の動きに合わせて、変化に対応していくことが肝要だ。システムと運用していくためのコールセンターを含めた設備を掛け合わせることで、保険事業主様向けに効率的なソリューションをお届けできると考えている。
◆講演企業情報
株式会社TMJ:https://www.tmj.jp/
株式会社TRUSTDOCK:https://biz.trustdock.io/