生命保険会社におけるマネロン・テロ資金供与対策~FATF第4次対日相互審査結果を踏まえて~


2021年8月30日、FATFによる第4次対日相互審査の結果(以下、「本審査結果」という。)が公表された。日本は、2008年に実施された第3次対日相互審査において多くの不備を指摘されており、その後、犯罪収益移転防止法の改正を含む諸対応に追われてきた金融機関等にとって、今般公表された相互審査の結果は、2021年度の大きな関心事であった。そのような中、本審査結果では、「重点フォローアップ国(Enhanced Follow-up)」との評価がされており、今後5年間で3回のフォローアップ報告を行う必要がある。ただし、元来、生命保険自体がマネロン・テロ資金供与に利用されるリスクは相対的に低いという評価をされている 。本審査結果を受けても、その評価や考え方自体に変更はなく、本審査結果にも、生命保険会社を名指ししての指摘事項は含まれていない。その意味において、本審査結果を踏まえ、生命保険会社が独自で整備すべき事項はないものと受け止められるだろう。本稿では、第4次対日相互審査結果を受けて、生命保険会社として特に注意すべきマネロン/テロ資金供与対策の概説を試みる。なお、本稿のうち、意見・見解に亘るものは全て筆者独自のものであり、筆者が現在所属し、または過去に所属していた組織の見解や実務等を示すものではない点につき、予めお断りしたい。

目次

最後に

以上の通り、本審査結果によって、生命保険会社のマネロン/テロ資金供与対策が見直しを求められることにはなるが、基本的な考え方や枠組みの変更を求められることはないものと考えられる。他方、保険商品自体は、マネロン/テロ資金供与リスクが相対的に低いと評価されている中、新たな対応を求められることになり、生命保険会社のAML/CFT担当者にとっては、決して小さくない悩みであろう。具体的な取組事項は、今後、政府による検討が進められることになるが、現時点で各社として優先して取り組むべきは、自社の商品やサービスを今一度見直し、それぞれがマネロン/テロ資金供与に利用されるリスクの特定及び評価を実施することである。

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徳山 佳祐 氏
寄稿
プロアクト法律事務所
弁護士
徳山 佳祐 氏
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