2022年8月25日(木)開催 INSURANCE WEBINAR「保険業界におけるコールセンターの最適化がもたらす顧客ロイヤリティの向上」<アフターレポート>


2022年8月25日(木)セミナーインフォ主催 INSURANCE WEBINAR「保険業界におけるコールセンターの最適化がもたらす顧客ロイヤリティの向上」が開催された。ライフスタイルの変化やスマホの普及により、ユーザーのニーズや必要とするチャネルが多様化・高度化している。保険業界のコールセンターにおいても、従来までの電話対応だけでなく、マルチチャネルにて対応できる体制を構築する必要があり、顧客一人一人に合わせた、最適な問い合わせ対応が求められている。本ウェビナーでは、基調講演では日本生命保険、特別講演にてオリックス生命保険にご講演いただき、最新事例をご紹介いただいたとともに、各社より、コールセンターの最適化への取り組みの一助となるセミナーをお届けした。

  1. 「コールセンター発!CX向上プロジェクト
    ~「オペレーターの気づき」×「デジタル」での課題解決スキーム構築~」
    日本生命保険相互会社 大木 直宏 氏
  2. 「データ活用がもたらす真の顧客理解と顧客エンゲージメントの向上」
    トレジャーデータ株式会社 栢菅 裕介 氏
  3. 「キーエンス流データ活用術
    ~保険業界のコンタクトセンター事例~」
    株式会社キーエンス 鈴木 辰弥 氏
  4. 「デジタルと人の温かみを融合した顧客中心のサービスへの変革
    ~Financeial Services Cloudを活用したパーソナライズ対応の実現~」
    株式会社セールスフォース・ジャパン 廣瀬 拓史 氏
  5. 「顧客接点の効率化と利便性向上
    〜チャット・ボイスボットの追加で実現するDXの拡張〜」
    モビルス株式会社 柏原 学 氏
  6. 「オリックス生命におけるコンタクトセンター業務改革」
    オリックス生命保険株式会社 渡辺 展正 氏
  7. 【ご紹介動画】トレジャーデータ株式会社
目次

「コールセンター発!CX向上プロジェクト
~『オペレーターの気づき』×『デジタル』での課題解決スキーム構築~」

基調講演
【講演者】
日本生命保険相互会社
コールセンター センター長
兼 お客様サービス部 担当部長
大木 直宏 氏

<当社コールセンターの紹介>

コールセンターは本社組織の中で、事務サービスを担うお客様サービス本部に属しており、BCPのために大阪、東京、福岡の3か所に設置している。オペレーターは約230名で、昨年は94万件強を受電した。一人当たり約4,000件で、応答率は95.4%であった。KPIとして応答率の目標は95%を設定している。

地域に関係なく、全国からの電話を3つのセンターに振り分けており、振り分ける受信占率は大阪が全体の61%と最も大きい。現在アウトバウンドは行っておらず、インバウンド受電を専門としている。ちなみに当社のコールセンターのオペレーターは全員が正社員だ。

<カスタマーサポート表彰 「奨励賞」 取組の背景>

我々コールセンターは、お客様の声が集まる場所であるため、コールセンターの強みイコールお客様の声の宝庫である。これを経営に活かす取組として何か使えないかという思いが出発点だ。ただこれまで強みとして自覚していなかったため、生かしきれていないことこそが問題であると考えた。そこでオペレーターの感性を、お客様からの声の量に掛け合わせて、お客様の求めていることを導き出し、サービス改善につなぐ取組を構築できないかと考えたのが取組の背景であった。

<現状と課題>

お客様からの申し出を全て記録として蓄積し、また必要なときに音源を確認できる環境も整っているが、これまでは証拠や応接の振り返りのためにしか使っておらず、業務改善に活かしきれていないのが現実であった。

課題の1つはそれぞれのデータ量が膨大であることで、必要なデータが取り出しにくく活用できていないこと。もう1つの課題は関係課に提案をつなぐ仕組みだ。応接記録や録音音源を、事務や帳票をつくる社内の関係課に提供・開示はしているが、「ご覧になりたければどうぞ」というスタンスであったので「何でこんな声が多いのか」などと、原因や対策を見極めた「提案」「つなぎ」まではできていなかった。

<具体的な取組の内容①声の収集>

お客様の声の収集方法の整理から着手した。VOE(従業員の声)、VOC(お客様の声)に分け、それぞれのデータの収集方法を見直し、課題を抽出する仕組みを導入した。まずVOEに関する仕組みが「報告業務システム」という、アンケートを集約するツールを使った声の収集だ。これを使って、オペレーターが応接の終了後、忘れないうちに気づきを入力する定型フォームを作成した。ここで重要なのは、ここにはお客様が口にされたご要望を入れるのではなく、オペレーターが感じた「お客様はきっとこう思っているだろうな」という声にならない声、オペレーターの感性に触れた気づきを入れるということだ。社内共用の汎用ソフトを使い、新たなコストをかけずに構築した。

VOCのうち「お客様の直接の声」については、応接している中でお客様からご意見やご要望をいただいた時、オペレーターは応接記録を入力しながら、応接記録に「ご意見・ご要望」表示を立て、キーワードも入力する。これにより後々に応接記録から「ご意見・ご要望のあった記録だけ抜き出すことが可能になった。お客様のご意見・ご要望のあった記録についてテキストマイニングを使って分析するには、お客様情報を取り扱うため、情報開示を制限した専用端末を使っている。

アンケートに寄せられた声の収集についても前述の「報告業務システム」を使っている。入力結果はすぐデータベース​化され誰でも見られるようになる。システム開発投資はゼロだが、手作業で入力している労力が悩みの種だ。

<具体的な取組の内容②有用な情報を抜き出す仕掛け>

オペレーターの気づきやお客様の心の声を実際のデータと掛け合わせて課題としてあぶり出し、そこから検討すべき声なのかを明らかにする仕組みができないかと考えた。課題をあぶり出した後に、お客様の声という改善提案にして発信する会議、「VOCミーティング」を新設した。検討すべき声を3つのコールセンターがそれぞれ持ち寄り、定期的な検討会議で意味があるのかを議論し、意味があると判断した声について事務システムをつくる関係課へ提案するのが目的だ。

<取組の成果>

2020年度から始めたこの仕組みを1年間回した結果、気づき件数から絞り込みをし、対応が確定した件数が18件。うち6件の提案が実現した。件数は多くはないものの、実現したことがコールセンターにとっては大きな一歩になった。

ここから、コールセンターが発議して実現した改善事例をいくつか紹介する。まずはお客様にお送りしている通知物の記載の見直しだ。お客様情報の登録が完了したときにお送りしている通知だが、お送りした後、お客様から「コールセンターに連絡するように書いてあったので連絡しました」という電話が絶えなかった。あるオペレーターが気づきとして「通知の表記がわかりにくいのかな」と報告業務システムに仮説を入力してくれた。テキストマイニングを使って全てのオペレーターの応接記録をみたところ、同じようなやりとりが多数あることが判明した。我々コールセンターは、この声のボリュームを背景に通知の改定案を作成し、この通知を作成している関係課に提案したところ、2021年7月に提案どおりに改訂された。改定後は、無駄なお電話が無くなっている。

次の改善事例はWeb手続画面の遷移見直しだ。お客様宛のある通知を送った後、その通知に従ってWeb操作されたお客様から「画面に戻れないがどうしたらいいか」という質問が多く入るようになった。この問い合わせが増えているとの気づきから、原因をたどったところ、普及しつつあった新しいブラウザを使うと元の画面が消えたように見える現象が起きていたことが判明した。Web画面を設計するシステム関係課に即時共有し、早急にシステム改修につなげた。

こういったことの積み重ねから、我々の想定外の変化が起きた。事務帳票や、Web画面を設計する関係課から、コールセンターに変更前に相談が入るようになった。設計段階からコールセンターが関わり、お客様にリリースされる前にわかりやすさの視点で提案を加えられるようになった。

<今後の取組>

当社の取組をお聞きになった方の感想の多くが「うちも改善提案活動を実施しており、最初はいいが長続きしない」というお声だ。まさに我々も「こういう取り組みが長続きしない」という課題意識を持っていた。一過性の取組でなく、仕組みにまで持っていくには、それなりの時間と労力は必要だ。

大事なことは、これをただの「取組」で終わらせるのではなく、「仕組」になるまで続けることだ。改善が実現し、徐々に効果が見えてくるので、提案した案件の効果を、設計している関係課と共有化しWin-Winの関係を構築していく。この取組も3年目に入り、若干息切れのところもあるが、弛みないCX・EX向上の仕組みとして継続する。

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