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【連載】自動運転の最前線~現状と法的課題

自動車メーカーをはじめIT企業など多くの企業が自動運転車の開発を進めている。自動運転技術が開発されても交通ルールや車両安全基準などの法整備を進めなくてはならない。The Financeでは、「自動運転の最前線」と題し、全4回にわたり、現在の自動運転の開発状況を紹介しながら、自動運転技術の実用化をにらんだ法整備の状況を解説していく。第一回目では、進展する自動運転技術とその影響を踏まえつつ、実用化に向けた法整備の現状について解説する。

【連載】自動運転の最前線~現状と法的課題
  1. はじめに
  2. 現状の基礎知識
  3. 普及のための法的課題

顧客データを持つIT企業と親和性高い

これまで、自動車の制御、すなわち「走る・止まる・曲がる」といった運転タスクは、人間が実施することが当然とされてきた。しかしながら、この自動車発明以来の一貫した前提を根底から覆そうとする動きがある。

運転タスクを人工知能(AI)を用いたシステムに実施させる、いわゆる自動運転の開発である。仮に人間による運転が自動運転により完全に代替された場合、理論的には交通事故や渋滞をほとんどゼロにするなど、社会を大きく変革させる可能性がある。

現在、自動運転を実現させるための技術は自動車メーカーのみならず、IT事業者も含めた多数の事業者により開発が進められ、実証実験ではあるが一部は公道でも走行している。ただし、実証実験ではなく一般の状況下で公道にて走行できるようになるという意味での実用化のためには、自動運転技術のみならず、交通ルール、車両安全基準などに関する法制度の整備が不可欠である。

現状の基礎知識

① 運転主体などに応じ6段階に分類

米国自動車技術会(SAE)の発表した「J3016」での定義に従えば、自動運転は運転タスクを実施する主体、そのレベル、限定領域に応じレベル0からレベル5まで6段階に分類される(図表1)。

このうちSAEレベル0からSAEレベル2は、あくまで人間が主体となって運転タスクを実施し、システムの役割は運転支援にとどまるものである。本連載においては、SAEレベル3以上のみを自動運転として論じている。ちなみに、SAEレベル1に相当する機能(衝突被害軽減ブレーキ)やSAEレベル2に相当する機能(高速道路におけるオートクルーズコントロールおよびレーンキーピング機能)などは、すでに一部の市販車において実装されている。

一方、SAEレベル3以上の自動運転機能については、いまだ市販車において実装されている段階にはなく、公道での実証実験が行われるにとどまっている。

② 実証実験ではすでに公道を走行

自動運転は、①カメラ、センサーなどを通じて認知した車両周辺の情報や、外部から取り込んだ詳細な地図情報、周辺の自動車を含む走行データなどの情報に基づき、②車両に搭載され、または車両と通信により接続されたAIにより適切な車両状況の理解と判断が行われ、③当該判断に基づき車両のアクセル、ブレーキ、ハンドル操作などの制御を行うという仕組みから成り立っている(図表2)。

自動運転を技術的に実現するためには、これらの機能の高度化、すなわち①カメラやセンサーなどの高度化、②高度かつ最新の地図情報やリアルタイムでの車両情報の収集・提供、③多くの情報を処理し、適切な判断ができるだけの高度なAI、④そして、車両を外部システムや情報サーバーと常に接続可能とする大容量かつ安定した通信機能が必要となる。

すでに実証実験では公道で走行していることからも明らかなとおり、これらの技術の開発はかなり高度なレベルに達していると考えられる。

普及のための法的課題

このような技術開発の進展の一方で、自動運転を公道で走行させるためには、図表3に示したとおりの法的課題が残っている。

また、自動運転を活用して旅客や貨物の運送を行うには、旅客自動車運送事業を規制する道路運送法や貨物自動車運送事業を規制する貨物自動車運送事業法に従って許可を取得し、これらの法に従って事業を行わなければならない。

しかし、その細則を定めた旅客自動車運送事業運輸規則や貨物自動車運送事業輸送安全規則は人間が車両を運転することを前提とした規定となっている。

したがって、自動運転車を用いて旅客運送または貨物運送を行うには、これらの事業規制法の改正が必要となる。以上のとおり、自動運転車を市販し、公道で走行させるためには、道路交通法をはじめとする法制度の整備が必要である。

これらの法制度の整備は、現在国際機関や日本国政府において検討が進められているところであるが、その検討の状況については次回以降、詳しく解説する。

寄稿
TMI総合法律事務所
パートナー弁護士
永田 幸洋 氏
TMI総合法律事務所パートナー弁護士(日本国・カリフォルニア州)。
2006年弁護士登録。2004年京都大学大学院農学研究科修了。
2012年ジョージタウン大学ロースクール(LL.M.)卒業。
国内外のM&Aや投資案件を取り扱うとともに、大手自動車メーカーや
大手物流会社への出向経験を有し、自動車をはじめとするモビリティ分野への
造詣が深い。
寄稿
TMI総合法律事務所
アソシエイト弁護士
岩田 幸剛 氏
TMI総合法律事務所アソシエイト弁護士(日本国・ニューヨーク州)。
2008年弁護士登録。2003年慶應義塾大学法学部卒業。
2003年から2005年国土交通省勤務。2007年東京大学法科大学院修了。
2014年ワシントン大学ロースクール(LL.M.)卒業。
大手自動車メーカーへの出向経験を有し、
自動車を含む新規ビジネス関係の法務に精通している。
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