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【連載】債権法改正と金融実務~債務引受に関する規定の新設

現行民法には条文がなかった「債務引受」に関する規定が、債権法改正で新設された。債務引受には、併存的債務引受と免責的債務引受の2つのタイプがあり、それぞれを正しく理解する必要がある。本稿は、債権法に関する連載の第6回として、債務引受について弁護士が詳しく解説する。

【連載】債権法改正と金融実務~債務引受に関する規定の新設
  1. 債務引受とは
  2. 併存的債務引受
  3. 免責的債務引受
  4. 改正法における実務対応
  5. 経過措置

債務引受とは

債務引受は、債務者が負担する債務と同一の内容の債務を契約によって第三者が負担する制度である。新たに債務を負担する第三者を「引受人」と呼ぶ。

債務引受には、「併存的債務引受」と「免責的債務引受」がある。

「併存的債務引受」の場合、引受人が債務を負担したあとも、元の債務者は引き続き債務を負担する。これに対し、「免責的債務引受」の場合、引受人が債務を負担した後、元の債務者は免責され、債務を負担しない。

現行民法には、債務引受について条文がなかったが、判例上、債務引受が認められてきた。実務的にも、事業譲渡、事業承継、併存的債務引受方式による一括決済方式といった場面で広く活用されており、金融取引でもよく見られるものである。

このような実情を踏まえ、改正法では、債務引受について、規定が新設された。改正法では、併存的債務引受と免責的債務引受に分けて、成立要件と効果を定めている。

併存的債務引受

併存的債務引受の成立要件

併存的債務引受は、①債権者・債務者・引受人の三者契約、②引受人と債権者の契約(470条2項)、または、③引受人と債務者との契約(470条3項前段)によって成立する。なお、②の場合、債務者の意思に反していても構わない(大判大正15年3月25日民集5巻219頁)。

併存的債務引受の効力発生時期

①と②の場合、債務引受の効力は契約時に発生するのに対し、③の場合には、債権者の承諾の時点で効力が発生する(470条3項後段)。

併存的債務引受の効果

●連帯債務

併存的債務引受の引受人と元の債務者は、連帯債務を負う(470条1項)。連帯債務については、改正により、請求が相対的効力事由となるため、これを絶対的効力事由とするには、第5回で解説したように、債務者または引受人との間で、それぞれ、別段の合意をする必要がある(民法441条)。

●元の債務者の抗弁

また、併存的債務引受の効力発生時に元の債務者が主張することができた抗弁を、引受人も主張することができ(471条1項)、債務者が債権者に対して取消権または解除権を有する場合、引受人は債務の履行を拒むことができる(471条2項)。なお、債務者が債権者に対して相殺ができる場合、連帯債務に関する規定により、引受人は債務の履行を拒むことができる(439条2項)。

併存的債務引受と保証

併存的債務引受は、第4回で解説した保証と機能が類似する。そこで、保証について定められている保証人保護のための規定と同様に、債務引受についても引受人を保護する必要がないかが問題となる。この点については、法制審議会において議論されたところであるが、結論として、引受人保護のための規定は置かれないこととされた。

ただし、真に保証人保護の規律を及ぼすべき場合は、法形式が併存的債務引受等であったとしても、柔軟な契約の解釈等を通じて適切な結論を得ることが可能との見解が示されており、保証に関する規制を回避するために債務引受方式にするという考え方はやめておくべきだろう(部会資料67A・34-35頁)。

免責的債務引受

免責的債務引受の成立要件

免責的債務引受は、①債権者・債務者・引受人の三者契約、②引受人と債権者の契約(470条2項)、または、③引受人と債務者との契約(470条3項前段)によって成立する。

免責的債務引受の効力発生時期

①の場合、契約時に効力が発生する。

②の場合、債権者が債務者に「契約をした」旨を通知しなければ効力を生じない(472条2項)。言い換えれば、債権者による通知時が効力発生時である。通知人の主体が債権者とされており、引受人が債務者に通知しても効力は生じない点に留意が必要である。

③の場合、債権者の承諾が必要になる(472条3項)。効力発生時は、債権者の承諾が引受人に到達した時である。債権者の承諾前に、債権者の債務者に対する債権が差し押さえられた場合、免責的債務引受の効力は生じていないから、その後に債権者が承諾しても差押えには影響がない。

免責的債務引受の効果

●免責と債務引受

債務は引受人のみが引き受け、元の債務者は免責される。免責的債務引受の後、引受人が債務を弁済した場合であっても、原則として、元の債務者は求償債務を負わないものとされている(472条の3)。

●担保の移転

債権者は、引受人に対して担保を移転する意思表示をすることにより、債務引受の対象となる債務に設定されていた担保権及び保証を引受人に移すことができる(472条の4第1項)。この意思表示は、上記成立要件のうち、(a)①債権者・債務者・引受人の三者契約および②引受人と債権者の契約(470条2項)の場合には、当該契約時、(b)③引受人と債務者との契約(470条3項前段)の場合には、債権者の承諾時と、同時かそれより前になされる必要がある(472条の4第2項。部会資料67A・42頁)。

また、保証人・物上保証人等引受人以外の者(元の債務者も含む)が設定した担保権・保証については、担保権設定者または保証人の書面または電磁的記録による承諾がなければならない(472条の4第1項但書、同条3項・4項)。

担保権設定者・保証人が元の債務者である場合について、現行法下では、①債権者・債務者・引受人の三者契約と③引受人と債務者との契約(470条3項前段)の場合には、債務者の承諾は不要との解釈があったところ、改正法ではこれらの場合でも債務者の承諾が必要とされたこと(部会資料67A・42頁)に留意が必要である。

改正法における実務対応

債務引受に関して新設された条文は、大部分が従来の判例実務を踏襲するものであるが、引受人と債権者の契約による免責的債務引受における通知主体が債権者に限られていること(470条2項)、免責的債務引受時の担保の移転についてあらかじめ又は同時に意思表示が必要であること(472条の4第2項)、担保権設定者・保証人が元の債務者である場合の担保の移転について元の債務者の承諾が必要とされること(472条の4第1項但書)については、改正による変更があった点であり、取り扱いが変わることから、対応できるよう準備しておくことが必要である。

経過措置

平成32(2020)年3月31日以前に締結された債務引受に関する契約については現行民法が適用され、平成32(2020)年4月1日以降に締結された債務引受に関する契約については改正法が適用される(附則23条)。効力発生時期ではなく、契約締結時期が基準となっている点に留意が必要である。

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加藤 伸樹 氏 【寄稿】
和田倉門法律事務所
弁護士

加藤 伸樹 氏

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